奥穂高岳の旅−「奥穂南稜」登攀 その2
2004年8月12(木)〜16日(月)      同行者:NK,UT
2004/8/14() DAY 03

4:00起床、朝食5:15出発…ルンゼ…トリコニー…14:15奥穂高岳山頂…(吊尾根)…17:45テント場(幕営)

今朝は予定通り4:00に起床。ラーメンの朝食を済ませます。N君はやはりテントキーパーすると言いますので、Uさんと2人でいざ出発です。

最初は偵察の通りルンゼを駆け上がります。
それにしてもUさんがやや遅れ気味です。
左のルンゼに入り、突き当たりの小滝の前のハイマツの中で、しばし用足しします。

ここからアンザイレンしていざ登攀開始です。
ルンゼを詰め上がると、壁に突き当たりました。
ここで漸く先行の2人パーティーに追いつきました。


凹角基部でのUさん
凹角にて凹角を見上げる

ここは30mほどの凹角(内側に凹んだ壁を言う)で、テント場から見た光景では少し陰になっている壁の部分でした。基部を主稜線まで回り込んでも良いのですが、密集したハイマツを避けるにはここを登るのが正解です。

靴をクレッターに履き替え、先行パーティーに引き続きUさんがトップで登ります。

途中にはビレーピン(安全確保のための金具、ここではハーケン)もあり、カラビナを通してロープを通して行きます。岩も乾いてフリクションも良く効き、ホールド、スタンスとも豊富で、全く快適な岩登りが楽しめます(ました?)。

 この上は急な草付き(草の茂った山肌)で、お花畑です。
トリコニーの第1峰の基部目指して右に斜上します。

1,2,3峰とも、遠くから見ると鋸の歯のような岩峰群ですが、急傾斜にもかかわらず階段状になっているので、比較的容易に登れます。勿論ロープで確保して登りますが、稜線上は左右がすっぱりと切れ落ちており高度感はなかなかのものです。

岩峰上を上り下りしながら辿って行きますと、行き先は垂直に切れ落ちておりとてもクライムダウン(岩を手足を使って下り降りること)出来そうもありません。

ロープで下る(懸垂下降)のも考えましたが、適当な支点がありません。しかもあれほど晴れていた天候がイマイチで霧がかかって来たため、ルート図を見ても踏跡が不明です。


トリコニの基部を登るUさん

1峰にて、Uさん

止む無く登って来たルートを戻ります。降りれそうな所から右側(滝沢側)を巻いて行きます。

途中踏跡様の箇所もあり、これが正規のルートかと期待しましたが、とうとう急な岩壁に行き詰まってしまいました。Uさんが試登しましたが、浮き石だらけでとても危なくて登れそうもありません。

 おまけにとうとう雨が降ってきました。

雨具を!と思い、ザックを見ますが、何てことでしょう!!昨日の偵察のままのザックを持って来たので、雨具も防寒具も入れ忘れていました。
これは大チョンボです。激しい雨ではないですが、薄着で確保していると体が震えます。
先の見通しの見えないこの状況では、これ以上の登行は無理です。

 

Uさんに告げます。

「無理せずに降りてきて下さい。これ以上は無理なので、ここから降りましょう。」

もと来たトラバースルートを戻ろうとしますが、どうしてもやや上気味の(この方が視覚的に傾斜が少ない)、岩峰の基部の歩きやすい所を戻ります。
何が幸いするか解りません。勿論山ではこういった事はあってはならないのですが、瓢箪から駒で!稜線に上がると、明瞭な踏跡が見つかりました!


偵察で登るUさん


休憩するBergen

ここは思案のし所です。今までの登りを考えると、それを下るのは大変です。しかも雨は止み、天候は何とか持ちそうです。

Uさん!これは登れ!やで。」
「そうですね。下るのは大変ですね」

あっという間に(勿論小1時間は経過しましたが)下降の決定を取り消し、上を目指します。登っているから濡れた上着も次第に乾いてきます。幸いにも霧だけで、雨は止んでいます。

2峰は踏み跡と岩場を何とか辿り(3峰はルートから外れていると言いますが、霧のためハッキリしません)、最後の浮き石だらけの岩峰を登ります。頂上まで達するとなんと言うことでしょう!行く先は三方が深く、すっぱりと切れ落ちています。滝沢側はオーバーハングです。

これは致し方ありません。少し戻りますと、岩盤にピンがあり、捨て縄で懸垂支点が作られていました。下を見下ろすと15mほどの懸垂で降りれそうです。踏み跡もあります。

Uさん、筆者の順に懸垂下降します。幸いにも支点はがっちりしており、ロープもスムースに回収出来ました。


奥穂南稜ルート図
疲れた(?)Uさん

しかしUさんの行動がやや緩慢です。思考過程も何処となく、何時もと違ってもたつきがあります。

どうも糖質不足のようです。先は幅広い南稜の頭の斜面を登るだけのようです。

ゆっくりと休憩して行動食を食べますが、Uさんはイマイチ食が進まないのに加えて、ブルブルと震えています。今ごろ寒気がしているようです。ここは登って体を温める以外ありません。

ゆっくりと、休み休み登ってくるUさんを所々で待ちながら、南稜の頭に着いた時には、既に14:00になっていました。

Bergen:「(奥穂高岳)山頂まで10分ほどです。折角ですから行きましょうよ」

Uさん「ここで待っています」 

仕方なく1人で往復します。
頂上には5人ほどの登山者がいましたが、皆さんしっかりとヤッケや雨具で完全装備です。私のシャツが、やや異様に映ります。仕方ありません。写真を撮ってもらって、そそくさと下山です。

目的を達したら、逃げ足は速いに限ります。天下一品の大眺望も得られないから尚更です。

Uさんのところまで戻ると、下りは問題なさそうです。
早速、霧の吊尾根を、「こんなに長かったかなー?」と言いながら、慎重に下ります。Uさんは遅れ気味ながらも、しっかりとした足取りで安心です。登りの登山者は結構多く、途中で行き違います。霧の中の登行は視界も開けないので、もくもくと下るのみです。所々緊張する岩場も出てきます。

最低コルを過ぎ、漸く前穂高岳との分岐部、紀美子平に到着しました。


奥穂高岳山頂でのBergen

紀美子平の道標

Uさんが遅れて到着。どうも途中で2回ほど嘔吐したと言い、震えています。

お湯を沸かして熱いお茶を飲みますが、飲んだ尻からこれも嘔吐です。

これはエネルギー不足と疲労による最悪の状態です。カロリー補給に飴を渡しますが、要らないと言います。
仕方ありません。ここからは下るのみなので、何とかテン場に辿り着けるでしょう。

途中の重太郎新道では、多くの登山者がまだ下降中です。
この分だと岳沢到着は暗くなってから、と思われる人たちも大勢です。
我々はかなりのパティーを抜かしたので、テン場到着は18:00前になりました。何とか明るいうちに到着できました。

宴会の我々を尻目に、Uさんは夕食も摂らずにすぐさま寝入ってしましました。
トレーニング不足と栄養補給がまずかったようで、より以上疲労してしまったようです。それにしても無事下山できて何よりでした。フーッ

重太郎新道の長い梯子
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