・変わり目 その8・

 rrrrr・・・・・ rrrrr・・・・・ rrrrr・・・・・


「やっぱり寝てるよな」


 rrrrr・・・・・ rrrrr・・・・・ rrrrr・・・・・


「はい。」
 
親父だ。
「もしもし?俺だけど。」
「洋平か?久しぶりだな。」
 
怖いぐらいに淡々としていた。
「あぁ。そっちは元気?」
「おぉ。母さんも元気だよ。」
 
声からも元気そうな印象を受けた。
「連絡遅くなって。」
「あぁ。別に死んでてもびっくりせんよ。」


 ・・・・・・。

「親父とお袋は長生きしろよ。」
 
残念な事にはぐらかすことしかできなかった。
「オマエに心配されんでも大丈夫だ。」
 なんでバカにするような言い方なんだよ。鼻で笑うな。
「今さ、家でてからの道中で長距離トラックの運転手の人と知り合って、今北海道で仕事してるんだ。」
 
もう半ば投げやりに近況を伝えると、親父は声を高めた。
「おぉそうなんか。俺はそうでもないが、お母さんがえらい心配してたんでな。ついでにまぁ。」
 冗談だろ?

「まぁ1週間も立ってないしな。」
 俺がもっと上手く対応すれば、もうちょっと噛み合うんだろうが、ごめんだ。

「あぁそうだな。」
 親父に聞いてるのか聞いてないのかわからないふうに流された。
「母さん出したいんだが、今日は疲れて寝てるよ。」
 変わらない父親。こんなに母親が待ち遠しいのは初めてだ。しかし残念。

「あーそぅ。いいよじゃあ。またかける。」
 
なんだか腑に落ちない。
「あぁ、そうしてくれ。俺より心配してるぞ。」
「わかった。そしたらまた。」

 
チン・・。

 
こちらの連絡先を伝えたあと電話を切った。母親への心配をよそに、父親の変貌振りに驚いた俺だった。基本的な部分は変わらなかったが、俺がいた実家にいた時はもっと無口だったはずだ。まぁ電話で無口じゃしょうがないんだけど。
「心配してくれてたんだな。ありがたい。」
 自然と文句が出たが、
親に対して初めて、感謝の気持ちも自然に出た気がする。


 朝が来た。昨日遅かった為か通学前みたいにだるい。起きたくない。初めて夜更かしした次の日みたいな感覚だった。自分のその頃は覚えちゃいないが。

 だん!だん!だん!


「有村!遅刻するぞ!!!」
 
大隈さんの声だ。助かった。準備に追われながら初日のことを思い出していた。

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