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俳  諧  徘  徊

昔むかし、文学少年だったころには口語自由律の詩を書いていたので、俳句なんてまるで興味が無かったのですが、中年になってから、年賀状に一句書き添えて出すようになりました。決まり切った賀詞だけではおもしろくないし、気の利いたイラストが書けるわけでもないので、自作の一句はちょっといいかなと思って始めたものです。
歳時記を買ってきて、新年の季語を適当に見繕い、例句を本歌取りよろしくアレンジしてこしらえていました。年賀状を書くこのときだけの句づくりです。もとより、知識が増えたり、上達したりするはずもありません。
そんな状態で定年を迎えました。暇と言えば暇になったこととて、つきなみにも「ひとつ俳句でも捻ってみようか」と思い立ったわけです。ところが、ちょっとつついてみると、これがどうして奥が深い。まともなものがなかなか出来 ません。
というわけで、しばらく俳句の周りでウロウロして見ようかと思っています。


一 季 一 優

まずは手始めにweb「俳誌のサロン」からその日の季語を一つ選び、歳時記なども参考に掲載俳句の中から、私のフィーリングと偏見のみによって、優れた (というのはおこがましいですが、要はピタリと来る)一句を選び出して感想を述べてみようと言う、恐ろしい試みです。


3月11日  旧1月26日

季語       卒業

一優句      黒髪を豊かに吾子の卒業す

           祐森 彌香  (遠嶺)

お嬢さんであろうか、茶髪にもせず、パーマもかけずストレートに伸ばした髪が、誇らしげにまぶしい。素直に清らかに育ってくれた子が卒業するのである。親としての感慨あまりあるものがある。


3月6日   旧1月21日

季語       啓蟄

一優句      啓蟄や水槽の藻が泡を生み

           池田 啓三

「俳誌のサロン」には啓蟄の季語は無かったので他のweb季語集から例句を引用。今日、啓蟄ははずせないではないですか。
虫こそ出てこないが、いよいよ生き物の活動がさかんになって来たなあ、と言う実感が伝わってくる。植物の活動を目に見える形でとらえての啓蟄の描写は見事なのではなかろうか。


3月3日   旧1月18日

季語       雛祭

一優句      雛祭つひに娘を授からず

           刈米 育子   (苑)

日頃は思うこともないのだが、雛祭りの頃になると娘を持つことの無かったさびしさを意識する。特に何という不足のあるわけでもないが、女の子ゆえの華やいだ明るさを育む暮らしが出来ないという心残りの感情が新たになるのである。


2月28日  旧1月15日

季語       二月尽

一優句      急ぐなよ生き急ぐなよ二月尽

           菅原 健一   (沖)

気づいてみれば、今日で2月は終わりである。月が短いだけで何がなし気ぜわしい想いがある。生き急ぐなよとは、作者が自らに言い聞かせている言葉であろうか。私も、もう生き急ぐというような歳ではなくなってしまっていると思えば、感慨がある。


2月24日  旧1月11日

季語      水温む

一優句     泥煙立てる大鯉水温む

          中野 菊子        (春耕)

水温の変化を一番に敏感に感ずるのは、まずもって魚であろう。冬の間、深みにじっと潜んでいた主のような大鯉が大きく尾鰭を動かして泳ぎだしてきた。いよいよ春の到来である。
先日、近くの川辺を散歩していたら、淵のあたりで泥煙が立っていた。まさにこの句の情景であった。


2月21日  旧1月8日

季語      梅日和

一優句     たっぷりと肺膨らます梅日和

          近藤 英治   (沖)

のどかに春めいてきた野外に出て、まだちょっぴり冷たい空気を深呼吸してみる。肺の中まで染み渡ってきた空気の中に梅の花の香りがするような心地よい日和である。


2月18日  旧1月5日

季語      梅の花

一優句     鎌倉の谷(やつ)という谷(やつ)梅の花

           松崎 鉄之介   (濱)

こういう著名な大家の句を選ぶのは、非常に気が退けていやだったのだが、この句、一読で情景情感がすっと入り込んできて分かり易く選定してしまった。
鎌倉はいくつもの谷津によってなりたっている町と言っていい。そのどこに行っても梅の花が咲いている。浅かった春もようやくにして定まった。
鎌倉には桜よりも梅がよく似合うように思われる。


2月16日   旧1月3日

季語      蕗の薹

一優句     父祖の地に淡々と生き蕗の薹

         乗光 雅子    (雨月)

ずうっと昔から変わることなく、生まれ替わり、死に替わりしてきた祖先と同じようにこの土地で平穏に生きてきた。早春の時季を忘れることなく、毎年必ず芽吹くこの蕗の薹のように。

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