なるべく専用機材を使わないはやぶさの製作

前回のはやぶさ製作記事、「おかえりなさい(アオシマMUSES-Cの製作)」の最後で、2号機は簡易な塗装でどこまでの再現が可能かを試したいと書きましたが、ボークスホビースクエアに予約していたはやぶさ二次出荷分が届いた為、早速の製作に取り掛かる事となりました。
2号機でのコンセプトは、モデラーが使うエアブラシのような取得コストのかかる機材を使わず、初めて模型を作るような人でもなるべく気軽に出来るようにというもので、塗装部分が大きく異なります。
そのため、塗装の多くはエアブラシから缶スプレー、マーカータイプの塗料などを使用するといった所が変更点になります。
ちなみに、今回必要とする機材は、プラモデルの組立塗装に最低限必要となるニッパー・接着剤・薄め液・筆の他、デザインナイフ・サンドペーパー・マスキングテープが必要機材となります。
組み立て・加工
まず、組み立て前に手を入れるところが一箇所。前回も気になるところであったイオンエンジン基部ですが、ここにどのようにモールドなどを入れて蛇腹構造を再現するか。エンジン側は凹凸が少ない為にここを再現するかで印象が大きく変わってきます。
最初にケガキ針などでモールドを彫ろうかと思いましたが、この小さい箇所にミリ単位でまっすぐな線を入れるのは非常に難しいです。かといって何かしらのエッチングパーツを流用するとコストもかかるので、初めての人にはお勧めできません。
そこで思いついたのは、モールドを掘ったり様々な加工を行うエッチングソーを垂直ではなく水平に動かせば、ノコ刃のピッチ幅でケガキが可能ではないかと。
ちなみに、このやり方はティーガーなどのドイツ戦車のツィンメリットコーティングの再現方法として、車体に貼り付けたパテをノコギリで掻き取るという技法があったのを思い出したものですが、柔らかいパテでなくキット自体を削るという力技なので、成功してもエッチングソーは痛むし失敗したらキットも傷だらけになるという諸刃の剣です。
とはいえ、せっかく思いついたのだからやってみる価値はあると思い試してみると…
あっさり成功しました。というか、のっぺりとした箱が3分で蛇腹構造に変化したのだから文句なしでしょう。
下の写真のうち、左は1号機のもの。段差を出す為に薄く削ったOHPフィルムを張りましたが、モールド再現にするとでは大違いです。
 
ちなみに、このエッチングソーは各種セットになっているものが1000円程度で販売されています。
次は、化学エンジンの加工です。
姿勢制御用の化学エンジンが12基ありますが、ノズルの穴が再現されていないので近付くとエンジンに見えにくいです。
というわけで、ノズル部分に穴を開けて行きます。
もし可能ならピンバイスのドリルを使いたいところですが、それが無ければデザインナイフの先端を回転させて簡易的な錐にすれば最低限の穴は開けられます。ただ、刃の消耗は避けられませんが。
これが終わると、ソーラーパネルの加工です。
1号機でも行いましたが、完成後に更に調べるとまだ削り足りない場所がありました。しかし、更に資料となる画像を探してみると相模原にあるものは実物大模型である為に実物と異なる箇所が更に見つかります。しかも、実物の画像で太陽電池が見られるものは打上げ前の格納状態である上にサーマルブランケットの色が反射しているので細部は更にわかり辛いという…どこまで正しいのかわかりませんが、下の写真のうち黒く塗りつぶしている箇所は太陽電池の貼られていない箇所であり、ナイフで削った後にサンドペーパーで平滑に仕上げます。
塗装
Amazonのレビューにも書かせてもらっていますが、はやぶさの塗装には正解はありません。
衛星バス自体のシルパー・サーマルブランケットの金・太陽電池の青。これらは基本的に素材自体の色なので、いかに自分のイメージで再現するかという事になるでしょう。
特に、メッキされたサーマルブランケットは塗装表現は難しいですし、太陽電池なんかは見る角度を変えると見え方が違ってきます。
そんな訳で、今回はスプレー塗料等からいくつかピックアップして、どれが一番「らしい」かチェックしてみます。
まずは、ベースとなるシルバー
指示色は水性ホビーカラー・もしくはMrカラーのシルバーですが、光沢としては今ひとつ鮮やかさに欠けるような気がします。
そこで、同じスプレー塗料の中からシャインシルバーと比較してみました。
ちなみに、プラ板にサーフェイサーを吹いた上で各種塗装の比較を行うテストピースを用意してみました。
 
上の画像は、両方ともMrカラースプレーを使い、左がシャインシルバー・右がシルバーで塗装したものですが、シャインシルバーの方が反射率が高いです。

次は、左がMrカラースプレーのゴールド、右がガンダムマーカーのガンダムゴールドで塗装したものです。
スプレーで吹いたものとペンでグリグリ塗ったものの差がありますが、Mrカラーでは若干光沢感に欠けるような気がします。それに、あとからのタッチアップなどを行う事を考えるとガンダムマーカーの方が便利なので。
そして、ある意味一番難しいのが太陽電池の青。指定ではキャラクターブルーとあるものの、色の鮮やかさは悪くは無いものの光沢感に欠けます。
これがエアブラシ使用なら、様々な色を混ぜ合わせれば良いのですが、スプレー塗料だと制限が大きく、何度か重ね吹きして色を整えていくしかありません。
という訳で、いろいろ重ね吹きして試したもの。

全て、Mrカラースプレーのシャインシルバーでベースを作り、左からキャラクターブルー・クリアブルー・メタリックブルー、そしてタミヤのスプレー缶よりディープメタリックブルー・さらにその上にMrカラーのクリアブルーを吹いてみました。
見た感じ、キャラクターブルーはのっぺりとした感じでクリアブルーは薄く、メタリックブルーは金属光沢が強い。更にディープメタリックブルーは濃い目かなといった感じです。ただ、そこにクリアブルーを重ねるとクリア層ができるのでイメージ的には悪くなさそうです。
というわけで、衛星バスはシャインシルバー・サーマルブランケットはガンダムゴールド・太陽電池はディープメタリックブルー+クリアブルーの組み合わせを採用しました。
ちなみに、サンプルの再突入カプセルは、金色ですが資料を見ると若干色味が異なるので、Mrカラーのゴールドを使用する事にしました。

塗装開始ですが、まず塗料の食い付きをよくするために、1200番のサーフェイサーを吹き、乾燥後に衛星バスのパーツにシャインシルバー、太陽電池にホワイトで吹きます。

太陽電池部分のホワイトは、表面の電池パネルが貼られていない所、裏面の配線部分が白なので、先に白く塗った後にマスキングを行う事になります。
マスキングについては、表面はともかく裏面の配線部分のマスキングは非常に細いため、0.7mm幅のマスキングテープを使用しました。勿論、安いマスキングテープを細く切っても良いのですが、なんせ貼る場所が多い上に直線なのでこちらを使った方が楽です。
ちなみに、マスキングするとこんな感じになります。

そして、マスキング後に裏面をつや消し黒、表面をディープメタリックブルー+クリアブルーで吹くとこんな感じになります。
ちなみに、左が2号機、右が1号機のもので、1号機は「Mrカラー色ノ源」シアンにホワイトパールを混合してエアブラシで吹いています。

 

なお、スプレー塗装時にはみ出た場所は、乾燥後にガンダムマーカーの白でタッチアップしましたが、シルバー部分についてはガンダムマーカーのシルバーでは若干色がくすんでいるので、タミヤペイントマーカーのクロームシルバーを使用しました。

太陽電池部分が終わった所で、衛星バスの塗装を再開しますが、最初になることはシルバーを残しておかなければいけないところをマスキングです。
シルバー部分をマスキングの後、カッパーで指定されている箇所を塗装。そして、更に乾燥後にカッパーで塗装した箇所をマスキングしてゴールドで塗装と言った順序ですが、カッパーが乾く前にイオンエンジン部分の塗装を済ませてしまいます。

イオンエンジン基部の蛇腹はつや消し黒のため、これ以外の箇所をマスキングしてしまえばあとはスプレー塗装でOK.乾燥後に細かい所を筆塗りで済ませてしまいます。
そして、一番目立つサーマルブランケットの金色ですが、先に説明したようにガンダムマーカーで塗っていきますが…テストピースの時のようにどうしてもペンでグリグリだとムラが酷くなるので、一寸反則ですがマーカー内の塗料を塗料皿に出してしまい筆塗りで仕上げてしまいます。

この時、乾燥に時間はかかるものの筆ムラ防止・光沢アップの効果のあるリターダーを混ぜると塗料の伸びも良くなり綺麗に塗る事が出来ます。特に、奥行きのある細かい箇所が多いキットだけに重宝します。
続いてはハイゲインアンテナ。
1号機の製作でも書きましたが、指定色は白ですが実物がメッシュのパーツをそのまま白で塗るとお椀になってしまいます。前回は、白にシャインシルバーを混ぜましたが混ぜてしまうとどうしてもシルバーが強くなってしまう為、今回は白で塗装の後、極薄くシャインシルバーを吹いて光が中で散っているように見せる事にしました。
あとは、細かいパーツを塗装したら組立てと仕上げです。
仕上げ
基本的にパーツの合いは良いのでそのまま組んでもパテなどは必要ありません。
ただ、流し込みタイプの接着剤を使うとどうしてもは見出しがあるのでこの箇所を金色でタッチアップする必要がありますが、これで問題はないでしょう。
そして、アンテナやサンプラーホーンと共に化学エンジンのパーツを取り付けていきますが、化学エンジンはノズル内を黒く塗っておくと立体感が出ます。
ただ一つ問題があります。
衛星前後に取り付ける化学エンジンは特に問題は無いのですが、化学エンジンは共通パーツを使用しているので、上下に取り付けるエンジンは取り付けると大きな隙間が出来てしまいます。
出来れば、パテパテで埋めてしまいたいところですが、何度も重ね塗りして誤魔化してしまいます。
最後は台座。
イトカワをモチーフにした台座ですが、あまりにものっぺりとしているので、1号機同様にテクスチャーペイントを使用、またパテを薄め液で溶くなどして凹凸を出してやるだけでぐっと変わります。

 

まとめ

エアブラシ不使用、工具の使用も最低限というコンセプトで2号機を作りましたが、実際にやってみるとスプレー缶をメインにしたという時点で恐ろしくコストがかかるとという欠点に開始してから気がついてしまいました。
ちなみに、今回使用した塗料は缶スプレーだけで7色。カプセルに使用した金色を壜入りに変えたとしても、量販店価格ですらスプレーだけでやぶさの定価をオーバーしてしまいます。
他にも、ガンダムマーカーや壜入りのMrカラーなど、塗料だけで3000円は超えていますし、工具などを含めると最低でも4000円とか。なんというか、初めての人向けにやったにしてはえらく金のかかる方法を出してしまったと反省しています。
ちなみに、エアブラシを使用するならディープメタリックブルー以外は壜で買えますのでスプレー塗料の価格は1/4にすることが出来ます。
もし、これを機に模型を本格的にやろうとしているのなら、エアブラシの導入をを進めします。取得コストはかかるものの、出来る塗装や使える色が大きく広がりますし、ランニングコストを考えるとトータルでは安くつきます。ただ、GSIクレオスのプロスプレーは取得コストは安いもののエア缶を使用するのでランニングコストはかかります。
なお、この完成品は、1号機共々日本橋にあるボークスホビースクエアに置いていただいております。

もし、この記事がこれからはやぶさを作ろうとされている方の参考になれば何よりです。

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