迷う時間ももったいない。
人と出会うまで、団蔵はまっすぐ走ることにした。

しかし校庭を出たあたり、学舎の横にさしかかった時、
ボコッ
突然、団蔵の足は地面を失った。
「うわあ!?」
不安定な浮遊感に血の気を失う。しかし直後、一段下がった地面にしりもちをつく。
団蔵は落とし穴に落ちたのだ。
生徒の誰かが掘ったものだろうが、夜、しかも焦っていた団蔵は警告の目印を見落としていた。

「おやまぁ、1年を落とすつもりはなかったんだけど…大丈夫かい?」

シュタッと誰かが一段上の地面に着地し、穴の中をのぞき見てきた。
紫色の忍装束。細く軽そうな銀鼠色の髪は月光をすらりと透かしている。
少しつり上がった目尻。けれどぼんやりした瞳は柔らかい印象を持つ。
その顔立ちはとても整っていて、さすが作法委員というか、失礼だろうが、女の人のように綺麗だと思った。
この人は、たしか4年い組の、
「綾部喜八郎先輩!」
「君は……誰だっけ?」
面識はほとんどなかった。綾部が団蔵を覚えているはずもない。
だがこの時、団蔵は心の底から綾部を頼った。

「お願いします、潮江先輩を助けてくださいっ!!」
「?」
綾部は、整った顔立ちをぽかんとした、感情がよくわからない無表情のまま首をかしげた。




















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