ハサミゲージに関して 質問と回答(2)



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 〔2〕サブゼロ処理とその要否



 サブゼロ処理というのは、焼き入れ処理後に、引き続いて極低温にワークを晒すことによって、残留オースティナイトのマルテンサイト化をいっそう徹底させて、その後のワークの(焼き入れ部分の)体積変化を抑制するという処理のことをいう。
 理屈の上では、焼き入れ処理というのは、焼き入れ温度に達したワークを急速に冷却することで焼き入れ硬度が実現されるというメカニズムなのだが、そこではオースティナイトが完全にはマルテンサイト化が果たされず、従って、更なる冷却プロセスを賦課することによってこの化学反応を徹底させるということを意味している。そこでは、ワーク全体を極低温に晒すことで反応が進むというよりか、ワーク全体がその極低温度にまで温度が低下していくという、温度変化に対応した反応なのかという疑問が湧くのだが、それはさておき、いわゆる「残留オースティナイトとはどういうことかを先ず設問したい。

 私らのする焼き入れ処理というのはいわゆる「フレーム焼き入れ」なのだが、25mmの径寸の丸棒とか厚さのあるワークを焼き入れ処理しようとする場合、うまく全体を焼き入れできるかどうかを恐れるに充分な大きさなのである。
 焼き入れという場合、ワークの外側から加熱し、その芯部にまで充分に加熱できていると判断出来た段階で焼き入れ油(冷却油)に浸漬けして一挙に冷却するのだが、その場合、ワークの外縁部から熱が奪われて、順次に芯部に至るまで温度が低下させられていくのだが、従って、ワークの外縁部と芯部とでは冷却のスピードが違ってくる。冷却のスピードが芯部において確保されなければ、その部分でのマルテンサイト化は充分には果たされ得ないのである。これがいわゆる「残留オースティナイト」であるだろう。

 焼き入れを要する部分が大きければ大きい程、外縁部は焼き入れ硬度は出るが、芯部については焼き入れ硬度が充分に実現できているかどうかは分からない。
 この点は遙か昔から理解されていたことであった。
 そのために、例えば大径の栓ゲージ等の場合、内側を抉り込むように切削してその肉厚部分に焼き入れできるように仕様を考えたり、あるいは、高周波焼き入れの方法でゲージ部を数ミリ程度の深さに焼き入れするということで、焼き入れ部分はできるだけ小さく局限されるようにされてきたのだった。
 焼き入れ処理部分が僅少なものであれば、その焼き入れ部分の経時的な体積膨張の影響も僅少なものとなる。この当然な弁えがあったはずなのだが、比較的大きなワークについて総焼き入れ処理したものについて、「これだけ大きな経時的な体積変化が認められるじゃぁないか、これは大変だ、だからサブゼロ処理をしないといけない!」と言わんばかりの意見に出会うと、焼き入れ処理直後のワーク外縁部の焼き入れ硬度と芯部の焼き入れ硬度の違いと、サブゼロ処理後のそれぞれの硬度変化を数値で示してくれと思ってしまうのである。

 焼き入れ処理後にワークが常温に戻りきってしまうと、その後に幾らサブゼロ処理を施そうとしても効果はないという指摘がある。
 この指摘に従えば、ハサミゲージ製作の場合には、その製作工程にサブゼロ処理を組み込むことの有意性に疑問が生じるのだが、焼き入れ部分が極めて僅少なものであり、加熱と冷却が容易に徹底されるから、仮に残留オーsてぃないとのマルテンサイト化という問題が認められるような場合であっても、そのゲージ寸法値に対する影響は無視できるものであるだろう。

 世間ではよくある話なのだが、ハサミゲージが納入される場合、その検収時には合格したものが、納入度2〜3ヶ月後に社内校正すると、ゲージの通り部入り口が3〜5μm小さく寸法変化を生じていることが発見され、この原因と改善について問題になることがある。原因は焼き入れ処理後の経年的な寸法変化で(寸法変化の現れ方が早すぎるのだが)その対策として、サブゼロ処理がなされるべしということに帰結される。
 このような場合の寸法変化の原因は、結論を言えば「焼き戻し処理」をしていないことに拠る。焼き入れの際に、加熱したワークを焼き入れ油に浸漬けして冷えたらそれで完了としているからなのだが、焼き入れ処理においてその焼き入れ硬度にのみに関心が集中されるから、そのために、肝要な付随処理は関心の埒外に置かれる。
 この点も、昔からよく理解されていて、熟練した焼き入れ作業者は、加熱後の焼き入れ油への浸漬けに際して、ワークが冷え切らないうち(おおむね200℃前後)に引き上げて、その後に常温下で徐冷するという作業をしていたのである。あまり早く引き上げてしまうと冷却不十分で焼き入れ硬度が甘くなり、油温にまで冷えるまで浸漬けしておくと焼き戻しの効果が図れない。
 あるいはまた、焼き戻し油を用意して150〜200℃の焼き戻しをするまでもなく、沸騰した湯に浸漬けして100℃で煮沸するだけでも焼き戻しの意味は出てくるという。

 ハサミゲージの寸法変化の原因にはさまざまなものが指摘されるのだが、世間で「経年変化」と指称されている事象に対しては、焼き入れ後に焼き戻しをきちんと施しているか否かが先ず問われるのであって、サブゼロ処理が必須とされる事案というものがあり得るのかどうか、改めて問われるのである。


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