§04 軍形篇
軍形篇では
「まず、敗けない態勢取りをして、敵の虚(スキ)を突く」
ことを説いている。  

04-01
「善(よ)く戦う者は、先ず勝つ可(べ)からざるを為(な)し、
 以て敵の勝つ可きを待つ」
名将は、まず敗けない態勢を整えたうえで、
必勝のチャンスを待つ。

04-02
「能(よ)く勝つ可(べ)からざるを為すも、
 敵をして必ず勝つ可からしむること能(あた)わず。
 故に勝ちは知る可くして為す可からず」 
敗けない態勢は我の努力次第で作れるが、
我が勝てる態勢を敵に作らせることは、
我の努力だけではどうにもならない。
従って、勝つ計画の立案は出来ても、
希望的観測だけで無理をして戦いを仕掛けるべきでない。

04-03
「勝つ可(べ)からざる者は守りにして、
 勝つ可き者は攻めなり」 
勝つ条件が揃っていない時は守りを固めなければならない。
勝機を見出した時は攻撃に転じなければならない。

04-04
「善(よ)く守る者は九地(きゅうち)の下に蔵(かく)れ、
 善く攻むる者は九天(きゅうてん)の上に動く」 
守り上手は地中深く潜むように行動を隠し、
攻め上手は天空を駆け巡るように攻めたてる。

04-05
「勝を見ること衆人(しゅうじん)の知る所に過ぎざるは、
 善の善なるものに非(あら)ざるなり」 
誰でも考えるような常識的なやり方では、
見事な勝ち方とは言えない。

04-06
「戦い勝ちて、天下、善(ぜん)なりと曰(い)うは、
 善の善なるものに非(あら)ざるなり」 
世間からほめそやされるような派手な勝ち方は、
優れたやり方とは言えない。

04-07
「善(よ)く戦う者は勝ち易きに勝つ者なり、
 故に善く戦う者の勝つや智名(ちめい)も無く
 勇功(ゆうこう)も無し」 
名将は勝ちやすい状況をつくり無理なく勝つ。
従って、勝っても知恵者だとか勇者だという
賞賛は得られない。

04-08
「善(よ)く戦う者は、不敗(ふはい)の地に
 立ちて敵の敗を失わざるなり」 
名将は敗けない態勢を固めて、敵のスキがあれば
機を失せずこれを攻めて勝つ。

04-09
「勝兵は先ず勝ちて而(しか)る後に戦いを求め、
 敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む」 
名将はあらかじめ勝てる態勢を整えてから戦いを始め、
凡将は戦いを始めてしまってから勝とうとする。

04-10
「善(よ)く兵を用いる者は、道を修めて法を保つ」 
名将は明確な目標を掲げて、それを実現するための
組織運営をキッチリと行う。

04-11
「兵法は、一に曰(いわ)く度(ど)、二に曰く量(りょう)、
 三に曰く数(すう)、四に曰く称(しょう)、
 五に曰く勝(しょう)」 
武力戦争に当っては、地形的要素、兵力的要素、
幾何的要素を把握して、敵と我の形勢を比較評価して
我の優勢化を図り勝算を得ることが大切である。

04-12
「勝兵(しょうへい)は鎰(いつ)をもって銖(しゅ)を
 称(はか)るが若(ごと)し」 
勝つ軍は、480万の兵力で1万の敵兵力を撃つような
戦い方をする。

04-13
「積水(せきすい)を千仭(せんじん)の谿(たに)に
 決するが若(ごと)くなるは形なり」 
満々と蓄えた水を千仭の谷に切って落とすような
激しい勢いは、優勢な態勢からもたらされる。


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