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神戸〜シアトル(1) -- 超長音3声「さようなら」


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神戸出港
神戸港出港の様子

1989年6月21日13:00 クイーン神戸をはじめたくさんの見送りに加え、神戸市消防音楽隊の奏でるマーチに送られて、日本丸は神戸港新港第四突堤のQ2岸壁を出港しました。

出港の際には登檣礼(とうしょうれい)といって、実習生がそれぞれのマストに登って「ごきげんよ〜う」と3回見送りの人にあいさつしたあと、長い汽笛3回(注1)を鳴らして神戸(日本)に別れを告げました。(**)

帆船にもエンジンがあります。
一般公開などでエンジンルームの天窓を指して「これは何ですか?」と質問をされたときに「機関室の天窓ですよ。」と答えると、「帆船なのにエンジンをつんでいるのですか?」と驚かれることが結構あります。

帆船はマストが船の真ん中を船底まで貫いているので、エンジンはそのマストをさけて左右に2台あります。
エンジンに興味ある方のために、日本丸のメインエンジンを紹介します。
ピストンの直径が280mm、ストロークは340mmの6気筒の2サイクルエンジンで、馬力は1台あたり1500PSです。

そのエンジンを使って安全に帆走できるところまで行きます。
私たちの場合は八丈島付近まで約1日かけて行き、そこからはセールを開き風の力だけで進むことになります。

風の力だけで進むようになってからは、航海計器はあまり使わなくなります。
見張りは人間の目でし、レーダは補助的にしか使わない。
船の位置は六分儀で求める。
船の操船は船橋(ブリッジ)ではなく、キャプテンハーロックのような船尾の大きな舵輪で行う。
...などです。

また、水は貴重なので風呂の湯船には海水が満たされるなどの処置もとられます。実習生の教室には水タンクの水の量を示すグラフが貼られて予定より水の消費量が少ない場合には、真水のシャワーのボーナスがあったりしました。

(注1)
船では汽笛のならし方によって意味があります。
例えば短くプップップッと3回鳴らすと「バックするぞ」という意味です。
これはモールス信号と同じで、短音と長音の組み合わせで、航海に関する色々な情報を相手に伝えます。

これらの信号は航海に関する情報のため、「さようなら」というような船舶の航行に関係のない信号はありません。
しかし慣習で、長音より長い汽笛(超長音)を3回鳴らすことで「さようなら」と見送りの人達に伝えています。
これは世界共通のようです。


(**)
登檣礼については「航海訓練所」のページを参照してください。

リンク :   ・登檣礼の起源  
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