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1 まいがやってきた
「初めて犬を飼うんでしたら、ラブよりゴールデンの方が飼いやすいですよ」
店員さんは隣りのケージのゴールデン・レトリーバーの子犬を勧めた。
「こっちの方がかわいい」とダンナも言った。
でも、私はもうそのコに決めていた。ゴールデンも好きだが、短毛種好みの私としては
ラブの方がもっと好き。
ミルク・クリーム色のラブラドール・レトリーバー、メス。耳は茶色で、鼻と目は真っ黒。
ワクチン3回済み。生後約15週・・・売れ残り。
ラブを買うと断言する私に店員さんは今度はもう1頭のオスの子犬を勧めた。
「このコの方がおとなしいですよ」
「でも、初心者はメスの方がいいって聞きましたけど?」
「え・・・まぁ・・・普通はねぇ・・・」

後日、ダンナが言うには彼女のケージに敷いてあった新聞紙だけがズタズタに引きちぎ
られていたらしい。

彼女は何のためらいもなく車に乗り込んだ。
家までの30分間、後部座席の私の足元で暴れていた。
が、玄関に作った囲いにいれるとおとなしくなり、ちょこんと座っている。
夜鳴きもせず、吠えもせず、掃除機をかけても寝てる。
おとなしい子犬だ。
名前は「まい」に決まった。

のぞき込む私たちの顔を見上げようとまいが座るたびに「おすわり」と言っていたら、
その日のうちに「おすわり」と言うだけで座るようになった。
さすが、ラブラドール・レトリーバー。賢い。なんて、いい犬なんだ。

と、その時はそう思っていた。