舞台上にさらにひし形の八百屋舞台。両サイドに客席。二本のポールが立っています。
大道具といえば三つの箱のみ。
― 男の子がいました。女の子がいました。
二人は隣同士に住み、やがて成長し、恋に落ちました...。―
【ACT 1】
(客席の扉からメンバーが次々に駆け込んできます。みんな初めは黒の衣装。舞台上で
カラフルな衣装に着替えます。斉藤ぱぱは『千秋楽おめでとう〜!』と叫び、娘は
『よく来たなあ!』と客席に向かって言い、『お前はなんてことを〜』と怒られてます。
井上君は『はいっ!はい!僕も出ていいですか〜?』と走ってきました。)
少女の名はルイーザ。美しく成長し、恋に恋して夢見るお年頃。
青年の名はマット。大学で生物を専攻する大学生。(これはベンチシートの観客しか
聞こえなかったんじゃないかと思うのですが、井上君は股間をおさえながら『お父さん、
なんか生えてきた。毛みたいなやつ。』と沢木ぱぱに訴えます。沢木ぱぱは、隣に座る
観客に気を使い、わたわたと慌てていました。井上君の言い方がまたちっちゃい子が
フツーに言っているような感じなんです。『おとーさん、僕はどうやって生まれたの?』
と聞かれて、親が慌てるというあれですね。)
― 両家の父は仲が悪い。ゆえに両家の境には高い壁がある。
しかし若い二人はなんのその。壁越しに今日も愛をささやいている。―
二人は壁越しに父親達のやり方に対してぶつくさ。やがてルイーザは夕べ見た夢の話
を始める。『あたしが花を摘んでたら、侯爵(公爵?)が現われたの!40ぐらいの魅力的
な人!』(井上マット。ひきつった笑顔を浮かべつつ『おれやだな、そいつ。』とぼそっと
つぶやいてます。)
『それでね。侯爵は悪党をひきつれて突然飛び出してきたの!』
『おれほんっときらいだなあっ!そいつ!!』(声がひっくり返ってる。)
夢の話で真剣に盛り上がる二人。
『そんなところで何してる?』と沢木ぱぱ登場。慌てふためく二人。
『大学にまでいって一体何を学んできたのかこの馬鹿息子!』と嘆く父。
そして父は突然とんでもないことを言い出す。『お前に嫁を選んでおいた。』と。
(壁の向こうで聞き耳を立てているルイーザ。『でえっ?!』とミョーな声をもらしてます。
その声に反応する沢木ぱぱ。慌てふためくマット。)
『ねえっ!僕の言うことよく聞いてっっ!!』
いきなりすごい声で絶叫する井上マット。
『壁も聞いてくれ!小鳥も!父さん!あんたも!僕は決められた結婚なんかしない!』
『お前はする!』
『絶対しないっ!!』
(言い方が、なんだかちっちゃい犬が必死でほえてるように聞こえます。)
『僕だけのやり方で!付き添いなんていらない!聖書の教えもいらない!
握り合った手のぬくもり、ミツバチの羽音〜以下続く。』(←段々言ってることが
わけがわからなくなってきます。加えてかなり自分に酔ってます。井上氏叫びつつ、最前列
客席に乱入.。座席の背もたれにかけ登り再び絶叫。観客つられて思わず拍手。椅子から
降りる時『すいませんねえ。』とその座席の観客に一言挨拶して戻ってゆきました。)
― 子供を操りたけりゃ、たった一言言えばよい。『No!』 ―
息子と娘を追い払い、仲が悪いはずの父親が和気藹々と話している。すべては父親達の
はかりごと。年頃の子供は親に逆らうもの。ならばそれを逆手にとって二人を結婚させようと
初めから仕組まれた両家の争い。
ここまで完璧! しかしはたと考える。困った!仕上げが出来ない!
そこで沢木ぱぱはひらめいた!『人を雇って狂言誘拐。』
― (かなり怪しい)悪漢登場!―
(呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!ではございませぬが、)エロ・エル・ガヨ参上。
初めは乗り気でなかった斉藤ぱぱも二人にまるめこまれ、ついついその気に。
(♪この世はお値段次第〜♪と歌い踊るオヤジ約三名。山路氏、顔は二枚目をやってます
が、身体が別物。黒いマントをひらひらさせつつ、珍妙なステップを踏んでおります。
斉藤パパ、料金を値切る値切る。『ええっ!打ち上げなし?打ち上げないんだって。』と
山路氏、オケピに向かって話しかけます。オケピの皆さんもあからさまにがっかりした顔
をされてました。)
― 助っ人現る ―
いずこからか聞こえてくる小太鼓の音。舞台中央の箱の蓋がぱかっと開き、なすびモーティ
マーが顔をあらわし、続いて二瓶ヘンリーが出てくる。年老いた旅役者のヘンリーと死体役
専門のモーティマー。いい味だしてるこの二人。エル・ガヨがテストをするのだが、なにせ
物忘れが激しいお年頃。セリフが思い出せず、つっこまれたら『もっと難しいのでも良かった』
と逆ギレ。(まるでどこかのじーちゃんっっ。)
― 決行!―
時は9月。家を抜け出し、人気のない夜の森(?)で待ち合わせするマットとルイーザ。
肌寒さと不安の両方から身震いするルイーザ。『僕のジャケット着る?』声をかけたのは
よかったのだが『いい』と言われて『そう?』とあっさり引き下がるマット。(井上君は逆に
しっかり上着を自分で着込みます。しかも上着の裾は逆方向に折れ曲がって身体に巻き
つき背中が丸見え。笑)それでも段々良い雰囲気になってくる二人。
そして遂に悪漢乱入!
マットはへっぴり腰で戦い、かろうじて勝利!(レアティーズとはえらい違い。)しかし、
エル・ガヨは死なない、とにかく死なない。しつこく死なない。(ばったりうつぶせに倒れ、
身体をすっぽりマントが包むのですが、突然マントごとお尻がへこっともち上がり、私の位置
からは『へ』の字に見えます。しかも、ほふく前進ならぬ、ほふく尺取虫後退とでも言いたく
なる様な器用さで客席の方にずり下がってくるのです。)『うわああっ!ま、まだ死なない?』
と素っ頓狂なマットの声。何度も何度も起き上がってくるしぶといエル・ガヨ。(爆笑)
― めでたしめでたし(なのか?ほんとうに?) ―
喜びあう両家族。ポーズをとる四人。かくして王子と姫君は幸せに暮らしました。