eoさんの旅ノート
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ノルウェー 沿 岸 急 行 船 の 旅

船 4日目〜9日目

9月11日【船4日目】 スープ、満天の星、そしてオーロラ

 レストランで朝食の時、海を何気なく見ていて、通過する景観の中に地球形をした北極圏のモニュメントを見た。いよいよ北極圏だ。
 いつものように、ブランケットとカメラとマグカップを持って最上階のサンデッキに繰り出す。気温が上がる頃には、サンデッキのデッキチェアの半分ほどが埋まる。

風景
      ↑素晴らしい景観の中に民家が散らばっている。

 

 ボードーBodoで2時間半ほど停泊。1時間ほど散策した
 美しい街だ。

 午後も、いつものようにサンデッキで過ごす。
 雲ひとつない快晴だが、風は冷たい。

 見ていて飽きない景観が続く。
 多くの人がいても、サンデッキは静かだ。
 サンデッキの人々は皆、移りゆく景観を黙ってみている。

 夕景も素晴らしい。

 

 


   今 日 の 夕 食
前菜
 前菜:サーモン
メイン
メイン:ラム肉ラタトーユソース
とじゃがいもクリーム煮
デザート
 デザート:ヨーグルト・パンナコッタ
 チェリーのコンポート添

 今夜遅く、トロルフィヨルドに入っていった。
 フィヨルドの幅は狭い。周りは真っ暗だが、フィヨルドの両岸に触れんばかりにすれすれに、ゆっくりと進んでゆく。操舵技術の高さを見よ、と言わんばかりだ。最奥部に達したら、そこでUターンして、再び、そろりそろりとフィヨルドを出て行く。
 午後11時、トロル・フィヨルドの最奥部に達した時、最上階の小サンデッキで「トロルフィヨルド・スープ」がサービスされる。こってりしたシーフードのクリームスープ。紙コップに入っているが、なかなかリッチだ。

 スープを飲みながら、真っ暗な空を見上げた。
 満天の星! 降るような星、とか、いろんな表現があるが…星の数だけでなく、どの星もそれぞれが輝いているのが素敵だ。素晴らしい。

 そそり立つ、フィヨルドの真っ黒な峰々が私達を取り囲んでいる。星空を見上げていて、真っ黒の一つの峰の頂から、ぼぉーっとした2本の光が空にむけて立ち昇っているのに気付いた。ライトアップしてるんだな、と思ったが、直ぐに、えっ!? ライトアップ!? そんな馬鹿な!? と思った瞬間、その光が峰の頂から幽霊のように浮き上がり、ゆらゆらと揺れた。「オーロラだ!」連れ合いが叫んだ。見る間に、白い光の幅が広がってゆく。私達は急いで、広い方のサンデッキに移動した。真っ暗なサンデッキには誰もいない。白いオーロラは幅を更に広げながら、ゆっくりと中空に大きく伸びてゆく。
 カメラが手元にないのは残念。ここ最上階に上がったのはスープをもらうためだけだった。オーロラに出会うとは予想もしていなかった。
 間もなく、「オーロラが出てます」という船内放送があり、サンデッキにわっと人が押し寄せてほどなく、白いオーロラはぼんやりとなり、消えていった。この間、30分くらいだったろうか。
 私がオーロラを見るのはこれが初めてだ。ちょっと感動した。

 トロルフィヨルド・スープについて、この船の名がトロルフィヨルド号なので特別にサービスされるのか、それとも、このコースの沿岸急行船は全部同じサービスがあるのか、を船のスタッフに訊ねてみた。「トロルフィヨルド・スープ」の提供はどの船も同じである。ただし、中身が違う。通常は、ミネストローネ等のシンプルなスープである。しかし、このトロルフィヨルド号の場合は、同名のよしみで、リッチなスープをサービスするのである、ということでした。

9月12日【船5日目】

Ceremony   今日午前中は、最上階小サンデッキでAirctic Circle Ceremony 北極圏洗礼式がとり行われた。

 船長がぬかずく受洗希望者の襟元をぐいと広げ、海の神ネプチューンが大きな柄杓でそこめがけて氷をガバッと流し込む。船長の楽しそうな顔といったら!

 目出度く洗礼儀式を終えた受洗者は赤ワインをいただく。
風景
風景
風景
 

 雲ひとつない快晴が続く。

 しかし、サンデッキにずっといるとさすがに寒い。持参した防寒着を全部着込んでいる上半身は何とか問題ないが、下半身が寒い。冬物とはいえ通常は街着として使っているズボンは、北極圏で海風の吹きさらしの甲板ではなんとも寒い。周りを見ると、オーバーズボンを着用している人が何人かいる。オーバーズボンを持ってくるべきだったな。

 

 午後ずっとサンデッキにいて身体が冷えた時は…毎日そうだったが…最後にサウナに入って身体を暖めた。
 サウナ室の海側は全面ガラスになっていて、寝そべって景観を眺めることもできる。

 

 ジャグジーとサンデッキの間に、上に煙突が突き出た、機械室のエリアがある。そのエリアの壁面に沿った箇所は暖かい。皆それを知っていて、その部分はいつもデッキチェアで埋まる。そこが特等席だ。私達も、そこが空いていれば、いつもそこにデッキチェアをひろげた。


 トロムソに4時間停泊。2時間ほど散策。大きな街だ。マーケットや街並みや人の流れを見ていると、ここが北極圏にあるとは思えない。しかし、ここ数日は快晴だが、悪天候の時は、また、日照時間の短い厳冬期など、この街はどんな様相をみせるのだろうか。
風景  

 夜、雪山が見えたので撮影した。
 ロフォーテン諸島とノールカップの中間くらいか。

 夜遅く、ブランケットに身を包んだ多くの人々がサンデッキで待機した。連れ合いもその一人。昨夜オーロラが現れたので、オーロラ待ちである。しかし、この夜はオーロラは現われなかった。

9月13日【船6日目】 2度目のオーロラ

ホニングスバーグ  

 今日はホニングスバーグに3時間半ほど停泊。

 ここはヨーロッパ最北地のモニュメントがあるノールカップNorth Cape観光の基地である。
 乗船客がノールカップ観光をするには船催行のオプショナルツアーに参加するのが唯一の方法であり、多くの乗船客がそれに参加した。

←ホニングスバーグ港
  しかし、私達はオプショナルツアーには参加せず、船に留まった。

 「モニュメントが置かれているのは本当のヨーロッパ最北地ではない。モニュメントが置かれた場所は、それが置きやすい、そして目立ちやすい位置だからである。その少し北に小さな島がある。そこが本当のヨーロッパ最北地だ。そんなモニュメントを見て喜ぶのは、ただのミーハーではないか」 というのが、オプショナルツアー参加に反対した連れ合いの言い分である。
 そう言われれば、そうですね。

メハムンMehamn この航海の最北港→

風景
風景
風景

 明日はキルケネス、往きの北回りの終点なので、今日のディナーは、往きだけ片道コースの人には最後のディナーとなる。メニューはArctic Buffe。

Arctic Buffeのメニューの一部 (左の写真の赤い食材は赤キャビア…タラコみたいな…いつものメニューだが)
料理 料理

 最初にオーロラを見て以来いつも、夜暗くなると、連れ合いはオーロラ待機で最上階のサンデッキに上がる。この夜もそうだった。オーロラの兆候が出れば連れ合いからキャビンにいる私に合図があることになっている。

 直ぐに合図があった! カメラをしっかり持ってサンデッキに急いだ。
 細長い白いオーロラが中空をゆらゆらと揺れている。サンデッキにいるのは私達2人をいれて5、6人。昨晩のオーロラ待機の人々は、昨晩オーロラが出なかったのでもう諦めたらしい。
 早速、私はカメラをオーロラに向け、シャッターを押したが、シャッターが下りない! 慌ててカメラをいじくり回したがどうにもならない。この旅行の1ヶ月ほど前に初めて買ったデジタル一眼レフカメラだ。カメラ操作の練習はしてきたが、急にこういう事態になるとどうして良いか分からない。今は諦めるしかなかった。船内放送もなく、人もまばらなサンデッキで、静かに動くオーロラを眺めた。
 近くにいた青年がコンパクトデジカメに今撮ったばかりのオーロラを嬉しそうに見せてくれた。羨ましかった。コンパクトデジカメも持ってくればよかった、昔使っていたフィルム用カメラでもシャッターは下りただろう等、くどくどと考えた。

 やがて、白いオーロラはゆっくりと消え、サンデッキには私達以外は誰もいなくなった。私達も立ち上がり、サンデッキを去り際に、ふと空を見上げると、なんと、緑色のオーロラがそこにある。
 中空に、それこそ空の真ん中で、透き通った緑色のカーテンが、ヒダをやさしく揺らしながら、柔らかい風にゆったりとそよいでいる。
 夢のように美しい光景だった。
 それは5分間もあったろうか。カーテンがスッと消えた後しばらく、私が今見たものは、あれは夢か幻か、という思いに捕らわれた。

9月14日【船7日目】 オーロラ!オーロラ!オーロラ!

 今日は朝から、デジタル一眼レフカメラの操作説明書を熟読。カメラ設定を変えて何度もテストし、洗面コーナーに閉じこもって真っ暗の中で撮影を繰り返し、とにかく真っ暗な被写体に対してもシャッターが下りることを確認した。ただ、シャッター速度が最低でも約10秒。カメラを固定する3脚は用意していない。自分の手で支えるしかない。しかも、被写体(オーロラ)も動いているのだ。しょうがないか。
 既にオーロラは2度も出ている。もう出ないだろう。あんなに美しいオーロラを見たのだ。幸運ってそうそう続くもんじゃない。ほぼそう確信していた。しかし、内心は、ひょっとして…という気持ちは確かにあった。なので、オーロラを被写体としてデジタル一眼レフカメラで写真を撮る、その勉強はしっかりした。

 午前10時から3時間弱、キルケネスに停泊。
 往きだけ片道コースの客にはここが終点。多数の人が降り、そして、同じくらい多数の人が乗ってきた。
 ここから我等の船は南回りとなり、ゲイランゲルフィヨルドを除く、ほぼ同じコースでベルゲンを目指す。 キルケネス

 

 ←キルケネスから南回りに転じて間もなくの景観

 12時45分、キルケネスを出港。午後4時から1時間、ヴァルドーVardoに停泊。しばらく北上した後、南に向かうことになる。

 今日から折り返しだ。レストランでは夕食の席は決まっている。何となくまわりの席を見ると、まわりに座っている顔ぶれは殆ど変わっていない。話をしたこともない人も、顔を合わせると何となくニッと微笑む。往復コースをとる人は予想外に多いようだ。

 夜暗くなると、例によって連れ合いは最上階のサンデッキでオーロラを待つ。9時過ぎ頃か、合図があり、カメラをまたしっかり持ってサンデッキに上がった。
 今日のオーロラはすごい! 緑色の大きなオーロラだ。大空を舞台に緑色の帯が優雅に踊っているようだ。
 ほどなく船内放送があり、サンデッキにどっと人が上がってくる。いっぱいの人をかき分けながら、私はオーロラの写真を撮りまくった。

 オーロラには勢いがあり、すぐには消えそうにない。ちょっとトイレに、と私はサンデッキの出口へ歩き始めた。と、サンデッキのざわざわした騒音を突き破るように、悲鳴のような大歓声。空を見上げると、針のように細い光の線が、それも無数、天空からシャワーのように降り注いでいる。何ともすごい光景だ。私はトイレのことはしばらく忘れることにした(できるんですね)。
 しばらくして、トイレに向かうとトイレの前で、トイレから出てきた人が出会いがしらに「Northern Lights!(オーロラ!)、見たっ?!」と興奮気味に叫んだので、私は「イエース、イエース、ビューチフル! ワンダフル!」と叫びながらトイレに駆け込んだ。
 11時頃に、オーロラはゆっくりと消えていった。

 オーロラの写真は、3脚がないためにシャッター速度10秒前後の間を手で支えていたので、大ぶれで、そもそも買って間もないカメラで慣れてないしで、良い出来ではないが、スライドショーで雰囲気だけでも感じて下さい。スライドショーを 2っ同時に動かすこともできます。少しは、雰囲気が増すかも。

スライドショー[start]   [stop]

スライドショーの始まりは [start] を
 止めるのは [stop] をクリックして下さい。

   
スライドショー[start]   [stop]

Kong Harold
 シャッター速度の約10秒間カメラを手で支えているので大ぶれで、その上、動いている被写体であるため、まるで形を成していないが、左の写真の光の塊りは船なのです。

 北回りの沿岸急行船 Kong Harold号と オーロラの下ですれ違った。

風景  

9月15日【船8日目】 4度目のオーロラ

 今日の航海は
 コース最北の港メハムンMehamnからトロムソまで、このコースの最北の海岸線に沿って進む

風景  
 素晴らしい景観が続く。
 往き(北回り)には夜間なので見られなかった景観が、
 今回復り(南回り)には日中に見られることになる。
風景 風景

風景  

 いつものように最上階のサンデッキで、ブランケットとカメラとマグカップと共に、デッキチェアに身体を伸ばして景観を眺める。
aurora  

 夜になると、いつものように連れ合いは最上階のサンデッキでオーロラを待つ。
 連れ合いだけではない。昨夜の見事なオーロラの出現以来、毎夜、最上階のサンデッキでは機械室エリアの暖かい壁面に沿って12、3人のデッキチェアがずらりと並ようになった。オーロラ待機メンバーというわけだ。

 

 私達の期待通りにこの夜もオーロラが現れた。
 昨夜のものと比べればひっそりとしたオーロラだが、私達は満足。船内放送もなく、静かに写真を撮り、静かに眺めた。
 30分ほどで、雲がオーロラを覆い隠した。

9月16日【船9日目】 ロフォーテン諸島

ロフォーテン  

 今日はロフォーテン諸島をゆく。
 いわばこのコースのハイライトだ。
 私達はここを見るためにこの船に乗った、と言ってもいい。
風景  

 

 

 穏やかな海面に雲が映っている。


風景  

 

 雪の季節にはどんな景観なのだろう。
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 島と島の間には、大型車両も通行できる橋がかけられている。
風景  

 

 橋の中央は、大型船が通行できる高さ。

 沿岸急行船もその下を通る。
風景

    風光明媚

小さな村でも自動車道が完備

風景
 

風景

フィヨルドに入ってゆき、そして、トロルフィヨルドをゆく。

風景
風景  

 

 ロフォーテン諸島の南端あたり
風景  

 

 夕景も素晴らしい。
aurora  

 いつものように、連れ合いを含むオーロラ待機メンバーは、最上階サンデッキの暖かい機械室壁面にくっつくようにデッキチェアを並べ、暖かいマグカップを手で包むように持ち、ブランケットに身を包みながらオーロラを待って
 …そして、今日もオーロラは現れた。
 細い帯状のオーロラ。船内放送もなく静か。10分ほどで雲にかき消されたが、そこで眺めていた者は皆、満足だった。
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