Over The Trial
その6
はりきって出た一行は、駅で切符を買って電車に乗り込んだ。ちなみにフェイは(見た目が)小学生未満なので、無料である。
「さすがに休みの日ならこの時間帯でもあまり混んでないな」
そう言ってため息をついたのは太助だ。
「普段は違うんですか?」
シャオが聞く。
「平日だったら、身動き取れないくらいだから」
「まあ、そんなに混んでいるのですか」
「俺たちも高校に行くときにはそんな電車に乗らなきゃならないかもしれないんだから…」
そう言ってから太助は考え込んだ。はたしてシャオと一緒に高校に行く日は来るのだろうか?
(なんとかしてシャオを宿命から解き放ってやらなきゃな。そしてシャオと…)
「太助様?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
照れ隠しに太助がキリュウの方を見ると、キリュウは何かを考えている表情でパンフレットとにらめっこをしていた。
「キリュウ、まだ何か悩んでるのかなあ?」
「きっと着いたら大丈夫ですよ。だってあんなに熱心にパンフレットを見てるんですから」
「だといいけど…」
そう言って太助が他の二人のほうを見ると…
「ZZZ…」
フェイとルーアンは眠りこけていた。
「静かだと思ったら…」
「お二人ともあまり寝てらっしゃらなかったみたいですから」
シャオは小さく笑った。そしてその笑顔に思わず見とれる太助。相変わらずにらめっこ状態のキリュウ。そんな一行を乗せて電車は走る…
一行が東京ラッキーランドに直結している駅に着いたのは開園30分前だった。
「ほらみろ、やっぱり早すぎるって…」
太助が愚痴をこぼしたが、
「ふわあ〜。ん、なあに、たー様?」
当事者であるルーアンは何も聞いていなかった。
「もういいよ…ところで、フェイの料金ってどうすればいいんだろう」
「電車も小学生以下でいけたんだから、ただで入れるんじゃないの?」
「フェイ…」
そう言っていると、料金表を見に行っていたシャオが戻ってきた。
「太助様、乳幼児の料金というのがありましたから、たぶんそれでいいんじゃないかと思います」
「フェイ、それでいいか?」
「いいよ、ここではそのほうが自然そうだし」
「たー様、早く入りましょうよ〜」
そう言ってルーアンがしなだれかかってきたが、太助は冷静に押し返して、
「開園時間になるまでは入れないんだよ」
「まあ仕方ないわね。…ってキリュウ、いつまでパンフレットとにらめっこしてるつもり?」
しかしキリュウは聞こえていないのか、顔を上げようとしない。
「やはりここが…でもそうなると…」
おまけに何かぶつぶつ独り言を言っている。
「キリュウはさっきからずっとああなの?」
「今気づいたのか? まったく図太いというか、無関心というか…」
チケット売りのおねえさんが何か変わったものを見るような目で見ていたが一行は気にしない。それはそうだろう、オープン直後ならともかく、オープンからだいぶたった今、開園30分前から陣取って騒いでいる中学生たちとその保護者らしき女性、そして小さな子供。何か起こりそうな気がすると思ったのは、おねえさんだけではなかっただろう…さあ、これからどうなることやら…