・変わり目 その3・

 俺はここに来て初めて、巧さんと琴町さんを誘って昼飯を食っていた。今日のメニューはカレー。
「あの。」
 
ここに来て初めて俺から話題を切り出した。
「ん?」
 
琴町さんが所狭しとほおばりながらこっちを見た。
「今日朝気づきました?」
 早々と
カレーを食べきった俺は二人に質問を投げかけた。俺は喋りながら食えない。
「おまえ主語がねぇよ。わかりづれぇな。何のことだよ。」
 
琴町さんが食い気味で切り返す。親方の嫌なとこがうつっちゃったかな。
「あ、えっと親方のタオルがですね。硫黄くさかったんすよ。」
 
しかし俺は何事も無かったように言い返した。
「俺も気になった。」
 
巧さんが口を開いた。
「ほんへんはんてひいはほほはっか?」
 
琴町さんよ。ほおばりすぎだ。わかりづらいのはあんただろが。
「今日の夜って暇すか?」
 
何ていったかは受け流し、琴町さんの解読はさておいた。俺は二人に向けたが、顔は巧さんへ。
「おう。ひと段落したらおまえの部屋に行くよ。」
 
ここに来て初めて予定がたった。琴町さんは
「あったらいいな」

って言ったように聞こえた。さらにほおばった結末だった。


 いつもより束の間の昼休憩も終わり、昼からも午前中と同じ業務。山の中は暗くなるのも早いので、大概終業も早い。今日はどうかな?

「準備はいいですか?」

あるかもわからない安らぎの為に、いつもながらに頑張った面々。総勢4名が揃った。もうほんとに真っ黒。これでなかったら大変なことだ。
「いつでもいいぞ。」
 
大隈さんが伸びをしながら答える。
「ほんとに熊出るのかな・・。」
 
と琴町さん。唯一の都会育ちでマジでビビってる様子だ。
「事件に関してはほんとらしい。」
 
さらっと巧さんが答える。
「とりあえず場所がわかりませんし、迷ったら面倒です。慎重に行きましょう。」
 
今日の終業はいつもより早かった。その為まだ空は明るい方だが、とにかく今から突っ込んで行くのは山の中。言いだしっぺの俺が先頭で、落ち着いた態度で臨む。
「そうだな。じゃあ木に布を巻いておくよ。」
 
やはり年上。頼りになる大隈さんがしんがりを務める。
「うぅぅ・・・。」
 
琴町さんだ。帰らせたほうがいいかな。と思った瞬間、
「おまえやめとくか?」
 
タイミングよく巧さんが琴町さんをたしなめた。
「行くよ!うるさいな!」
 
そんなに必死にならなくても・・。アメリカドラマの三枚目みたいになっている。笑いそうだ。

                   ←back Θindex next⇒
                                             Ξ.home