花眠の中で




そうだ。
この場所から始まったのだ。

この世界に迷い込んで困り果てていた花梨を拾った、あの崩れかけた羅城門跡ではなく、
毎日のように様子を見に顔を出していた、紫姫の屋敷でもない。

勝真にすべてを預けたかのように、安心しきって隣で眠ってしまった花梨をその肌で感じたとき、
初めて、自分の中で何かが変化するのを感じた。

雨が上がった後、広い空に大きく架かった虹は、まるで彼女を象徴しているかのようにみえた。

手を伸ばしても、追いかけても、決して届かない清らかで美しい存在。
でも決して諦めたくない、愛しい存在。





今、この丘から一望できる都の上には、あのときの虹は見えない。
なぜなら・・・。

「おまえ、あの虹、手に入れたか?」

「え?」
花梨が屈託のない笑顔のままで、首をかしげる。

「俺は、手に入れたと思ってるよ。」
そう、それは今この手の中にあるからだ。



勝真は、腕の中にいるその愛しい存在を、近くの大樹の幹にゆっくりと押し付けた。
彼女の両肩の横で、樹の幹に手をつき、さりげなく逃げ道を塞ぐ。
柔らかそうな耳たぶに軽く唇をつけ、そっとささやくと、花梨の肩がビクッとゆれた。

「勝・・真さ・・・」

花梨の吐息まじりの声が、勝真の理性の箍をあっけなく外すのがわかった。

彼女の白い首筋に口づけを落としながらその輪郭をたどり終えると、
わずかに開かれていた唇をふさぐ。

「っ・・・」

耳に届かない微かな喘ぎを感じながら、勝真はそっと彼女の水干の紐を解いた。
唇を塞いだまま、両手で頭と背中を支え、ゆっくりと押し倒す。

水干の下の柔らかな膨らみを、手の平で包み込みながら動かすと、その中心に隠れていたものが
少しずつ、固い蕾となって現れた。

「やっ・・・。」

軽い拒否の言葉を吐きながら、しかし花梨の両腕は勝真の背をぎゅっと抱きしめてくる。

「花梨・・・。」

彼女の両の膨らみを覆っていた最後の衣をたくしあげ、その蕾に唇を寄せると
花梨の細い身体がビクンと大きく震えた。
もう一方の膨らみにも手を伸ばし、その中心に向かって優しく撫で上げる。

「・・・・ぁ・・・・」

先程とは比べ物にならないくらい悩ましげな吐息が、勝真の耳を刺激した。

片方を舌で転がし、もう一方を指先で刺激すると、花梨の息遣いが次第に荒くなる。
時折、吐息に混ざる微かな喘ぎ声をもっと聞きたくて・・・
勝真の愛撫の手は、自分でも気付かぬうちに、少しずつ激しくなっていた。














これは・・・夢だろうか。

花梨が俺の腕の中で、今まで誰にも見せたことのないであろう表情を見せている。

出会ったころは、妹のようにしか見えなかった彼女が、
いつのまにか、この腕の中で女になろうとしている。


夢・・・?


それでもいい。
もう少し、この誰も見たことのない花梨をみつめていたい。
















一体何が起こっているのだろう。
勝真さんは、私を抱きしめたまま、眠ってしまったはずなのに・・・。

彼は何をしようとしているの?

気が付くと私は、これまでに経験したことのないような感覚を味わっている。
そしてこれは・・・私の声?

自分の身の上に起こっているはずなのに、離れたところから傍観しているような気さえする。
まるで夢を見ているときのように。


・・・夢?


私は、彼にこんなことまで望んでいるのだろうか。
キスされただけで、身体の芯が熱くなって舞い上がるような感覚さえ覚えたというのに。

・・・わからない。
でも・・・。





やめないで。

お願いだから-------。

























勝真の片足が、花梨の膝を割るように滑り込む。

「・・・! かつ・・ざ・・」

花梨が潤んだ瞳の中に、微かに怯えを含ませて、勝真を見上げた。
勝真はその瞳にそっと口付けながら、一方で太ももに手を滑らせる。

「やっ・・・!」

花梨が両足を閉じようと力を込めるが、勝真の手が再び胸元へ伸びると、
その力は呆気なく抜けた。

その隙に彼女の中心へと指を走らせる。

「や・・! だめ・・っ、はずか・・し・・・・っ。」

「大丈夫だから・・・」

白い首筋に口付けながら、彼女を覆う薄い布の隙間から勝真の指がそっと侵入すると、
花梨の中心は、密やかな水音をたてた。

「や・・だ・・・・・」

花梨はまだ小さく拒否の言葉を吐いていたが、
その指は、言葉とは裏腹に勝真の衣をぎゅっと掴んだまま離さない。

花梨が想像以上に感じているのを知って、勝真も自分の中が熱くなっていくのを感じた。
優しかった口付けが次第に熱を帯びる。
するとそれに応えるかのように、花梨の内から熱いものが溢れ出してきた。




「はぁ・・ぁ・・・・」

自分を感じてくれる吐息を聞きながら、
夢中で指を動かしていると、ふと小さな突起に触れた。

「あぅ・・・・!」

途端に花梨の身体がビクンと震え、今までとは全く違う甘い嬌声がもれる。


「・・・・・。」

勝真がもう一度触れると、花梨は、先程とは比べ物にならないくらい
悩ましげに首を振りながら、息遣いを更に荒くした。

勝真が唇ともう片方の手で、両胸の蕾も同時に刺激すると、花梨の爪が勝真の背に、くいこんだ。
同時に喘ぎ声がエスカレートしていく。

「やめ・・・、かつ・・ざ・・・さん、へんに・・な・・」

喘ぎ声の中で、途切れがちな言葉をはきながら、花梨が精一杯の抵抗をする。

「・・・ここでやめろって、言うのか・・・?」

花梨が本気で嫌がっているのではないと感じ取った勝真は、意地悪く問い掛けながら、
再び、彼女の敏感な部分を同時に攻めた。


「や・・・っ! だ・・っ・・」





大きな波が近づいてくるのがわかる。

言葉にならない。
頭の中が真っ白になる。

「・・あ・・ぅ・・っっ!!」

次の瞬間、花梨の身体はドクンと波打ち、大きくのけぞった。

















「花梨・・・? 花梨、大丈夫か・・・・?」

霞む意識の中、勝真の声が聞こえる。
かろうじて瞳を開けると、彼が心なしか心配そうな表情で、こちらを見ているのがわかった。



「・・や・・・」

思わず、顔をそむける。






さっきのは何?
初めての感覚に、訳がわからなくなった。

私は、彼の前でどんな姿を晒し、彼に何を聞かせたのだろう。







「・・・・・。」

花梨が目をそらせた訳を察した勝真は、微かな涙に濡れている睫に口付けた。

自分の腕の中で、初めての感覚に身を捩じらせ、せつなく哭いた娘。
狂おしいほどに愛しくてたまらない。

「花梨・・・。今度は俺のすべてを感じさせたい・・・。」

濡れそぼる彼女の内へ、再び手を伸ばす。
そして。




「!! かつ・・・ざ・・・!」

先程とは全く違う感覚が、襲ってくる。

思わず逃れようと身を捩る花梨の肩を、勝真の腕が押さえ込んだ。

そのまま、唇も封じる。

「・・・ん・・・・。」

何度か経験したその優しい感覚に、ふっと身体の力が抜ける。
だが、その一瞬を逃さず、勝真が奥まで入り込んだ。

「あ・・・ぅっっ!」










「花・・・・梨・・・・・・」

初めて、勝真の喘ぐような苦しげな声が聞こえた。

















初めての痛みと、それに混じる微かな快感に耐え切れず、
花梨は、急速に意識が朦朧としていくのを感じた。




・・・あなたを素肌で感じたい。

もっと・・・。

もっと愛して欲しい。




それなのに・・・意識が遠くなる。
何かに引きずられるように・・・。
















「・・・・?」

彼女を感じていた全身の感覚が、急にあやふやなものになる。
まるで眠りに落ちる瞬間のように。

眠り・・・?




花梨・・・・。花梨、俺から離れるな・・・。

ほんの一瞬でも。

たとえ、夢の中でも。

もっと・・・。

もっとおまえを感じたい。





白濁する意識に精一杯の抵抗を込めて、勝真は、花梨を抱く腕に力を込めた。























ピンと張り詰めた空気が、そっと頬を撫でる。

(眠って・・・るのか・・・)

目覚める一歩手前のところにいるのだろう。

そういえば、とてつもなく甘い夢を見ていたような気がする・・・。
愛しいものと一体になるような大切な感覚が、小さく疼きながら身体の中に残っている。


ふと、どこからか優しい香りが漂ってきた。
そうだ、ずっとこの香りの中にいたのだ。

(これは・・・?)




いや・・・。
思い出す必要はない。

目覚めとともに瞳を開けば、自ずとわかるはずだから。


勝真は、呼び起こそうとした意識を再び手放した。




もう少しだけ、まどろみの中で感じていよう。

この愛しい香りを───。












脱力・・・果てしなく脱力〜〜〜///

それにしても、やっぱり中途半端・・・?(笑)
少なくとも勝真さんは最後までいってないと思います(^^;
だって・・・そうじゃないと目が覚めたときに大変なコトに・・・
って、いや!なんでないです!

ちなみに、こちらを書いたのは「花眠2」を書いた後なので、
「花眠2」への繋がりが多少おかしい点もあるかと思いますが
あくまでも夢の中ということで、どうぞご了承ください・・m(__)m

ということで、こんなトコに置いてますが、4000キリリク創作でした(^^;
(2004.2.20)




 
(花眠1)   (花眠2)