団蔵は、ふと、塀を越えられないだろうかと思った。
正門の時には考えつかなかった。だって鉤縄もないし、一人じゃ人馬もできないから。
でも、何か土台があればと、団蔵は草むらに目をこらした。
夜。あたりは真っ暗だが、学園から漏れる明かりを頼りに見つけた一角。不自然に角張ったモノが見えた。
団蔵はそこへ駆ける。
そこには古い木箱が数箱積まれていた。
大きい、だが軽々と持ち上げられる。中身は空だ。
きっとどこかの荷物運びが用なしの箱を不法投棄したのだろう。
これを使おう。
団蔵は塀に木箱を積み、その上にのぼる。
立ち上がって手を伸ばせば、瓦に届く。
団蔵はやっとで掴んだ打開策に胸を躍らせ、急いた足は木箱を強く押しつけた。
だが、
バキッ という音がして、
団蔵はその音を耳で聞きつつ、自分の片足が台座を失って落ちていくのを体感する。
「えっ!?」
夜。暗くて箱の外見まで見えなかったから、わからなかった。
古い木箱は雨風にさらされ、腐って、団蔵の体重さえ支えられなくなっていたのだ。
いきなりの出来事に体はバランスを崩す。
このままでは頭から落ちる。
団蔵は瞬時の選択を迫られた。