Q6

ちょっと寂しい話です。私の知り合い(Bさんとします)に、妻に急逝され、その反動で血圧が上昇して要注意となった方がいます。そこへ、「女房も世話をするから」と、長男家族が同居をはじめました。しかし、嫁は孫のペースで生活を取り仕切るので、食事や掃除、近所づきあいなど、亡くなった奥さんとは勝手が違うために気に入らず、血圧もかえって不安定だそうです。加えて、心労からか、軽度のボケの兆候もあるらしいのです。

軽費老人ホームへでも行こうと嫁に出された娘さんに相談したら、「兄さんに家を乗っ取られるからやめて」と言われ、おまけに長男さん夫婦にも抗議されたらしく、勢い遺産相続争いにまで発展したそうです。

Bさんの安寧を守るために、成年後見制度は活用できますか。


使えますが、Bさんは本当に苦しまれておられることでしょう。誠に悲しい問題です。
急速な高齢化社会を迎え、悪徳商法をはじめ、このような扶養・介護・財産の問題、また痛ましい虐待の問題など、高齢者を巡る問題は際限がありません。
これらの問題に対応するために、車の両輪に例えられる介護保険制度とともに、「福祉の考え」がずいぶん取り入れられています。従来の禁治産・準禁治産制度とどのように違うのか、福祉の理念におけるその改正点を見てみましょう。

1.「自分のことは自分で決める」という憲法に保障された自己決定権を尊重し、本人の意思を大切にした保護と調和を考える。
 ・任意後見制度を新設した。
 ・成年後見監督制度を充実し、
  法人も選任できることになった。
2.本人の残存能力を尊重し、その能力を最大限に活用することや伸ばすことを図る。

 ・禁治産・準禁治産を改め、法定後見制度を補助・
  保佐(準禁治産相当)・後見(禁治産相当)の
  3
段階とした。

3.ノーマライゼーションの考え方に鑑み、被後見人も後見人も、すべての人が普通に社会で共生できることを追求する。
 ・後見人は配偶者優先を変え、複数の後見人や
  法人も認められることになった。

 ・市町村長に成年後見開始審判の申立権が
  認められることになった。

 ・戸籍記載を止め、成年後見登録制度が創設された

本人の意思決定を尊重する社会において、成年後見人は、以前のような被後見人不在の遺産分割協議などの基本的な単独行為を行えばそれで終わりというような、単純な役割だけを遂行すればよいということではなくなりました。

例えば、被後見人と成年後見人等の関係を「被後見人の判断能力」という観点から考えてみると、被後見人の判断能力を補うことが成年後見人等の仕事になります。