土つくりと肥料
(その2)
堆 肥
1.堆肥の効用
堆肥とは、落ち葉やモミガラなどの有機物を微生物の力で分解してできたもの。
a.土壌の団粒化が進み、土が耕しやすく、空気や水のとおりがよくなる。
b.腐植(土壌中で、微生物などの作用で植物が不完全に分解すること)が多くなるため水分保持力が高まり乾燥しにくくなる。
c.団粒が増え、肥料分を保持する保肥力が増大して、肥料ぎれや肥やけがしにくくなる。
d.吸収しにくいリンサンや微量要素が吸収しやすくなる。
e.土壌に有害物質が流入したり酸性肥料を施したりしても、その害や酸度の急変が和らげられる。
f.多様な微生物が増殖し、有害微生物を抑制する有用微生物が多くなる。
g.堆肥に含まれるチッソ(N)、リンサン(P)、カリ(K)や苦土(酸化マグネシウム)、石灰(酸化カルシュウム)などの多量要素のほか、マンガンやホウソなどの微量要素が肥料分となり供給される。
2.堆肥の種類
a.栄養堆肥
家畜フンや油カス、食品カスなどの肥料分を多く含んだ材料で作ったもの。特にチッソやカリ分が多く含んでいるので、微生物が活発に活動し、タンパク質などの有機態チッソを、作物が吸収しやすい無機態チッソに変えて根に供給する。
しかし、栄養堆肥は植物の繊維分が少ないので、腐植や団粒を増やして土壌改良する効果はいまひとつです。
b.ふかふか堆肥
落ち葉、モミガラ、ワラ、オガクズ、バークなど植物の繊維分材料だけを1年以上かけて作ったもの。肥料分が少なく肥料効果は少ないが、土壌有機物を増やし多くの腐植ができ、土をふかふかにする効果は抜群です。水もち肥もちも向上し、微生物によって繊維分がじっくりと土の中で分解されるので、その効果も長続きします。
3.堆肥の施し方
a.全面全層施用
畑全面に散布し、深さ20cmー30cmの全層を耕しながら混ぜ込む。
b.穴施用
作物の植え穴の下部分に施す。
c.溝施用
畝を作る前に、畝の中央部分に溝を掘りその中に施用して畝立てをする。
4.栄養堆肥の選び方・施し方
a.選び方
家畜フンには乾燥フンと堆肥化した発酵フンがある。乾燥フンは乾かして水分を抜いただけで、土中で水分を吸うと生フン状態になります。未熟堆肥と同じく肥やけ、発芽障害、ガス障害が発生しやすいので作付け1ヶ月前から施し、土中で充分腐熟させることが必要です。発酵フンは、一度微生物が分解しているので、肥効も乾燥フンよりおだやかで障害の心配がありません。
b.施し方
栄養堆肥には、チッソやカリ成分が多く含まれています。従って、あまり一度に多く施肥すると、トマトなどの果菜類では、茎葉ばかりが太く大きくなり肝心の花や実がつきません。
栄養堆肥は、含まれる栄養分を充分考慮し、作物の肥料の好みに合わせる必要があります。
5.ふかふか堆肥の選び方・施し方
a.選び方
未熟なふかふか堆肥は、微生物が土中のチッソを栄養源として吸収するため、チッソ不足になります。更に、未熟堆肥の臭いを害虫が嗅ぎつけ産卵して幼虫が根を食害することがある。葉っぱや小枝の原形が残っているもの、握って水分がでるものなどは要注意です。なるべく完熟堆肥に近いものを使用しましょう。
b.施し方
完熟したふかふか堆肥であれば、一度にどれだけ入れても害の心配はありません。しかし、ふかふか堆肥は肥料分が少ないので元肥の料を減らすことはできません。ふかふか堆肥を施すとき、過リン酸石灰を5%程度混ぜて施すとリンサンが有効に吸収しやすくなります。
固まりのできないように畑の全面に散布し、よく耕せば作土層全体が土壌改良されます。