「……っ!!」
団蔵は目をつぶった。
が、手は無意識に塀の上に伸びていた。
そして、ガッとその手に瓦のはしを掴むことができて、団蔵は落下を免れた。
「た、助かった…」
宙ぶらりんの体勢からなんとか塀の上によじのぼる。
「やったぁ」
団蔵は心底安心のため息をついた。
だが、油断大敵・火がボーボーとはこのことか。
安心した団蔵の体は力が抜けて、ぐらっと大きく揺れた。
「ひぇ……っ!?」
ドタッ
塀からモロに落ちた団蔵は、不幸中の幸い、頭を抱え身を丸めていたので大事には至らなかった。
だが、地面で頬がすりむけた。
「いって〜…」
ズキズキと痛む傷口に手を添えると、ぬるっとした。どうやら血が出たらしい。
「そこの君、大丈夫?」
その時、誰かに声をかけられた。
パタパタと駆け寄ってくる足音。
団蔵が顔を向けると、近くにあった松明に照らされた人物は、6年は組、
「善法寺伊作先輩…!?」
「動かないで。今、手当てするから」
団蔵が急いで身を起こそうとしたのを、伊作は片手で制す。
もう片方の手には救急箱があった。さすが保健委員長だ。
だが団蔵は自分の傷の手当てどころじゃない。
「あ、あの、善法寺先輩、あのっ」
「こういう小さい傷でもね、ろくに水で洗いもしないで放っておくとバイ菌が入って治りが遅くなったり膿んだりするんだ。気をつけて」
「あ、あの、僕っ」
「特に顔の傷は痕が残ったら大変。かさぶたができてもはがしちゃダメだよ?かゆくなっても我慢してね」
「そうじゃなくて、あの、先輩、」
「あ、かゆみ止めの薬もいる?」
「先輩、人の話を聞いてください!」
「いやぁ〜それにしても偶然裏門の近くにいてよかった。君が塀の上から落ちてきたのが見えた。すぐ駆けつけられたよ」
団蔵は泣きそうになってきた。
「あれ?そういえば君、どうしてこんなとこから落ちてきたの?何かあった?」
伊作がやっとで保健委員長モードを解いたので、団蔵はやっとで話を切り出せた。
「潮江先輩が山賊に捕まったんです、助けてください!!」
「……えっ!?」
伊作は目を丸くさせて驚いた。
ここから先は伊文ルートになります。