観劇記

(2005)

吉原御免状

2005.10.15 梅田芸術劇場メインホール

松永清一郎(堤真一)、勝山太夫(松雪泰子)、柳生義仙(古田新太)、幻斎(藤村俊二)、
高尾太夫(京野ことみ)、水野十郎左衛門(梶原善)、柳生宗冬(橋本じゅん)他。

時は明暦三年。遊郭吉原の灯りが見える浅草川の土手、一人たたずむ旅装の侍。
名は松永清一郎。今は亡き師匠宮本武蔵の遺言により、庄司仁右衛門を訪ね、吉原に
やってきた。

          ―吉原はこの世の極楽。そして地獄だよ。―

彼に声をかける謎の老人・幻斎。

その日、新吉原門出の日。まばゆい灯りと喧騒の中、誠一郎は二つの花魁道中に
ゆきあたる。みとれて立ち尽くす誠一郎の姿に眼を止め、声をかける花魁勝山。

町の者に仁右衛門の消息を問えば、すでに他界しているという。
その後、清一郎は一人の男に襲撃される。抜刀し斬り結ぶ二人。男の顔色が変る。

          ―まさか、その太刀!―

男の名は柳生義仙。裏柳生の総帥である。

          ―お待ちなさい。柳生の。―

飄々とした幻斎老人の声がかかる。誠一郎は老人と吉原者達に救われる。
裏柳生が狙うは【吉原御免状】。そして誠一郎もまた彼らとは無関係ではなかった。
運命の糸は複雑にからみあう....。

嗚呼っっ!失敗したああぁぁ〜。かなり後ろの席だったのに眼鏡もオペラグラスも
忘れてしまうとは、なんたる不覚っっ!表情が追えなくてもったいなーい!(T◇T)

昔から周りはじーさま、ばーさまばかりでしたので、見るものはやはり時代劇が多かった
ですね。【水戸黄門】といえば東野のじじさま(笑)。杉様の【大江戸捜査網】【遠山の金さん】、
【必殺シリーズ】【影の軍団】、毛色違って【赤影】【サスケ】【新八犬伝】などなど良き時代。
おもしろかったです。

これはそんな時代を彷彿とさせる舞台。男はどこまでも強くたくましく、女も粋で美しい。
オープニングのにぎやかで華やかな吉原の様子がそれだけで、もうワクワクしました。
セットはシンプル。回り舞台上につくられているものが多く、それを右へ左へ回転させること
によって場面転換させておりました。(盆を使い倒したぞ!といった感じです。)

生真面目な誠一郎、悪党の義仙(自分の女の勝山が、誠一郎に惹かれているのを知るや
死なない程度に嬲り倒して見せしめに放り出す鬼畜さがナイスですわあ。古田さん!)。
花魁、実は義仙が放ったくノ一勝山の松雪さん。花魁姿も流石に美しく、きりりとして粋で
色っぽい。でもそこはかとなく物悲しさを漂わせています。
幻斎の藤村さんは長台詞でカミカミでしたけど、飄々とまったりといい味だしてました。
オイシイのは十郎左衛門の梶原氏と八百比丘尼の高田聖子さん。お笑いは封印のはずの
この舞台、いいとこ取りです。(押さえてもお笑いはどうしてもにじみ出してしまうんですね。)
嗚呼、DVDが早く欲しい〜。

いつもながら凝りまくった新感線のパンフレット。野波氏の写真が美しい!まるで写真集の
ような(しかし読みどころもある)パンフです。ケースが格子でパンフを抜いても中に絵が
ありまして透けて見えるという。(しかし変形サイズの上、格子をひっかけて破ってしまいそう
でまったくもって購入者泣かせです。)

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天保十二年のシェイクスピア

2005.11.03 シアターBRAVA!

三世次(唐沢寿明)、王次(藤原竜也)、清滝の老婆/おこま婆(白石加代子)、
お光/お幸(篠原涼子)、お里(夏木マリ)、お文(高橋恵子)、幕兵衛(勝村政信)、
十兵衛/繁蔵(吉田鋼太郎)、お冬/浮舟太夫(毬谷友子)、佐吉(高橋洋)他

天保九年、下総の国。清滝の宿には鰤の十兵衛が持つ二つの旅籠がある。
高齢になった十兵衛は身上一切合財をお里、お文、お光の三人娘の内、一番の孝行者に
譲ると告げた。本音は出来の良い(実は養女)お光にすべてを譲りたい十兵衛、しかし
口の上手い姉達に比べ、正直者で口下手のお光は全く太刀打ち出来ない。
なんとか姉達より美辞麗句を言わせたい。それならば少し脅せばよいのではと考え、
『親に孝行するのが嫌なら出て行け!』と言ってしまった十兵衛。しかし、生真面目な
お光はその言葉を真に受け、家を出てしまう。結局身上は二人の姉に譲られた。

三年後。孝行の約束は守られず、十兵衛は邪魔者扱い。しかも二人の娘は互いに張り合い
清滝の宿は派閥争いでもめにもめている。
野心にかける互いの亭主達に愛想をつかした姉妹は、それぞれの情夫に亭主を殺し、その
罪を相手方になすりつけるようもちかける。
運のないことに、十兵衛はお里の亭主と間違えられ殺されてしまった。

十兵衛の不幸を知ったお光が女渡世人となって清滝に戻ってくる。かつてのおとなしい風情
はどこにもない。お文の賭場に乗り込んだお光はお文の一人息子王次に出会い、二人は
恋におちた。騒動はますます激しくややこしいことに。

そんな折、暗い目をした身体の不自由な男が清滝に現われる。
佐渡の三世次。世を呪い、舌先三寸で相手を落とし入れ、漁夫の利をねらう男である。
お里と情夫幕兵衛による旦那殺しの秘密を握り、三世次はほくそ笑む...。

藤原王次と篠原お光(お幸)。井上君のマットと大和田ルイーザも、大概バカップルだと
思っておりましたが、そんなもんじゃございません!至上最強バカップルでございます。
愛の世界を爆走するふたりを見ていると、両家の子分さん方があまりにも気の毒で。
喧嘩好き女好きの王次。藤原君の濡れ場もあるんですが、私にはどうしてもプロレスに
しか見えません。(敵方のお女郎さんが藤原君の三倍位あるというのも原因かと。)
しかも相手にされてないというか、鼻であしらわれているというか。(笑)
歌は、う、歌はぁぁ〜っっ。音痴ではありませんが、素人レベルで上手いかなーと。
(藤原君のどすこい声質はけっこう好きなんですが、本格的にボイトレやってもうちょっと
歌えればSHIROHも狙えるかも。贅沢なファンです。ごめんなさい。)
おもしろかったのは、《生きるか、死ぬか〜》の名セリフを各時代の翻訳でやったこと。
明治の《アリマス。アリマセン〜》(だったかな〜)までたどり着いた時には大笑いでした。
篠原さんのネジが一本吹っ飛んだキャラって好きです。ヘタすると同性から反感を買い
かねないんですが、彼女の場合なんだかかわいくて。お光とお幸の早変わりも大変!

吉田十兵衛/繁蔵。いつも渋い役どころの吉田さん。こんなに愉快な方だったとは。
涙出るくらいおかしいし、なんだかかわいらしくてかわいらしくて。(稽古で暴走して『お前!
やり過ぎだ!』と蜷川さんにどつかれておられましたが。笑)

夏木お里。いつも思うのですが、マリさん化粧凝り過ぎ!お笑いになる一歩手前まで
いってるんですもの。でもマリさんはどこまでも女なんだなあ。
高橋お文。いまひとつ悪女になりきれてないかと。花見の場面でお重の小芋を食べるところ
があるのですが、とにかく延々と食べ続けてはります。(ホントはバナナらしい。)
それにしてもバナナ二本以上は食べていると思われます。(笑)その後、三世次に刺し殺され
死体を運ばれますが、おもむろにがしっと足をつかまれ、さかさの状態でひきずって
いかれてました。それもゾンザイに。(大女優に対してそんな扱いしていいの?唐沢さん!)
毬谷お冬/浮舟太夫。傾国の美女という言葉はこの人のためにあるようなもの。
どちらもいじらしいお冬と浮舟太夫。お冬はちゃんと十代に見えますし、浮舟は艶やかです。
しかし、なぜ毬谷さんの歌が狂った調子っぱずれのお冬の歌しかないの〜?!
ハイパーヴォイス聴きたかったのに〜っっ!(昔テレビで見た世阿弥での毬谷さんの歌が
忘れられません。女性の声で鳥肌が立ったのは毬谷さんが初めてでした。生ではなく録画
での声でしたのに。ああっもったいない!)

絶品は白石さん!なんて妖怪婆が似合うのでしょう!(笑)
それもなんとも言えずチャーミング!到底人間業とは思えないあの動き!出てくるだけで
眼を奪われます。唐沢さん、毒気にあてられてすっかり負けちゃっています。
唐沢三世次。う〜、どうもワタクシこの方の演技は受け付けられなくて。御本人が明るい
性質の方だからでしょうか?重い役をなさっても、あまり陰の部分が感じられないんです。
どうも騒がしいだけで。三世次は上川さんのほうが好きです。

初見の印象は【オヤジ達の宴会】。なんだかなーっっっ。これだけ主役クラスが集まると
場面場面で主役が入れ替わります。オムニバスのドラマをくっつけているといった感じが
して仕方ないのです。一体誰が主役だかわからなくなりますねえ。
ホームランバッターだけで野球は出来ないと言いますが、逆にまとまらない、そんな様子で
しょうか。

ダブリンの鐘つきカビ人間
(2005)

2005.11.19 シアタードラマシティ

カビ人間(片桐仁)、おさえ(中越典子)、戦士(橋本さとし)、神父(山内圭哉)、聡(姜暢雄)
真奈美(土屋アンナ)、市長(池田成志)、ジジイ(若松武史)、王(後藤ひろひと)他

ビジュアル的には今回の方が好きです。しかし、演技は前回のメンバーの方が泣けました。
カビ人間(大倉孝二氏)はなんともあどけなく、無邪気でしたし、おさえ(水野真紀さん)の
『死んじまえ〜♪』という言い方はものすごく可愛かった!真奈美(後藤久美子ちゃん)は
セリフがぽんぽんと小気味良く(ただし歌はアンナちゃんの方が上手い。)、聡(長塚圭史氏)
のへたれっぷりもやっぱり前回の方が...。
何故なんでしょう?やっぱりみなしゅっとしてはるからかなあ。姜氏など、オトコマエすぎだし、
足も長いし、プレスリーのイカれた衣装でもさほどおかしくないんですよ。
あとはなんでしょう?セリフの間かなあ。皆普通に淡々としゃべっている気がします。

前回から引き続きご出演の皆さんは相変わらず絶好調!一番変ったかなと思ったのは
橋本さん。(実は橋本さんで泣けた私。)
前回はいかにもマンガちっくなキャラ。今回はより童話になじんだ感じがします。
サイゴン以来(シンストはM!とかぶっていたので観ておりません。)ちょっと橋本さん欠乏
症だった私。もっと関西にも来て頂きたいものです。

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