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むつ(1) -- 原子力船「むつ」はずごい!


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今回は原子力船「むつ」の話しです。

原子力船「むつ」がどこの所属かは忘れましたが、船内案内をしていただいた「むつ」の二等航海士は、以前に短期実習で教えていただいたことのある士官でした。航海士は運輸省から派遣されているよ うです。

当時、北海道電力の原子力発電所に対するデモがあったり、四国電力の原子力発電所で原子炉に制御棒を入れることにより、夜の発電量を少なくする計画があったりで、原子力(発電)に対する批判が大きくなっていた頃でした。

原子力船のしくみは、(私が理解した範囲では)ちょっと複雑な(?)タービン船といった感じです。
エンジンがストップしているときは、原子炉には制御棒がすべて挿入されていて出力は0%、フル・アヘッド(全速力)のときには、制御棒はまったく入っておらず出力は100%となります。

四国電力の原子力発電所での「夜間、原子炉に制御棒を挿入して出力を70〜80%にする」というだけでも、すごく社会問題になっていたのに、この原子力船「むつ」では出力が0〜100%まで変化するにもかかわらず「誰もあまり関心をよせない」と案内してくれたエンジニアは悲しんでいました。
この技術は(私には詳しくはわかりませんが)「すごい」のだそうです。

しかし、この船は「もっとすごい」のです。
まず甲板部関係は、ほどんど航海もしていない(失礼!)のに、航海計器は最新のものをそろえてあるのです。
原子力船「むつ」の内部
原子炉の上部(?)
また、機関部関係では、私たちはエンジンコントロールルームまで入れさせてもらったのですが、入るためにはIDカードとテンキーで暗証番号をいれないとダメなのです。
そして、次の航海を最後に廃船になることが決まっていました。その後の運命はご存じのとおりです。

この船の残念なところは、あいつぐ改造で航海計器やエンジン周りは最新のものになっているのに、肝心の原子炉は建造当時のままだったことです。
原子炉も最新のものだったら、もっと原子力船の実用化の可能なデータがとれたのかも知れませんね。


(**)
「むつ」は1992年の航海が最後の実験航海となり、1995年には原子炉が取り出されたのち、海洋科学技術センター(当時。現在(2004年)の独立行政法人 海洋研究開発機構)へ引渡されました。
そして、1997年には海洋地球研究船「みらい」となって生まれ変わりました。
(詳しくは以下のリンクなどをご覧ください)

リンク :   ・海洋研究開発機構    ・「みらい」の仕様    ・海洋地球研究船「みらい」誕生秘話  
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