13.  ソンテウは往く



 ヒロコを座席に座らせ、私がステップに立つとソンテウはすぐに発車した。
私の隣にはもう1人、中学生くらいの少年が立っていた。
彼はヒロコが座るときに、さりげなくカバンをよけてくれた。
とても純朴そうな少年だった。
クラビーの町を走るソンテウ
  ソンテウはクラビーの町をぬけ、郊外の道に出た。
今は下校時間なのか、やたらと子供が多い。
そういえば、道路沿いは学校だらけだった。
それだけ、子供の数が多いのだろうか。

  途中、中学生風の女子生徒が2人乗ってきた。
1人が座っていた少年に席を譲ってもらい、座る。
もう1人はステップに立つ。
車は70キロ以上で走っているのに、バーを握り平然としている。
タイの子供はみなたくましいなぁ。

  子供たちは途中、ワンマンバスと同じような
下車を知らせるボタンを押して、
降りたい場所で車を止め、それぞれの家に帰っていった。

 クラビーを出て30分以上は走っただろうか。
道路のまわりは小さな山が増えてきた。
クライミングのできそうな岩場もある。
ステップに立つのも、そうやって景色を楽しめていいが、
ずっとバーを握っていなければならず、 気を休めることができない。
いいかげん着いてくれよ、と思い始めた頃、ソンテウは広い郊外の道を左折し、海岸沿いの道に入った。

  しばらく走ると、賑やかな通りになってきた。 いろんな店や、ホテルが並ぶ。
アオナンの中心地だろうか、賑やかさがググっと増したところで停車した。
下車して2人で100Bを払う。
「アオナンを見物して帰ろうか?」
と、ヒロコに訊いたが、
「疲れたから、ライレイに戻ろうよ」
と、答えた。

  ソンテウを降りたとたん、餌にむらがるハトのように、船の客引きがやってきた。
「ライレイ?」
と、タイ人にしては体格のいいおっちゃんが私に訊く。
「HOW MUCH?」と訊き返すと
「50B ONE PERSON」
と、おっちゃんは言った。
「 40Bにしてくれ〜!」と、値切ったがまけてくれなかった。
船がなければライレイに渡れないのだから、彼らも強気だ。

  海岸に行き、おっちゃんの船に乗る。
おっちゃんは、 「RAI LAY! RAI LAY!」と、何度か叫んでさらなる客を呼んだが、応える人はいなかった。
船は砂浜を離れ、沖へ向かう。

  途中、海の中に高さ70mほどの岩峰が海の中に立っていた。
確かガイドブックでは、ここにルートがあるような記載があった。
ビレイはハンギングビレイだろうか、それとも船の上から?

  アオナンを出て15分ほどで、すっかり見慣れたライレイ・ウェストに到着した。
船を降りると今度は、
「ドコニ 泊マル?」
と、宿の客引きが現れる。
いいかげん、うるさいっちゅうねん!!
  例えば、ライレイで朝、食事に行こうとビーチの方へ歩くと、
「AO NANG?」とか 「今日ハ ドコヘ行クノ? 案内スルヨ」とか、 必ず声をかけられる。
ここに滞在中、200回は「NO THANK YOU」と言ったり、
首を横に振って 「断る」意思表示をしただろう。

  部屋に戻り、買い込んだ水を冷蔵庫に入れる。
これだけあれば、もうライレイの高い水を買うことはないだろう。

 シャワーを浴びて、RAILAY BAY へ夕食に行く。
今夜もテラスのテーブルはいっぱいで座れない。
昨日よりさらに奥のテーブルに座る。
今日は牛肉料理を注文してみた。
焼肉風の料理かと思ったが、出てきたものはひき肉を炒めたものだった。
味は濃く、一口目は美味しいが、続けて食べると辛さが効いてきて辛い。
2人で一皿たいらげるのもたいへんだった。  

  食後、砂浜に座り、夜の海風にあたってから部屋に戻る。
早起きに備えて、22時前には就寝した。
明日はTON SAI BAY で登る。
なんとか、7A以上のグレードのルートを登りたいものだ。



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