車の中は大変なことになっていた。
何十匹という蚊が飛び交っているのだ。
しかし、運転手は気分よさそうに運転している。
私とヒロコは周りの風景もろくに見ず、蚊を撃退するのに必死になっていた。
そして、空港から走ること約20分、奮闘する私達を乗せたタクシーは、
クラビー・タウンのクラビ川沿いの道で停車した。
車を降り、トランクから荷物を取り出し、生まれて初めてのチップを運転手に渡す。
金額は20B、日本円で60円だ。
タクシーを降りると、すぐに男が近づき、
「Rai Lay ?」
と、訊いてきた。
私は、
「ライレイに行くけど、1時間後にする」
と、タイ語は話せないので、英語で言うと通じたようだ。
こんな田舎町でも英語が通じてたので、ちょっと安心。
後にすると言った理由は、ヒロコが町にいる間に、日本の家族に国際電話をかけたいと言うからだ。
詳しい状況は割愛するが、結局その時はかけることができず、
インターネットができる店からメールを打った。
そこは日本語が使えるマシンがあり、10分ほど使って50Bだった。
そしてボート乗り場へ行く。
さっきの男はいなかったが、別の兄ちゃんにライレイへ行きたいと告げると、
「ココデ シバラク 待テ」
と、桟橋近くのベンチを指差した。
待ってる間、パイナップル売りのおばあちゃんが、
「テンバーッ!テンバーッ(10B)」
と、言いながらやってきた。
10Bで半分に切ったパイナップルを買ってみる。
味は濃い甘さはないが、サクサクした食感で美味しい。
食べながらボーっと30分ほど待っていると、
やっと「こっちへ来い」と呼ばれた。
50mほど歩いたところで、陸地から船に乗り込む。
すでに4人の白人が乗っていた。
しかし、船はなかなか出発しない。
もっと人が乗るまで出発しないつもりらしい。
さらに待つこと45分、3人の若い白人女性が乗ってきて、やっと出発した。
クラビー川は あまりきれいでなかったが、海に出るとだんだん美しいブルーになってきた。
遠くに見える岩峰がだんだん近づく。
浜辺近くの岩場(1−2−3)を見ると登っている人が見えた。
やっとプラナンに来たんだと、だんだんコーフンしてきた。
船はクラビータウンを出て、約45分でライレイ・イーストに到着した。
海岸は満潮で岸から 3m ほどのところで接岸したが、上陸する時はどうしても濡れてしまう。
まだサンダルを買ってなかったので、靴を脱ぎ、裸足でジャブジャブ歩いて陸地に上がった。
一緒に乗ってきた、ヒラメみたいに視線が離れた兄ちゃん(まだ子どもだが)に船の料金を払おうと、
金額を訊くと
「2人で150B 」と言う。
「なにー!1人75Bだー!?」
仕入れた情報よりかなり高いじゃねえかと思いつつ、まだ相場に“うとい”私は、
渋々言うとおり150Bをヒラメ顔のガキに渡した。
(後で知ったが、クラビー・ライレイ間の船の相場は70Bだ)
このガキはかなり性悪だ。
一緒に乗った3人の女の子たちは、225Bを払うのに300Bを出すと、
「お釣りはない」
と言う。
最初からお釣りなんか用意してないのだろう。
まぁ、そんなこんなでやっとプラナン、いやライレイに到着したのだ。
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