話は少し前にさかのぼる。いかにもナンパそうな少年三人組が本屋の前を通りかかった。
少年A「おい、見ろよ。かわいい女の子がいるぞ」
少年B「ホントだ。ここらじゃ見ない顔だな。どこから来たんだろう」
少年C「お前ら、そんなこと言ってるヒマがあったら声かけろよ」
少年A「そ、そんなこと言っても…」
少年B「い、いきなりはちょっと…」
少年C「まったく、お前らは臆病だな。いいよ、俺が行ってくる」
そう言って少年は店の中に入っていった。もう二人の少年もそれに続く。
少年は離珠のすぐ背後に立った。しかし離珠は本に夢中でそのことに気づいていない。少年は離珠の肩に手を置いた。離珠はやっと気づき後ろを振り返る。
少年C「キミ、どこから来たの?」
いきなり知らない人に声をかけられた離珠は驚いて一瞬声が出なかった。
少年C「キミ、かわいいね。俺たちと一緒に遊ばない?」
離珠「え…あ、あの……」
少年B「ね、いいでしょ?」
少年A「一緒に楽しいことしようよ」
離珠はいつのまにか3人に囲まれていた。
離珠「い、いやっ!」
恐怖を感じた離珠は逃げようとしたが、少年に腕をつかまれる。
少年C「さ、行こうぜ」
離珠は少年に腕をつかまれたまま、強引に店の外へ連れ出されようとしていた。
離珠(だ、誰か助けて!)
そのときだった。
??「やめたまえ!嫌がっているだろう」
離珠(こ、この声は?)
少年C「なんだ?……いててててててっ!」
少年はいきなり腕をねじり上げられた。
??「女の子に乱暴なまねをするからですよ」
これに驚いた少年たちは一目散に逃げ出した。腕をねじられた少年も、腕を押さえながら店の外に出て行った。
??「大丈夫ですか?」
離珠(やっぱり出雲しゃんでし)
偶然、本屋の前を通りかかった出雲は、少年たちが少女―離珠を強引に連れ出そうとしているのを見て、いても立ってもいられなくなったのだ。
離珠「だ、大丈夫でし、いや、です。あ、ありがとうございました」
出雲「いえ、男として当然のことをしたまでですから。次からは気をつけてくださいね」
そう言って出雲は立ち去ろうとしたが、離珠は出雲を引き止めた。
出雲「…? まだ何か?」
離珠「あ、あの、もしよろしければ、少し私に付き合っていただけませんか?」
出雲「……え?」
突拍子もない申し出に出雲はしばらく固まってしまった。