――落ち……!?
「うわあっ!!」
団蔵はとっさに、先日授業で習った受け身のポーズをして落下に耐えようとした。
しかしつい、落下の恐怖で目をぎゅっとつぶってしまう。
だから、

「危ない!」
聞こえてきた声が誰なのか、わからなかった。

体に襲ったのは地面にたたきつけられる衝撃ではなく、ふわりと抱き支えられたあたたかな感触。
「……?」
おそるおそると目を開ける。そこには、
「大丈夫かい?」
「り、利吉さん!?」
山田先生の一人息子で、フリー忍者の利吉がいた。
「君は、は組の団蔵くん?」
利吉もこちらの正体に気づいたようだ。

体をゆっくりおろされながら、団蔵は目を丸くして利吉を見た。
「どうして利吉さんが忍術学園に…?」
「父に母からの荷物を届けにきたんだ。今は帰るところで、そしたら悲鳴が聞こえて、見たら君が落ちかけていた」
利吉は腐食した木箱をちらと見て、「何があったの?」と尋ねた。
団蔵はハッとして、堰を切ったように利吉に詰め寄った。せっぱ詰まった顔。
「そうなんです!大変なんです、潮江先輩が山賊に捕まってしまってっ…!!」
「潮江先輩?」
利吉が根本的なことを尋ねるものだから、団蔵の混乱はさらに増長させた。
「あ、あのっ、潮江先輩は僕の会計委員会の会計委員長で、学園一ギンギンしてる忍者で、手作りおにぎりはやすりにもなって…」
団蔵の支離滅裂な説明を聞いている利吉に、ふと表情の変化があった。
「潮江って…もしかして、6年生の潮江文次郎くんのこと?」
「え?」
てっきり知らないと思ったが、意外なことに利吉は文次郎を知ってるようだった。

「文次郎くんが、山賊に捕まったって?」
「はい、僕を逃がすために一人森の中に、だから僕、助けを呼ぼうと…でも正門も裏門も閉まってて…」
団蔵はしゃべってるうちに涙がポロポロこぼれてきた。
自分の無力さとか、情けなさとかがまぜこぜになって、どうしようもなかった。

「泣かないで」
利吉は団蔵を落ち着かせようと、背中を優しくさする。
「大丈夫、僕が行くよ。僕が彼を助けに行く」
「利吉、さん……」
「それとも、僕じゃまだ不安かな?」
利吉が困ったで団蔵に尋ねる。
団蔵はふるふると首を横に振った。
利吉さんならきっと…ううん、絶対。
団蔵はそう確信した。




















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