・変わり目 その2・


 朝が来た。ここに来て思うが田舎の天気は、よくてもいつもどこかじめっとしていた。ところが同じ風景のはずのこちらはここに来て4日。カラッと晴天に恵まれている。俺の精神的観点が明らかに作用しているが、体が充実していくのを感じた。


 親方が無言で仕事場に現れる。親方からの挨拶などない。
「ちゅーす!」
 四日目の
朝だ。
 
だがみんなどちらかというと疲れた顔をしている。俺がここに来たのと同時に仕事再開したのであるが、俺はただつるはし振ってるだけだ。そら皆疲れるはずさ。大隈さんは二日酔いか?
 
しかしどうしたことだ。あの里村さんはケロっとしている。もちろん親方もだが・・。これにはびっくりした。明らかに里村さんは自分らより動き回り、心身ともに疲れているはずなのに。かすかに親方のタオルから卵の腐ったような、鼻をつくあの独特な匂いがした。


「・・・・・・・・?」


 ん?なんだ??硫黄・・・・・???
 『温泉』というキーワードに辿り着くまで時間は要らなかった。
 
なぜだ!そんなこと一言も聞いてないうえに、風呂の事にここに来た段階で触れられなかった俺は、自分の部屋のそばに、五右衛門風呂っぽいものを勝手にこしらえたのに。
 
まぁこれはこれで気持ちはいいし、皆さんから好評だからいいが。温泉だと!?
 
他の人はもうだいぶ冷たい水をかぶって一日の汚れを落としていた。もちろんお湯は沸かせばあるのだが、皆めんどくさがってやろうとしない。自業自得だけど、たまに持ちつ持たれつになる事もあるし、当然勝手に使ってもらっていい。
 
ただ約一人だけ、小学生のプール開きのように勝手にはしゃいでる人もいた。
 
そんなことはともかく温泉の存在を知っていたのかどうかは不明だが、先輩方は親方に「この辺は熊が出るからあまり、特に遅くなってからはうろちょろしない方がいい。」といいくるめられているようだ。俺は直接聞いてない。
 
実際このあたりで熊目撃という事件がよく聞かれていることもその時知った。よし。熊の習性なんてしらないけど、今日の夜にでもこっそり探しに行こう。


 仕事が始まった。
「有村―!!」
 
里村さんに呼ばれた。どうやら今日は新しく掘り進める日だそうで、その段取りを説明された。「わかったか?今日おまえには軽く難し目の仕事をやってもらう。いつもの点検はいい。」
 
点検つっても、電気つけて切れてる所の電球換えて、立抗が正常に動くか確認するだけだ。簡単ではあるけど気は抜けない。こればっかりは怠けたら、親方以外にも怒られるだろう。
 
そこからは難し目もくそも、いつもどおり俺はつるはしを振るうばかり。といっても特に今日は全員掘るばっかりで、もくもくと仕事をこなしていた。
 
自分の感覚ではそれほど夢中になってたわけではないのだが、もう昼休憩になった。

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