§03 謀攻篇
謀攻篇では
「はかりごとで敵を攻める方法」を説いている。
百戦百勝は善の善なるものではなく、極意は
「戦わずして人の兵を屈する」と言っている。
つまり、敵を知り己を知れば百回戦っても危険は無い。  

03-01
「用兵の法は、国を全(まっと)うするを
 上(じょう)と為し、国を破るは之に次ぐ」
戦略の原則は、国を傷つけずに勝つのが上策で、
傷つけて勝つのは次善の策である。

03-02
「百戦百勝は善の善なるものに非(あら)ざるなり。
 戦わずして人の兵を屈するが、善の善なるものなり」 
百回戦って百回勝っても、それは最上の勝ち方とは
言えない。武力行使せずに敵を屈服させることこそ
最上の勝ち方である。

03-03
「上兵は謀(はかりごと)を伐(う)ち、其の次は
 交(まじ)わりを伐ち、其の次は兵を伐ち、
 其の下(げ)は城を攻むるなり」 
最上の戦い方は敵の謀略を封じることであり、
その次は外交策略で敵の同盟関係を断ち切り孤立させ、
その次が武力を行使することであって、
城攻めは下の下である。

03-04
「善く兵を用うる者は、人の兵を屈するも
 戦うに非(あら)ざるなり」 
名将は武力行使せずに敵を屈服させるものだ。

03-05
「用兵の法は、十なれば之を囲み、五なれば之を攻め、
 倍なれば之を分かち、敵すれば能(よ)く之と戦い、
 少なければ能く之を逃れ、若(し)かざれば能く之を避く」 
我兵力が圧倒的に優勢ならば包囲し、
かなり優勢なら正面から攻め、
優勢なら敵を二分して各個撃破せよ、
敵と兵力拮抗なら全力を挙げて戦い、
我兵力劣勢なら防御や根拠地を移動しながら遊撃戦で戦い、
完全に劣勢と分かったら衝突を避けよ。

03-06
「小敵(しょうてき)の堅(かたき)は大敵の擒(とりこ)なり」 
弱いくせに無理をすると、強い敵にやられてしまう。

03-07
「将は国の輔(ほ)なり。輔、周(しゅう)なれば国必ず強く、
 輔、隙(げき)あれば国必ず弱し」 
将はトップの補佐役である。トップと将の仲が
ピッタリ合っていれば、その国は必ず強くなり、
そうでなければ必ず弱くなる。

03-08
「君の軍に患(かん)となる所以(ゆえん)のものに三つあり」 
トップによる三つの指揮への介入は、軍に災難をもたらす。
(1)戦場の実情をしらないのに、進撃命令や退却命令を下す。
(2)軍隊の事情を知らないのに、将の軍事行政に干渉する。
(3)用兵のやり方を知らないのに、将の用兵に干渉する。 

03-08-1
「軍の以て進む可からざるを知らずして之に進めと謂い、
 軍の以て退く可からざるを知らずして之に退けと謂う」 
戦場の実情をしらないのに、進撃命令や退却命令を下す。

03-08-2
「三軍の事を知らずして、三軍の政(まつりごと)を
 同じくする」 
軍隊の事情を知らないのに、将の軍事行政に干渉する。 

03-08-3
「三軍の権を知らずして、三軍の任を同じくする」 
トップによる三つの指揮への介入は、軍に災難をもたらす。
(1)戦場の実情をしらないのに、進撃命令や退却命令を下す。
(2)軍隊の事情を知らないのに、将の軍事行政に干渉する。
(3)用兵のやり方を知らないのに、将の用兵に干渉する。 

03-09
「三軍既(すで)に惑(まど)い且(か)つ疑えば、
 則(すなわ)ち諸侯の難(なん)至る。
 是れ軍を乱して勝を引くと謂う」 
軍内部で疑惑や混乱を生ずれば、
諸侯の反乱を招くことになる。
これは軍を乱して勝利を失うことだ。

03-10
「勝を知るに五つあり」 
将として具備すべき五つの能力がある。
(1)戦うべきか否かの判断ができる。(判断力)
(2)兵力比に応じた戦い方が出きる。(知識力)
(3)同じ目標に向って上下一体化が出来る。(指揮力)
(4)万全の準備を整えて敵のスキを狙える。(企画力)
(5)トップからの信頼を得て権限委譲される。(権限委譲) 

03-10-1
「以て与(とも)に戦う可(べ)きと、
 以て与に戦う可からざるとを知る者は勝つ」 
戦うべきか否かの判断ができると勝てる。

03-10-2
「衆寡(しゅうか)の用を識る者は勝つ」 
兵力比に応じた戦い方が出きれば勝つ。

03-10-3
「上下(しょうか)欲を同じうする者は勝つ」 
同じ目標に向って上下一体化がなされれば勝つ。

03-10-4
「虞(ぐ)を以て不虞(ふぐ)を待つ者は勝つ」 
万全の準備を整えて、敵のスキを狙うものは勝つ。

03-10-5
「将の能(のう)にして君の御(ぎょ)せざる者は勝つ」 
有能な将を任命したら、トップはこれを信頼して
干渉してはならない。

03-11
「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば、
 百戦して殆(あや)うからず」 
敵の実情を知って、我自身をわきまえて戦えば、
何度戦っても危険は無い。


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