雑感雑念

VOL.11 『その日の午後、砲台山で』クロス・レヴュー
 発売前は「6万円出してでも買う値打がある!」と言ったが、今はそう言った自分のバカさ加減を腹立たしく思っている。「夢殺し」というテーマで書かれた本作は、確かに言いたい事は解るのだが、それで面白いかと訊かれると、否定しかできない。最初は面白く、わくわくとした気持ちになるも、段々勢いが無くなってつまらなくなり、読み終えた後は「もういい!」と言う気持ちになる。『インフィニティー・BLUE』は平坦な展開で気持ちが乗らなかったが、これは尻すぼみな展開で再読する気をなくしてしまう。もともと『地球樹の女神』のあとがき小説と考えればこれでも問題ないだろうけど、それなら7ページくらいであとがきを書いてくれた方がまだマシだった。『地球樹』が感動的だっただけに……。(GSJ)

 『女神變生』以来のオールスターキャストストーリーとなった今回の作品。しかし、オールスターキャストストーリーにありがちなテンションの上がりきらない物語に陥った事は否定できない。東三千子が弟・丈の探索を四騎忍に依頼し、ラストに東丈が現れると言うアイディアは良かったが、それを生かしきっているかと言うと首を傾げる。所々にファンをニヤリさせるスパイスの仕込み具合はさすがだが、これが作品全体の面白さに必ずしも結びついていない気がする。泉谷あゆみ嬢のイラストは相変わらず美麗なのだが、極端に少なく思えたのも不満材料。これがせめてあと2点あれば、ダレた気分にもならなかったろうに。過度に期待した私がバカなのかもしれないが、何度も途中で読むのをやめたくなってしまった……。(GISELE)

 先入観を一切捨て(できないだろうけど)、虚心で読めば、こののち刊行されるであろう『幻魔大戦Deep』のプレ・ストーリーとしてよくできていると思うし、じっくりと読み込めば、味わい深い作品と認識できるかもしれない。平井和正らしさ満載と言えば、その通りである。が、らしさはあってもつまらないと思ってしまえば、何度も読み返す気持ちは起こらず、忘れられるのがオチである。らしくなくても面白ければ、ずっと愛読するのである。ただ、この作品を読んで「作者と読者の間には暗くて深い淵がある」と言った平井和正の言葉が真実だと実感したのは皮肉である。DEEP PURPLEの『THE BATTLE RAGES ON…』を聴かされた時の某紙レヴュアーの気分になった……。(ANGELIKA)

 『ABDUCTION‐拉致‐』以来、約1年5か月ぶりの新作だが、この作品を315字も使って感想・レヴューを書ける人がいたら(いるんだろうなァ)、その人は私にとって神様である。いくら『地球樹の女神』や『ボヘミアンガラス・ストリート』、『幻魔大戦』に『ABDUCTION』のキャラクターを再登場させて物語を作ったところで、これほどまでに展開が鈍重なら読むのが辛くて仕方が無い。大河小説でもダレを感じさせない小気味良い展開が平井和正の持ち味でもあったのに……。確かにラストで東丈が出てくるし、それが『幻魔大戦Deep』に繋がるんだろうけど、こうもダレる展開でオチがあれでは、読後の虚しさしか残らない。やはりオマケはオマケでしかなかった。アレ!?315字で書けちゃった。(VOPW)


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