§07 軍争篇
軍争篇では、
「よく利害を検討し、不利を有利に変える工夫をすること」
などを説いている。
「風林火山」「迂を以て直となす」などがある。
07-01
「迂(う)を以て直(ちょく)となし、患(かん)を以て
利となす」
短絡的な対処をせずに、迂回しても有効となる
策をとるべきだ、また不利を利点に変えようとする
発想が大切である。
07-02
「軍争(ぐんそう)は利と為り、軍争は危(き)と為る。
故に軍を挙げて利を争えば及ばず。
軍を委(す)てて利を争えば、則(すなわ)ち
輜重(しちょう)捐(す)てらる」
敵よりも有利な態勢を取ろうとする場合、下手をすると
危険な状態になる。全軍で進軍すれば行動が鈍重になり
遅れをとってしまう。といって各部隊を勝手に
進軍させれば速度の遅い輸送部隊は捨て去られてしまい、
補給が出来なくなる。
07-03
「軍に輜重(しちょう)無ければ則(すなわ)ち亡び、
糧食無ければ則ち亡び、委積(いし)無ければ則ち亡ぶ」
軍が輸送部隊を失えば敗亡するし、糧秣の補給と
備蓄が無ければ生きることは出来ない。
07-04
「諸侯の謀(はかりごと)を知らざる者は、
予(あらかじ)め交(まじ)わること能(あた)わず」
周辺諸侯の考えていることを知らなければ
外交交渉など出来ない。
07-05
「山林(さんりん)・険阻(けんそ)・沮沢(そたく)の形を
知らざる者は、行軍すること能(あた)わず」
地形を十分に知っていなければ、
軍を進めることは出来ない。
07-06
「嚮導(きょうどう)を用いざる者は、地の利を
得ること能(あた)わず」
未知の地域に進出する時は、そこの事情に詳しい者に
案内や仲介を頼むことが大切である。
07-07
「兵は詐(さ)を以て立ち、利を以て動き、
分合(ぶんごう)を以て変を為すなり」
作戦の基本は敵をあざむくことにあり、
有利な状況を作り出すために、臨機応変に
兵力の分散と集中を上手く行うものである。
07-08
「其の疾(はや)きこと風の如く、
其の徐(しず)かなること林(はやし)の如く、
侵掠(しんりゃく)すること火の如く、
動かざること山の如く、
知り難(がた)きこと陰(かげ)の如く、
動くこと雷霆(らいてい)の如し」
行動を起こす時は疾風の如く迅速に、
情勢眺めの時は林の如く整然とし、
攻め入る時は烈火の如く猛然と、
動くのが不利な時は山の如く泰然とし、
暗闇の如く実態を秘匿し、
出動する時は雷の如く四方を震撼させる。
07-08-1
「その疾(はや)きこと風の如し」
行動を起こす時は疾風の如く迅速に。
07-08-2
「その徐(しず)かなること林(はやし)の如し」
情勢眺めの時は林の如く整然と。
07-08-3
「侵掠(しんりゃく)すること火の如し」
攻め入る時は烈火の如く猛然と。
07-08-4
「動かざること山の如し」
動くのが不利な時は山の如く泰然と。
07-08-5
「知り難(がた)きこと陰(かげ)の如し」
暗闇の如く実態を秘匿する。
07-08-6
「動くこと雷霆(らいてい)の如し」
出動する時は雷の如く四方を震撼させる。
07-09
「郷(ごう)を掠(かす)めれば衆(しゅう)に分かち、
地を廓(ひろ)げれば利を分かち、
権を懸(か)けて動く」
占領した敵領土は現地の人に分け与えて手なづけて、
協力を得ることが大切である。領土拡大に伴い、
兵力分散と効果を比較検討しながら、
我拠点を適切な場所に順次設置する。
07-10
「金鼓(きんこ)、旌旗(せいき)は人の耳目(じもく)を
一にする所以(ゆえん)なり」
金鼓や旌旗は全員の意志を統一するためのものである。
07-11
「人既(すで)に専一(せんいつ)なれば、
勇者も独り進むことを得ず、怯者(きょうしゃ)も独り
退くことを得ず。此(こ)れ衆を用うるの法なり」
全員が一体になっていれば、勇敢な者でも
勝手な抜け駆けは出来ず、臆病者でも
勝手に逃げ出すことは出来なくなる。
これが大部隊を管理する方法である。
07-12
「三軍(さんぐん)は気を奪(うば)う可(べ)く、
将軍は心を奪う可し」
敵全軍の士気をくじき、敵将の心を動揺させよ。
07-13
「善(よ)く兵を用うるには、其の鋭気(えいき)を避け、
其の惰気(だき)を撃つ」
名将は敵の士気旺盛な時は戦いを避け、
士気低下を待って攻撃を仕掛ける。
07-14
「治(ち)を以て乱を待ち、静(せい)を以て
譁(か)を待つ。此(こ)れ心を治むるものなり」
我は順調な状態を保ちつつ、敵が乱れるように仕向けたり、
我は平静な心のままで、敵が騒ぎ立てるように仕向ける。
これが人間の心理をつかんだやり方だ。
07-15
「近(きん)を以て遠(えん)を待ち、佚(いつ)を以て
労(ろう)を待ち、飽(ほう)を以て飢(き)を待つ」
我は遠征せずに戦力を蓄え、敵をはるばる誘い出し
戦力を消耗させる。我は休養しつつ敵が疲れて
やって来るのを待つ。我は糧道確保し敵の糧道は遮断する。
07-16
「正々(せいせい)の旗を邀(むか)ること無く、
堂々(どうどう)の陣を撃つこと勿(な)かれ」
自信に満ちて正々と進軍してくる敵軍に立ち向かったり、
堂々と構えている敵をまともに攻めてはならぬ。
07-17
「帰(き)師(し)は遏(とど)むる勿(な)かれ、
囲む師は必ず闕(か)き、窮寇(きゅうこう)は
迫(せま)る勿(な)かれ」
帰心に駆られた敵は障害突破の戦意が高いので
不用意に阻止してはならない、敵を包囲した場合は
逃げ道を開けておき気を抜いてから攻めよ、
窮地に陥った敵は死にもの狂いで反撃してくるので
追い詰めてはならない。
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