「廃線と廃駅の調査」

第10回 神々の詩 第1部

〜尾道鉄道〜



[5] 三美園(さんびえん)

昼食時が近づいていたため、我々は丘を登っていく廃線跡をはずれ、三成(みなり)まで国道をショートカットすることにしました。

GNG:地名や駅名などは土地の人じゃないと読めないものです。「仙入峠」ってよく見ると「仙人(せんにん)」とは書いていない。間違える人が多いのではないですか。

ゑゐぢ:「仙入峠」と書いて「せんにゅうだお」と読むのです。何か言われがあるのでしょう(追記参照)。峠と言うだけ有って、鉄道は「栗原」から「三美園(さんびえん)」まで33.3パーミル(33.3/1000=1キロあたり33.3m)の勾配を上り、そしてここから次の「三成(みなり)」まで40パーミル(40/1000=1キロあたり40m)の勾配を下っていたそうです。ちょっとした登山鉄道並みの勾配です。この峠を越えるため1925年(大正14年)の開通時から電化され電車が走っていたのでしょう。ただ若干勾配の緩やかな国道のルートで線路を敷設しなかったのが、不思議な気もします。

GNG:なるほど、たしかに峠でした。

ゑゐぢ:「仙入峠(せんにゅうだお)」の次に「三美園(さんびえん)口」と言うバス停があります。ここから東側の丘の上にあったのが、尾道鉄道の三美園(さんびえん)」でした。駅名の由来は(戦災)孤児施設があったことに由来するそうで、当時は車窓から施設の屋根が見えていたそうです。現在も児童福祉施設があります。周辺には、そのほか三成(みなり)ヶ丘団地や三美園(さんびえん)団地などの住宅地や特別支援学校があります。

GNG:「三美園(さんびえん)口」の次のバス停は「温泉口」というぐらいですから、天然温泉が湧く、健康ランドのようなものがあるのですか。

ゑゐぢ:温泉宿「養老温泉」があります。国土地理院の地図にも温泉マークが描かれています。一大レジャー施設と言いたいところですが、地元の人は「あれで入浴料500円は高すぎる」と言います。私は実際行ったことがないのでなんとも言えません。由来は、戦後頃に地元の造り酒屋が、水を確保するために掘削したところ偶然温泉(冷泉)が出てきたそうです。

ゑゐぢ:また、温泉の近所にある(ほこら)「浦島さん」は浦島太郎伝説に基づくものだそうです。今は廃れてしまったようですが、昔は神輿(みこし)が出て祭りをしていたそうです。

GNG:ここで温泉につかって身体を温めてもよかったですね。でも浦島太郎にまつわるものがある割には海からは随分離れているような・・・

追記:読者様情報によると「仙入峠(せんにゅうだお)」の言われについては、『親や田畑を捨てて、尾道のにぎやかな市街地に憧れ出て行こうとする山村の若者を仙人(せんにん)が天狗に化けて、峠で追い返した』という民話があるそうです。


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