「助けてください!!し、潮江先輩が…!!」
団蔵は長次に泣きすがった。
「……」
長次は無言のままだが、突然同級生の名前を聞いて、その表情は微妙に驚いたものになった。
「え、もんじがどうしたの?」
横の小平太が団蔵に聞き返すが、団蔵はうまく言葉が出てこない。
涙ばかり目から出てくる。
違う、泣いてる場合じゃないのだ。ちゃんと説明しなきゃいけないのに、どうして、自分は、なんで…
「…う、ぅぇっ…」
「……」
混乱して泣きじゃくる団蔵の頭に長次の手が乗ったかと思うと、ぽんぽんとなだめるように撫でられた。
それは慣れていないだろう不器用な仕草だったが、その分優しく感じられた。
それがきっかけになり、団蔵は堰を切ったように事情を説明した。
「――せ、先輩が…っ」
おつかいの行きがけに、山賊に襲われたこと。文次郎に助けられたこと。
暗くなった帰り道、何者かが大勢で攻撃してきたこと。
文次郎が自分をかばってひとり森の中に残ったこと。

「だから、先輩を助けてください…!!」
自分の役目を終えたとばかりに、団蔵はその場に座り込んだ。
小平太は団蔵の肩に手を添え、長次を見上げた。
「学園にはわたしが知らせるから、長次、お前はもんじのとこに行け」
ぶっきらぼうな命令口調だったが、声は承諾の色があった。
小平太は長次が団蔵の話を聞いて、いてもたってもいられないことがわかっていた。
それはきっと小平太も同じ気持ちだからだろう。その声は譲歩の意味もにじんでいた。
「頼んだからな」
「……」
長次はこくりと頷くと、学園とは正反対、つまり団蔵が来た方角へ走った。



















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