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2007/8/15作成
石油を木質燃料に取り替えたとき、燃料費は安くなるのか?高くなるのか?簡単な計算をしてみました。
木質燃料は農山村部を豊かにしますか?という題でpdfファイルを掲載します。

2001/04/08 作成
森林バイオマス取得費用

森林バイオマス取得費用目次
森林バイオマスのトラック積載方法トラック運搬費トラック輸送の軽油消費量林地残材集積費除伐・間伐全バイオマス化伐出費

森林バイオマスのトラック積載方法
枝葉は嵩高いものです。ですから、そのまま積みます(右の写真)とあまり沢山の重量を積むことができません。それで荷台にこれを詰め込むために枝葉や小径木などは細かく砕いてチップにします。チップにすると沢山積めることになります(右下の写真)。次の表は、荷台容積1m3に積み込めるバイオマス重量を表したものです。これをここでは容積重と言うことにします。このデータは長野市の北、三水村というところで1999年12月に測ったものです。新葉と残葉という項目がありますが、新葉は全木集材についてきた枝葉で、残葉は伐採以前に地面に落ちていたものです。普通、残葉は拾いません。森林再生産の肥料になるものです。根部はチップにすることで却って容積重が減ってしまいますが、他のものは増えます。同じ容積の荷台なら根部以外はチップにした方が沢山積めるわけです。ただし、根部はそのままの方が沢山積めます。

三水スギのトラック容積重
生重量/箱車容積 乾燥重量/箱車容積
箱車容積 8m3 8m3
含水率(%) 無処理(tf/m3) チップ(tf/m3) 無処理(tf/m3) チップ(tf/m3)
新葉 91.90 0.259 0.386 0.135 0.201
根部 98.46 0.416 0.354 0.210 0.178
小径木 136.16 0.270 0.354 0.114 0.150
残葉 348.99 0.344 0.440 0.077 0.098


いま一つ、ふわふわのバイオマスを締めつけて束にする方法があります。
スウェーデンのメーカーが作ったものですが、ファイバーパック370という商品名がついた機械で、バイオマスを束にする機械です。


Fiberpac 370によるバイオマスの結束

こうしてバイオマスを束にしておくと何かと便利です。このまま自然乾燥させて、そのままロッギングトラックに丸太と一緒に積んで出すことができます。粉砕してチップにする場合には、直接トラックの荷台にチップを入れなければ逸散してしまいますので、粉砕機械はトラックの行動に合わせて作業をする必要があります。結束機械の場合は単独で勝手に作業ができる点が粉砕と違う点です。バイオマス利用が始まれば大変重宝する機械なのではと思います。この機械のデータも次のようなのがカタログについています。

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トラック輸送費
森林バイオマスのトラック積載方法の3つの方法について、トラック輸送費を計算してみたものを参考までに記載しておきます。実は、トラック運賃などというものは、需要と供給の関係で高くも安くもなるものですから本当のところは、それぞれの地域で事情が異なります。ここでは、サムセットというノルウェーの先生の提案した簡単式でトラックの時間費用を計算して、トラック輸送所要時間に掛け算するという方法で費用を求めました。長野県の三水スギのデータで計算してみます。

図中の粉砕8m3Bは容積8m3の荷台に丁度粉砕機械の能力とトラック台数が釣り合いがとれて粉砕作業に無駄のない場合です。Wのついている方はトラックが一台だけで粉砕機の費用を負担している場合です。粉砕機械はチップをトラックの荷台に直接入れなければならないのでこんなことになります。なおOD_tfは絶乾重量トンです。

上の図が絶乾重量トン当たりの費用を表していて大きな値になっていますので、これをバイオマスの熱量kWh当たりで描き直しますと、右の図のようになり、費用単位が小さく分かりやすい図になります。近いところでは1円以下になります。

処理・重量 必要容積(m3)
無処理4t 14.0
粉砕4t 10.3
結束4t 9.1
無処理11t 38.6
粉砕11t 28.2
結束11t 25.2

上の計算ではトラックの容積が一定としました。8m3は俗に言う4トントラック、22m3は11トントラックの場合を想定したものです。バイオマスのように軽いものはこの容積制限が大変強く効いています。したがって、この場合には、無処理より粉砕Bや結束の効果が大きいようです。
しかし、荷台を重量制限に合わせて右の表の容積にすることができるとすれば、無処理の方が余計な機械を使わないだけ安くなるはずです。そのときの費用は次の図のようになります。

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トラック輸送の軽油消費量
バイオマスをトラック輸送すると、軽油を燃料にしている限り、再生可能エネルギーを生産するために化石燃料を消費するというまことに都合の悪いことをやっていることになります。その上、エネルギー効率=生産されるバイオマスのエネルギー/消費される軽油エネルギーが1以下であれば、全く無意味なことをやっていることになります。そういうわけで、バイオマス生産のエネルギー効率を検討しておかなければなりません。容積制限と重量制限の両方について、トラック輸送に伴う軽油消費量/絶乾トンとエネルギー効率「バイオマス/軽油」を求めると下の図のようになりました。トラック輸送のエネルギー消費は厳しいようです。せめて、トラック輸送には木質ガス、あるいは木質メタノール、菜種から取った油、砂糖きびエタノールなどの植物性燃料を使いたいものです。

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林地残材集積費
全木集材で集まらなかった分や、短幹集材で残されたバイオマスを集めなければならないとき、その費用を計算してみました。これも長野三水村スギのデータを元にしています。使用する機械によって能率などが異なるわけですが、ここでは8m3積みのグラップル付きフォーワーダ(林地を走りながら材を拾い積みし運搬する車両)を用いる場合と、22m3積みのクローラ・ダンプ(無限軌道、ダンプ機構付きオフロード運搬車)と12トン級のグラップルの組み合わせを用いる場合について計算しました。無処理とは、そのまま積む場合、結束とはバイオマスのトラック積み込み方法のところで紹介した結束機械を用いて林地残材を前もって結束してある場合です。粉砕する場合は、粉砕機械を林地に持ち込むことが今のところできませんので集積してからトラック積みの際に粉砕することになります。この集積費は、トラック輸送費の3形態にそのまま追加すれば良い形になっています。
ただし、急斜面林地で林地残材を集めることは困難です。

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除伐・間伐材全バイオマス化伐出費
除伐・間伐材は小径木の伐採ということになりますので、その収穫には大変費用が嵩みます。しかし、バイオマス成立の条件で述べたように、除伐・間伐を促進して育林者に十分な植林・育林意欲をもって貰わなければ、再生可能エネルギーとして森林バイオマスを利用する前提条件が崩れてしまいます。ここは是非乗り切りたいものです。間伐の方法についても、施業方法についてもまだまだ工夫が必要です。

特定生育過程設定による全バイオマス化小径木林樹種・伐出方法別伐出費 単位 \/kWh
径級(cm) 6 8 10 12 14 16 18 20
木寄せバンチ・地引き集材・造材(トドマツ) \16.70 \8.30 \4.96 \3.48 \2.95 \2.28 \2.07 \1.85
バンチ・地引き集材・造材(カラマツ) \21.86 \11.10 \6.58 \4.06 \2.70 \1.86 \1.32 \1.05
高密度平行路網・地引き集材・造材(広葉樹) \12.44 \6.60 \4.35 \3.10 \2.73 \2.10 \1.64 \1.29
プロセッサ木寄せ造材(スギ) \18.06 \9.26 \5.42 \3.44 \2.94 \2.03 \1.43 \1.02
スイングヤーダ・造材(スギ) \25.56 \13.23 \8.91 \7.06 \5.62 \4.49 \3.58 \2.84
スイングヤーダ・造材(ヒノキ) \15.71 \8.13 \5.48 \4.34 \3.46 \2.76 \2.20 \1.74
プロセッサ木寄せ造材・フォーワーダ(スギ) \21.09 \10.95 \7.17 \4.60 \3.11 \2.26 \1.80 \1.43
プロセッサー直接造材(カラマツ) \10.26 \5.21 \3.02 \1.91 \1.27 \0.87 \0.62 \0.49

この計算では、人工林の生育過程については樹種・伐出方法に関係なく同じものを仮定しています。しかし、樹種による絶乾バイオマス比の違いはそのまま残していますので、例えば、同じ「スイングヤーダ」を用いた方法でも、スギとヒノキではバイオマス量が異なるために単位バイオマス量に対する伐出費用が異なってきます。丸太生産費のところに記載したバイオマスの費用はゼロですが、全部バイオマスとして利用するこの場合にはご覧のような費用がかかることになります。

除伐・間伐材全バイオマス化絶乾バイオマス集積速度
この場合は丸太生産のついでにバイオマスを利用しようということではなく、バイオマス取得を目的とした収穫作業です。この場合に、どのくらい多くの木質エネルギーが集積できるかを見るために、絶乾バイオマス集積速度を1時間当たりの集積熱量MWhを求めてみますと下のようになります。単位はMWです。

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