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詩集 名前のないもの 第3章 呪歌 18

無題


霜を一面にまとった鉄の獣が
奇妙にもの静かに疾駆する
いがらっぽい煤煙が乾いて匂う

それでも星々は
何万光年か昔の光を輝く
漣の形に凍った水たまりに
鎖ざされた空気たちの嘆き

故郷という名の
顔のない町でも今
渡り鳥の風が刺し通しているだろう

明日という
人間の誤解の中だけにあるものが
足音をたてずに
また死んでしまう

(1968.11.16)

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