1.
困った。
今日は藤夜とデートの予定だった。
別にドタキャンされたわけではない。
というか、既に待ち合わせ場所には着いてるし、多分もうすぐ藤夜も来ると思う。
本当ならうきうきして待っていればいい筈のあたしが何に困っているのかと言うと。
「美咲?」
藤夜の近くに寄ろうとしたけど、動けない。
あたしは斜め下に視線を向ける。
そんなあたしを見て藤夜の視線も同じくあたしの斜め下へ。
「・・・どうしたの、その子」
あたしにべったりとくっついて、動きを阻めているのがあたしの本日の悩みの種。
あたしは溜息混じりに藤夜の質問に答えた。
「・・・・あたしの妹」
妹が着いてきたのだ。
complex
「よろしくね」
そう言って笑みを浮かべる藤夜を、みずほはじっと探るような目つきで見る。
初対面の人に対する礼儀がなってないわね。あとでちゃんと言っとかないと。
「・・・似非王子」
ぼそっと呟いたみずほの的確な一言に、思わず吹き出しそうになった。
ていうか、何でこんなに藤夜に対して敵意丸出しなんだろう。
みずほはふいっと顔を背けて言った。
「顔のいい男は信用しないことにしてるの」
「どうして?」
「お姉ちゃんの前の彼氏がそうだったから」
「なっ・・・!!」
何を言い出すか!
「爽やか好青年だと思ったのに、お姉ちゃん以外に好きな人できるとかあり得ない」
彼氏の前で昔の彼氏の話を出すなぁ!!
まだ小学生だからそんなところまで気が回っていないのかもしれないけど、みずほの事だからわざとだと言う可能性も否めない。ていうか、そっちの可能性の方が高い。
とりあえず、藤夜の顔が見れない。怖くて。
「しかもそのせいで、あたし今、身長伸び悩んでるんだから」
「それとこれと何の関係があるのよ」
何故あたしの失恋問題とみずほの身長が関係あるのか。
「お姉ちゃんのせいで牛乳見たくなくなったんだもん。きっとカルシウム不足のせいで身長が伸びないのよ」
「ばっ・・!」
「・・・・牛乳?」
「そう。いきなり牛乳大量に買い込んできたの。何かむ―――むがっ」
「気にしないでいいから!!」
あたしは慌てて手でみずほの口を塞いだ。
これ以上この子を野放しにしていたら何を言い出すか分からない。
もっと早くこうしておくべきだった。
ていうか、無理矢理にでも連れて帰れば良かった。
『お姉ちゃんの彼氏が見たかったから』って言い出した時点で嫌な予感はしてたのよ・・・!
でも、今日は家に誰もいないし。
一人で留守番させるのも可哀想だし。
とりあえず藤夜が来てから相談しようと思ってたのに。
「これ以上変なこと言ったら、問答無用で家に帰すからね!」
「それは無理よ」
「何でよ!?」
あっさりと否定した妹をにらむと、けろっと言ってのけた。
「あたしの今日の目的は、お姉ちゃんの彼氏の品定めなんだから」
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