摩擦力
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2009.08.17〜2009.09.07

運動の第2法則
摩擦力
【摩擦力の観察】
 今までは計算を簡単にするため,摩擦力は働かないと考えてきました.
もしも摩擦力が働いていなければ,
机の上で静止している物体は,ほんのわずかな力が働いても動き始めるし,
動いている物体は,止まることなくいつまでも動き続けます.
例えば机の上で静止している消しゴムに,そよ風が当たると動き始めるし,
動いている消しゴムは,止まることなくいつまでも動き続けるはずです.
しかし,実際は摩擦力が働いているので,そのようなことは起こりません.
ここでは,物体に働く摩擦力について学習します.

 初めに摩擦力は次の2種類あることを確認して下さい.
@ 静止摩擦力:静止している物体に働く摩擦力のこと.
        表面の状態(ザラザラの程度)を静止摩擦係数という値で表す.
A 動摩擦力 :動いている物体に働く摩擦力のこと.
        表面の状態(ザラザラの程度)を動摩擦係数という値で表す.
【参考】
@ 表面の状態がザラザラしているほど,2種類の摩擦係数の値は大きくなります.
A 静止摩擦係数は動摩擦係数より大きな値になります.
【重要】まとめを確認して下さい.    

【考察1】はじめに表示切り替えコンボボックスをに設定し,
     水平な床と物体との間に,静止摩擦力が働かない(静止摩擦係数=0),動摩擦力も働かない(動摩擦係数=0)運動を考えます.

左図のように静止摩擦係数を0,動摩擦係数を0,物体の質量を0.5[kg]に設定して下さい.
次に0.01[N]の小さな動かす力を加えると,物体はすぐに等加速度直線運動を始めて,
10.0[s]後に1.0[m]移動しました.物体の移動距離を次の手順で計算して下さい.

@ 質量0.5[kg]の物体に0.01[N]の力を加えると,
 物体に生じる加速度は運動の第2法則ma=fより a= [m/s2]となる.
A この加速度で,初め静止していた物体が10[s]間等加速度直線運動すると,
 移動距離は変位の公式x=V0t+1/2at2より x= [m]となる.
【考察2】 次に水平な床と物体との間に,静止摩擦力だけ働いて(静止摩擦係数=0.8),動摩擦力が働かない(動摩擦係数=0)場合を考えます.

左図のように静止摩擦係数を0.8,動摩擦係数を0,物体の質量を0.5[kg]に設定し,次のことを考えて下さい.

物体を動かす力が小さい間は(静止摩擦力 動摩擦力)のために,物体は動き始めません.
動かす力が0[N]から次第に大きくなり( 3.92 3.93)[N]をほんの少しでも超えると
動かす力が静止摩擦力より大きくなって物体が動き始めます.
【参考】動き始める直前の静止摩擦力は最も大きいので「最大(静止)摩擦力」といいます.

水平な床と物体との間に働く,最大摩擦力を求める式を,次の手順で導いて下さい.

@ 物体と床との状態がザラザラしているほど,静止摩擦係数が( 大きく小さく)なり,
 物体に働く最大摩擦力が(大きく 小さく)なるので,
 最大摩擦力と静止摩擦係数は(正比例 反比例)する.
A 物体の質量が大きいほど,物体が床を押す力が( 大きく 小さく)なり,
 物体に働く最大摩擦力が(大きく 小さく)なるので,
 最大摩擦力と物体が床を押す力は(正比例 反比例)する.
B 以上のことから
床が水平な場合 ,静止摩擦係数をμ0,物体の質量をmとすると
 未完成ですが最大摩擦力F0は( )と表される.

    A 動摩擦力も最大摩擦力と同形になり,動摩擦力をF,動摩擦係数をμ,物体の質量をmとすると,床が水平な場合 F=μmg で計算できます.
      静止摩擦力は0から最大摩擦力まで赤い線のように変化しますが,動摩擦力は青い矢印線のように変化せず一定の値になります.
    B 上図は3.93[N]の力で動き始めた物体が,0.8[s]後に2.5[m]移動していますが,正確な移動距離を次の手順で計算してください.

【考察3】さらに水平な床と物体との間に,静止摩擦力が働いて(静止摩擦係数=0.8),動摩擦力も働く(動摩擦係数=0.6)場合を考えます.

左図のように静止摩擦係数を0.8,動摩擦係数を0.6,物体の質量を0.5[kg]に設定して下さい.
物体が動き始めるところまでは考察2と同じですが,動き始めた後の様子は違います.
考察2では0.8[s]で約2.5[m]移動しましたが,ここでは1.6[s]で2.5[m]移動しています.
正確な移動距離を次の手順で計算して下さい.

@ 質量0.5[kg]の物体に3.93[N]の力を加えると,物体に生じる加速度はma=fより a= [m/s2]となる.
A この加速度で,初め静止していた物体が0.8[s]間等加速度直線運動すると,移動距離はx=V0t+1/2at2より x= [m]となる.

【参考】@ 最大摩擦力の式で物体が床を押す力を,質量mではなく重力加速度を掛け算してmgとしている理由がわかりますか?

@ 動摩擦係数0.6の床にある,質量0.5[kg]の物体に働く動摩擦力の大きさはF=μmgより
 F= [N]となる.
A この左向きの動摩擦力と,右向きに動かす力3.93[N]が物体に働くので,それらの合力fは
 f= [N]となる.
B この合力によって物体に生じる加速度は運動の第2法則ma=fより
 a= [m/s2]となる.
B  この加速度で,初め静止していた物体の1.6[s]間の移動距離は変位の公式x=V0t+1/2at2より
 x= [m]となる.
【考察5】最後に静止摩擦係数と斜面の傾きの関係を調べます.

左図は静止摩擦係数を1.0に設定し,斜面の傾きを次第に大きくしていくと.
傾きが45度までは静止摩擦力のため,物体は斜面上で静止しています.
【参考】傾きが45度での静止摩擦力は最大摩擦力です.
ここで注目して欲しいのは,この実験の静止摩擦係数が1.0であり
斜面の角度45度の三角比tanの値もtan(45)=1.0になって,値が等しくなることです.
少し難しいですが,静止摩擦係数=tan(すべる直前の角度) となる理由がわかりますか?

【参考】この実験で,静止摩擦係数の大きさを変えずに,物体の質量だけ大きくすると,
    すべり始める角度がどうなるか確認してください.

【考察4】表示切り替えボックスを に変更した後,物体の質量を0.5[kg],静止摩擦係数を1.0,動摩擦係数を0.7に設定して下さい.

水平な床を傾けて斜面の角度を大きくするほど,下表のように2種類の摩擦力は小さくなります.

ところが水平な床で働く摩擦力の式F=μmgは角度を含まないので,この式で計算すれば
最大摩擦力はF=1.0×0.5×9.8=4.9[N],動摩擦力はF=0.7×0.5×9.8=3.43[N]となり,
斜面の角度が何度でも同じ値になります.そこで角度θを考慮して,摩擦力の式を改良します.

左図のように角度θだけ傾いた斜面上の物体が,
斜面を押す力はmgではなくmg・cosθと計算できます.
そこで摩擦力の式はF=μmg・cosθと改良できます.
この式を使って,例えば斜面の角度が60度の場合を計算すると
最大摩擦力は F=1.0×0.5×9.8×cos60=2.45[N] で
動摩擦力はF=0.7×0.5×9.8×cos60=1.715[N] となり
上表と一致します.
【参考】作用反作用の法則によって,物体が斜面を押す力と,
    斜面が物体を押し返す力(垂直抗力R)とは等しい.
以上のことから mg・cosθを垂直抗力Rと置き換えて,
摩擦力の公式はF=μRと表します.