・たまにゃ背伸びも実を結ぶ その2・

「こういう時ってさ、やっぱ話しかけて色々聞いたほうがいいよな。なんか調べてからいろいろわかるなんて俺もされたら嫌だし。」
 俺はいつにも増して前向きだった。

「それをストーカーっていうの。それにおまえがどうだとかどうでもいいよ。わかってんならぶつぶついってねーで行って来い。」
 阿藤
は俺を冷たく引き離した。
「俺もう17だしなぁ。」
 パニクってか軽く自己紹介をしだした。阿藤はもうわかっている。
「17にもなって物陰から見てるとかやってんじゃねーよ。あほか。」
 今にも阿藤は俺を押し出しそうだ。
「俺絵に興味持っとけば良かった。」
 俺は少し出っ張った門で、押し出されまいと体を支えながら言った。

「ばっかじゃねーの。おまえの選択肢それだけかよ!確かに一番の近道だろうが、ボロがすぐに出て逆に呆れられんぞ。でもおまえほどつまらん奴もいないしなぁ。」
 図星だが、
ちょっとあざ笑うように言われたのが鼻についた。
「だよなぁ。どうしようかな。名前ぐらい知りたいけど・・。いいや、なんか買って食いながら帰るわ。」
 
今回はいつもよりは燃え上がったが、結局はすぐに鎮火された。
「いってこいよ。ふられたっていいじゃねーか。おまえちょっとは痛い目見た方がいいよ。ずっとバカのままだぞ。そんなんじゃ。」
 俺は阿藤のセリフになんだか恥ずかしくなったが、やる気に満ちた。
「ぃよし。」
 
俺は意気込んで校門から一歩出て、彼女の方を見た。だがもういない。
「ぐずぐずしてるから。」
 
俺の一世一代の大勝負は音を立てて崩れ落ちた。しかしすぐにまた積みあがった。彼女は彼女が立っていた先の、うちの生徒が御用達の駄菓子屋に入っていたのだ。何やら買った様子だ。もう行くしかない。阿藤をおいて、俺は彼女の方へ向かった。
「・・・・・。」
 
しかし俺の脚と口は彼女の横を素通りし、駄菓子屋へ直行。結局声はかけられなかった。
 喉がカラカラだった事に気付いた俺は、炭酸入りのジュースを無作為に選び飲み干した。そして校門の方へ眼をやると彼女の姿は無く、友人も既にいなかった。


 俺は駄菓子屋を過ぎ、帰り道を歩いていた。見渡す限りの田園風景。もう飽き飽きだ。だけどこれが都会の風景だったらと思うと、少し安心する。たまに会う近所の知人に挨拶をしながら家に着いた。
 
まだ夕飯にも早く、母親は準備もしていない。時間はあるが金はない。バイトでもしようかなぁ。だけど足もないし、家の近所に雇ってくれるとこなんてないだろう。いつのまにかこの穏やかな風景のせいにして、何をするのにもおっくうになっていた。今日のことなんて自業自得の成れの果てだ。その時家のチャイムがなった。母親が出て俺の名前を呼んだ。
「よっ。」
 阿藤だ

「ん?なんか用か?こんなとこまで。」
 
俺ん家と阿藤宅はかなり離れている。奴はチャリンコで来たようだ。
「後ろに乗れよ。」
 
俺はチャリンコも持ってない。友人の後ろに乗った。あぜ道をのんびり走る。このあたりではまだ栄えてる町の中心へ向かった。
「おまえが学校で見た女の子、絵書いてたよな。」
 
チャリンコをこぎながら阿藤が言った。
「あぁ。」
 俺はのほほんと、
もうだいぶ暖かい風を浴びながら答えた。
「かなりあてずっぽになるけど、店で絵を書く道具でも買って、あげてみたらどうだ?ナンパに近いけどおまえはそうするしか進展はなさそうだ。」
 
俺は考え込んでいた。今までもこいつは俺が何かに興味を持ちそうになると色々手助けをしてくれていた。なぜそこまでと聞いても暇つぶしとしか答えない。だからというわけではないが、俺はいつもその期待に答えず、裏切り続けていた。自分のまいた種に後悔もあったし、阿東に申し訳なくも思っていたのだが。

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