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詩集 名前のないもの 第1章 冬眠 13

能取湖素描


 

牛の群が水ぎわに
立ち枯れたアヤメの花の中
なぎさには砂だけが
遠くには白い霧
能取湖に風が立つ

 

はまなすの赤い花
浅い湖の中に小さな舟が
馬が駆けていく
二つの岬がオホーツクの海を抱く
能取湖に風が立つ

 

引いた潮の中に名も知らぬ貝の群
うす潮の水の上を雲が
光は七つの色を持つ
影は止まらない
能取湖に風が立つ

 

かがり火のほてり
柏のざわめきのかげで
黒々と湖は息づく
遠くには漁火ひとつ
能取湖に風が立つ

(1966.7.xx)

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