雑感雑念

VOL.3  『管仲』に浸る
 どうも、ここは野球のコーナーになりつつあるので、たまには違う話を。というよりか、元来、その時思ったことをつらつらと書き連ねるのがこの部屋だったのに、いつの間にやら、野球のコーナーになってしまった・・・。

 さて、何を書くのかと言うと・・・、タイトルにあるとおり、宮城谷昌光の『管仲』である。宮城谷昌光と言えば、『重耳』、『夏姫春秋』、『晏子』、『楽毅』そして、最近では『子産』など、中国・春秋戦国時代を取り扱った小説が多いが、『管仲』は出るべくして出たと思ったと同時に、ようやく出たかとも思った。むしろ、私にとっては、これほどの有名人が今になって取り上げられるようになったか、という思いだ。しかし、その理由はあとがきを読んでよくわかった。
 
 「管鮑の交わり」や斉の桓公を覇者にした事で、有名な管仲だが、彼の前半生はほとんど知られていない。『史記』に、――管仲曰く、吾、始め困(くる)しみし時、嘗て鮑叔と賈(こ)す。――とあるが、いわゆる、昔、貧しかった頃、鮑叔とともに、店を開いて商売をしていた、と語っている件があるが、これくらいしか、逸話が無いのである。そこから、時代などを考えて、小説としての管仲の前半生を描き出そうと言うのだから、その苦労は推して知るべしだろう。実際、もう書き始めないと、第一回分が間に合わないという日まで、浮かばなかったそうだ。だがそのときに、小説の冒頭に当たる、管仲と鮑叔の出会った光景が浮かびあがったというから、まさにこれは宮城谷さんが言うところの、天祐であろう。
 あとがきで、宮城谷さんは「冒頭は小説全体の生命力の象徴と言って良い。」と述べている。また、小説とは最初が見えると最後が見えるとも言っている。このことばは、私の心にかなり響いた。最初が肝心とは言うが、確かに今回の『管仲』の冒頭部分は非常に印象深かった。あえて、ネタバレはしないが、そういう出会い方だったとは、と静かに驚いたものである。

 『管仲』全体を通して、印象深かったのは所々に歌が出ているのである。これが、『管仲』を読む上でのポイントになっていると、私は思うのだが。

 また、宮城谷さんの小説は女性が生き生きと描かれており、そのことも、ハマりやすいものにしていると思うのである。特に今回が一番、心魅かれる女性が多いと思うが、興味を持たれた方は、実際に買って読んでみてはいかがだろうか。なかなか、興味深い女性がいろいろと出てきます。

 天下の名宰相と謳われた、管仲の波乱に満ちた人生。読んでみると、結構心惹かれたり、興味深い名言、思想が見つけられるので、一度、手に取るのも一興かと思います。内容は自分で確かめてください。


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