この数日間は何だったのかと先輩に訊ねてみた。
私の予想はやはり間違ってはいなかったらしい。ちっとも嬉しくないけど。

「だって、小都俺のこと避けようとしてたし。本気だって言っても信じてくれなさそうだったから」

悪びれもせずにそう言う。

「勿論こっちを向かせる自信はあったけど、押して駄目ならひいてみろっていうじゃない? そっちの方が手っ取り早そうだったから」

手っ取り早い?!

「だって、信じるのに時間かかりそうだったでしょ?」

・・・それは、確かにそうかもしれない。
でも、だからって無視された方の身にもなってみろ。
まあ、先輩の告白を信じなかった私も悪いんだけどさ。
そうだ。先輩それを怒ってたんじゃ・・・

「お・・・怒ってないんですか?」
「別に。何でもいい。」
「だから・・・その執着してるんだかしてないんだか分からない態度だから、わかんなくなるんですよ」
「小都が手に入れば経過はどうでもいいって言ってるんだけど?」

先輩の言葉に、かあっと顔に血が上るのが分かる。
何てこと言うのさ!

「ああ。でもやっぱり傷ついたなぁ。」
「へ?」

いきなり何ですか。

・・・やな予感。

「だから、キスして。」
「はぁ?! 何言い出すんですか!?」
「小都のせいで精神的に傷を負ったから、癒してって言ってるんだよ」
「何が精神的傷ですか! こっちの方がトラウマになりそうな経験をさせられた覚えがいっぱいありますよ!!」

だからキスなんてしません! って言ったつもりだったのに。

「そう? じゃあ・・・」

先輩はにっこりと笑って、近づいてきて言った。

「お詫びにキスしてあげるよ」
「なっ・・・!!」

そんなつもりで言ったんじゃないのに!
ていうか、分かってるくせに!!
腰に手を回すなぁ!!!

「結構です、いりません!!」
「遠慮しなくていいのに」
「します! 心の底から遠慮します! そんなお詫び要りません!!」
「気にしなくていいよ。俺がしたいだけだから」

開き直らないでください!!

「小都」

ずるい。

性格悪いくせに。底意地悪いくせに。
そんな風に優しい声で名前を呼ぶのはずるい。
自分の気持ちを自覚した今では尚更、逆らえなくなる。

でも、それじゃ悔しい。

「先輩なんて―――」
「黙って」

何とか逃げようとする私の言葉を遮るように先輩はそう言って、唇を塞いだ。




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