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詩集 名前のないもの 第2章 駄荼懦惰堕 03

カラマツ


砂時計の中で
砂の粒が落ちるように
時の中を落ちて行く

むくれあがった道からは
砂塵が舞い立って
春が来ようとしているらしい
並木のカラマツは
何の希望も持たずに芽をふくだろう

秋までに
その一時の休止の時までに
いったいカラマツは何をするのだ
その永遠の休息の日までに
いったいカラマツは何をするのだ

壮大な死となって大地を打つ
それだけがカラマツになし得ることなのか

たしかに春は来るだろう
そして新しい鳥は新しい巣を作る
すべての世には事もなしというわけだ

また日々が
砂時計の中で
砂粒が落ちるように

並木のカラマツは
何の希望も持たずに芽をふくだろう

(1967.4.15)

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