§12 火攻篇
火攻篇では、
「火攻めの方法」などが説かれている。  

12-01
「火を行うには必ず因(いん)あり、煙火は必ず
 素(もと)より具(そな)う。火を発するに時あり、
 火を起こすに日あり」 
火攻めを実行するには必ず理由が無ければならない、
道具は普段から準備しておかねばならぬ。
しかし、やたらに火を放ってよいというものではなく、
時と日を選ばねばならぬ。

12-02
「火、内より発すれば、則(すなわ)ち
 早く之に外より応ぜよ」 
敵陣内に火の手が上がったら、速やかに外から攻撃せよ。
(敵内部に混乱、内輪もめが生じたら速やかに仕掛けよ) 

12-03
「火、発するも兵静かなるは、待ちて攻むる勿(な)かれ」 
敵陣内に火の手が上がっても敵兵が騒ぐ様子が無い場合は、
うかつに攻撃せず冷静に状況を見極めよ。

12-04
「火、外より発す可(べ)くんば、内に待つこと無く、
 時を以て之を発せよ」 
外から火をかける方が良いと判断したら、
敵陣内からの出火を待つまでも無く、
好機をとらえて実行せよ。

12-05
「火、上風(じょうふう)に発すれば、
 下風(かふう)を攻むる無かれ」 
災いを招く可能性のあることはしてはならない。

12-06
「昼、風久(ひさ)しければ、夜、風止(や)む」 
経験則や伝承は出来るだけ考慮すべきだ。

12-07
「夫(そ)れ戦い勝ちて攻め取りて、其の功(こう)を
 修(おさ)めざるは凶(きょう)なり。
 命(な)づけて費留(ひりゅう)と曰(い)う」 
たとえ戦争に勝ったとしても、目的が遂げられなければ
大失敗で、無駄遣いである。

12-08
「利に非(あら)ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、
 危うきに非ざれば戦わず」 
国益にかなわなければ戦争を始めてはならない、
勝つ見込みが無ければ軍事力を行使してはならない、
危機が迫っていなければ戦ってはならない。

12-08-1
「利に非(あら)ざれば動かず」
国益にかなわなければ戦争を始めてはならない。 

12-08-2
「得るに非(あら)ざれば用いず」
勝つ見込みが無ければ軍事力を行使してはならない。 

12-08-3
「危うきに非(あら)ざれば戦わず」
危機が迫っていなければ戦ってはならない。 

12-09
「主は怒りを以て師を興(おこ)す可(べ)からず、
 将は慍(いきどお)りを以て戦いを致す可からず、
 利に合(ごう)して動き、利に合せざれば止む」 
君主は怒りに駆られて開戦してはならない、
将は憤りの感情で戦ってはならない。
一時の感情でなく、有利と判断したときは戦い、
不利な場合は戦いをやめるべきだ。

12-10
「亡国(ぼうこく)は以て復(ま)た存す可(べ)からず、
 死者は以て復た生(い)く可からず。
 故に明主は之(これ)を慎(つつし)み、
 良将は之を警(いまし)む」 
滅んでしまった国は二度と再興出来ず、
死んだ兵士は生き返らすことは出来ない。
従って、明君は慎重に事に臨み、
名将は注意深く統率する。


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