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詩集 名前のないもの 第4章 名前のないもの 09

冬の勝利


降ってくる 降ってくる
人間には無用の天の豊饒
白い無力な群衆に
車止められ足はとられる

 消防車は出動しません
 道東方面へのすべての連絡路は断たれています
 小中学校は明日も休校します

電波だけが入って来る
スズメは窓辺でなげき
エゾシカは死ぬだろう

思考を止めたのは
頭上の雪の重さのため
ではない

 6角針状
 6角放射状
 おや これは奇形だよ

もう歩けはしない
道がない
道がない

雪かきの後の腕の疲れ
道はできない
道はできない

 屋根の雪が落ちて窓ガラスがわれた。
 今日はだめですね、車が動かない。
 とガラス屋が言う。それじゃあたぶんあした。
 あした。明日などやって来はしない。

見通しのきかない空の中から
雪片がふりこむ
おや
これは奇形だよ
奇形だよ

エゾシカは死ぬだろう

(1969.2.5) 

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