それでは、後見人としての必要な心構えを、民法に照らして考えてみましょう。
1.被後見人の意思の尊重(民法第858条)
・判断能力が低下したり不十分になってきたからといって、
ある特定の分野においては能力が残っていることが多く
あります。
それが僅かでも残っているのであれば「その意思を最大限に
尊重」し、「足りないところを補填する」ということが大切です。
・また、代理で判断する場合でも、被後見人の意思が以前の
言動から推定できる時はそれに従い、それが難しい時には
社会的な慣習や良識などによって判断することになりますが、
被後見人の意思を尊重することが義務付けられています。
2.身上配慮義務(民法第858条)
・成年後見事務には生活上や療養看護に関する事務
(身上看護事務)、財産に関する事務(財産管理事務)、
などがあります。
いずれも被後見人の生活に直接影響するものですから、
被後見人の心身の状況や生活の状況に配慮した上で
事務処理を進める必要があります。
例えば財産管理については、いかに相続財産として残すか
ではなくて、「被後見人のためにいかに使うか」が問題となる
はずです。
3.利益相反行為(民法第860条)
・成年後見事務を行う上で気をつけなければならない点に、
利益相反の問題があります。
成年後見人等と被後見人との間で利害が対立する場合は、
特別代理人や後見監督人の選任が必要となり、特別代理人
や後見監督人が代わって事務処理を行うことになります。
例えば、次のような遺産分割協議や売買契約などをする場合
がこれに該当します。
遺産分割協議書 被相続人Aの遺産につき・・・ 協議の結果、次のように・・・ 相続人 甲 相続人 乙 成年後見人 甲 |
不動産売買契約書 売主Aと買主Bの間において、 売主 A 成年後見人 B 買主 B |
さて、具体的に考えてみましょう。
まず、Bさんご本人の意向を大切にすることが肝要です。つまり、Bさんが現状はどのような生活を望んでいて、そして将来的にはどのようにしたいのかを尊重することです。
例えば、
・Bさんの身上看護を、身内が行うのか第三者の人物や
機関に委託するのか。
・Bさんの財産管理を身内が行うのか、あるいは第三者の
人物や機関に委託するのか。
・そしてBさんが、保護者(保佐人等)として身内を望んでいる
のか第三者を望んでいるのか。
家庭裁判所への開始手続きの申立ては、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等が行えます。
いずれにしても心情的には、Bさんが止むに止まれずに弁護士等に依頼しなければならないような状況に陥ることは、なんとも忸怩たる思いが残ります。
Bさんの意思が尊重できるように、周囲の方々の配慮を切に望むものです。