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ホノルル〜東京(4) -- 「クジラ」?!


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遠洋航海に出る前、部員さん達と話しをしていて大洋に出ると、色々なものに出会うことがある、と聞いていました。

クジラ、イルカ、まんぼう・・・・・・見たいもののトップ3でした。
キハダマグロ、カツオ、刺身イカ・・・釣りたいもののトップ3でした。

このなかで、達成できなかったのは、クジラ、まんぼう、キハダマグロの3つでした。
まんぼうが現れないのは海が汚くなったからだそうです。
実際、ごみ袋(!)が浮いているのを太平洋のど真ん中で一度だけみかけました。

さて、この中で「クジラ」にはもうひとつ違った意味があります。
船にはスカッツルと呼ばれる丸い窓がありますが、航海中は甲板より下のデッキの窓は開けてはいけないことになっています。もちろん、甲板より上でも開けないにこしたことはありません。

もし、この窓を開けておいたままで航海していると、船が傾いた時に海水が船内にどっと入り込んで来ます。
これを「クジラ」と私たちは呼びます。
この「クジラ」の威力を私たちは聞いていたことはあっても、やってみる勇気(?)はありませんでした。

ところが、日本丸に乗り込んだ時、私と友人の一人はあることに気付きました。
運輸省の機船の練習船は、風呂が船の中央部にありましたが、日本丸は実習生の風呂が船首部の右側にありました。
さらに、その風呂には窓が2つありました。ひとつは湯船の上でした。
風呂なら、それも海水風呂なら、多少海水が入ってきても大丈夫だろう。
私たちはいつか「クジラ」の実験をこの窓でやってやろうと、この時思っていたのですが、長い間忘れていました。

それを、帰りの航海のそれも父島付近まで帰って来た時に思い出したのです。
窓を開けて風呂に入っていても、穏やかな時は海水も入って来ません。
そろそろ出ようか、と思った時海水がどぉあぁーーっと入って来ました。
「クジラ」の意味が、とぉーってもよくわかりました。

あまり揺れている時ではなかったのですが、その水量はすごいものでした。更衣室までびしょ濡れになって、さらに、廊下にまで流れ出てしまい、結局大騒ぎになってしまいました。
が、もっと困ったことは、一度海水が入るようになってからは、結構周期的に入って来て、その圧力で窓が閉められなくなったのです。

5分くらいでようやく閉めることができましたが、いつかは本物のクジラを見てみたいものです。


航程図孀婦岩
ホノルル−東京の航程図


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