DigitalAudioWorkstation KYMAとは?
FutureMusicというイギリスの音楽雑誌の片隅にKYMA(Ver.4)の記事を見つけたのは確か95年頃だったでしょうか。「変わったGUIを持ったソフトだなあ」というのが第一印象でした。当時、Virtual Synthesizerは一般にはまだまだマイナーな存在で、大手楽器メーカーからは販売されているものは殆ど無く、一部研究用のものがMac上で走っていただけで、それも楽器としてリアルタイム運用に耐えうるものではありませんでした。とにかく、比較になるものが身近に存在しないので、とりあえずこのソフトのメーカーSymbolicSoundにアクセスしてみることにしました。当時は家からネットに繋げる環境ではなかったのでFaxで問い合わせを行ったところ、1週間程してカセットテープが送られてきました。これが、とても面白いもので、訳の分からないサウンドが大量に入っていました。内容は「こんな事が出来るんだよ」というサンプル音源が色々と入っていたのですが、既成概念から逸脱したそのサウンド・キャラクターは凄く魅力的です。その後、円高の影響もあって気安く見積もりをだしてもらいましたが、$10、000を超える金額にはさすがに躊躇して、一旦購入を諦めたのですが、年明け早々にDSPがアップグレードされるというアナウンスを見て入手を決意。2ヶ月ほど待った97年3月14日にようやく我が家に到着しました。
到着後、朝一番にソフトウエア(Ver.4)とインターフェイスカードのインストールを終え、無事起動することができました。 が、、、、蓋をあけてみればコンピュータの素人には手に負えないアプリである事が徐々に発覚。なかなか音が出ません。半時間あまり格闘した結果、やっと出た音はカラスの「かあ!」という鳴き声だけ。こっちが泣きたくなりました。 頼みの綱のあんちょこは450ページもある怪物で、しかも記述は全て英語です。ひとまず動作の確認は出来たので、気を取り直して真面目にマニュアルを読む事にしました。

UPSで届けられた大きな外箱
KYMAはDSP blackbox、CAPYBARAとWindows/Macintoshマルチプラットフォームのソフトウエア、 PCとのインターフェイスカード、以上3点で構成されています。インターフェイスはNuBus、PCI、ISA、 PCMCIA(後にFirewire)とメジャーな規格を殆ど網羅しているので、ホストPC選択の幅が広いのが特徴です。僕の場合、購入当初は8100/100AVのユーザーでしたので、まずはNuBus Interface Card を購入しましたが、翌年にはモバイル用途を考慮してPCMCIAカードにスイッチしました。
アプリケーションはSmallTalkというプログラム言語で作られています。この言語はJAVAのように仮想マシンを介してPC上で動きます。PC上でプログラミングした後データをコンパイル、BlackBox内のDSPに転送して発音します。データのコンパイル時間はCPUのパワーに依存します。したがって、高速なPCを使うほどストレス無く作業することが出来ます。各オブジェクトは写真のようなアイコンで表現されていて、これらパーツをつなぎ合わせることで、音響システムを構築していきます。
SymbolicSoundという社名の由来でもあるアイコン。この写真は旧ヴァージョンのもので、Xからはよりカラフルな仕様となっています→
写真は二台目のラップトップPowerbookG3/292との運用形態です。当初はPowerbook/2400を導入していましたが、コンパイル時に要する時間は半端ではなく、ライブでの突発的な事故に対応するには無理があり、翌年に行われたPowerbookのG3化とともに、バックアップ用として退役させています。PCカードはCardBus仕様ではないため、転送速度はPCIカードには及びません。従って、巨大なサンプルをDSPに転送する場合は注意が必要です。 なお、 2003年度にアップグレードされたKYMAXではPCMCIAカードへの対応は停止されているようです。
Macの場合は問題がなかったのですが、PCへのKYMA導入には幾つかのハードルをクリアせねばなりません。まず、PCMCIAカードのドライバーインストールが上手くいかない場合があります。原因は不明ですが、ドライバーを認識しないことがあるのです。 これは、OSの言語に由来する問題のようで、当初対応していたWindowsMeにおいて、何かの間違いで英語のデバイス・ドライヴァーコンパネが立ち上がったときのみインストールが可能だったことを報告しておきます。 また、当初はWin2k及びXPへの対応が遅れていたため、やむなく悪い噂の絶えないMeを導入する必要がありました。

なお、現行ヴァージョンのKYMAXではPCMCIAインターフェイスカードのサポートは停止されています。Windowsプラットフォーム上ではFirewireインターフェイスの使用が推奨されているようです。
Capybaraは99年にDSPがグレードアップされて、処理能力が強化されました。ベーシックモデル(DSP4基実装)で、旧モデルのカード5〜7枚分の処理能力があるということで、すでに旧型の処理能力に限界を感じていたため即注文してしまいました。
98年9月にアメリカAESショウで新型ブラックボックスCapybara-320が発表されます。Capybara-66は56002という旧世代のDSPを実装しており、発表当時(96年)からそのパワーを疑問視する意見もありましたが、今回発表されたCapybara-320はMotrola56309をベーシックシステムで4基実装しており、基本システムで旧Capybara-66上でDSPを5〜7枚拡張したものと同等の処理能力があるります。DSPカードの拡張はマザーボード上に最大12枚まで可能。各カードにはDSP2基とRAM48MBが実装されています。アプリケーションのヴァージョンは発表時点で4.6ですが、次期アップデートのVer.5からはタイムライン機能がサポートされ、より柔軟性のあるシステム構築が可能になります。ハードウエア・アップデートはDSPのみならず、4ch analog/degital I/O (最大拡張時8ch) House Sync,BlackBurst, LTC, VITC 各I/Oポートの装備と非常に充実した内容でした。マルチチャンネルI/Oへのアプリケーションの対応はVer.5からとアナウンスされていました。

KYMA X