中国秘境のチベットロード7
六道輪廻の曼荼羅
Photo:三浦氏

第7話 康定(カンティエン)チベット名:ダルツェンド

「おはようっす!」「おはようっす」「・・・ようっす」
理塘の早朝3時半。この世のものとも思えないくらい眠い目をこすりながら、
半信半疑でバックパックを背負いバスが出発するといわれてた町の大通りまで歩いてゆく。
「ありましたねぇ(^^)」
2台のバスが泊まっている。
どうもノーマルのバスとホンの多少シートがよさげなバスの2台だ。
後者のほうにはいつもどおり「豪華バス」と書いてある。・・・一体どこが豪華なのだろう?
とは言え、ここまでのチベットの道のりが余りにハードということを身にしみて感じている僕たち3人は、
豪華バスで行くことにした。
ガイドブック(旅行人ノートチベット編)には朝6:00出発だと書いてあったが、
どうも早くなったようだった。やはり4:30に出発する。
54元を払い、いすに座るとうつろな状態になった。
バスはまだ夜が明けてないチベットの草原へと向い走り始めた。

ふと窓の外に目をやると頭に雪をかぶった大きな山が見えてくる。ミニャ・コンカだ。7556Mの世界11番目の高峰。
神々しい山を見ながらチベタン達は数珠の玉を数えながら「オン・マニ・ペメ・フム」のお題目を唱えている。

バスは徐々に高度を下げ、周りの景色も緑が濃くなってきた。康定だ。

チベット東部カム地方の中心都市。町の真ん中に川が流れその周りに町が作られている。
四川省ガンゼ州の州都であるこの町では、僕達はひとつの大きな仕事があった。
麗江のインターネットカフェで友達から得た情報
「康定の公安でチベットのパーミットが取れる」を信じやってきたのだ。

僕達3人は町の西にある康定賓館に宿を取った。3人部屋19元/人。シャワーなし。
ここ康定でもシャワーはないのか・・・僕達はすこし愕然とした。
お湯の貴重さをチベットではつくづく体験した。
ただ、ひとつナイスな情報を持っていた。近くに温泉があるという。
僕達3人は喜び勇んで温泉のある「二道橋」までのミニバス乗り場に行った。
途中市場や川にかかる大きな橋の上には露店が無数に出ていた。
またこれがおいしそうなフルーツが格安で売っていた。
僕達はさっそくめいめい買ってチベットの渇きを癒した。

温泉である(^^)道のそばを流れる川からは硫黄の匂いが漂ってきている。
ここはまさに温泉だった。フロントで予約をして待合室で番号が呼ばれるのを待つ。
売店もあり日本の公衆浴場そのものに近かった。
もちろん近代的な設備はなく数十年前にあっただろう田舎の公衆浴場という感じだろうか。
そして、番号が呼ばれると温泉に入る。ここは全て個室の家族風呂(2Mx2Mくらいの風呂)になっている。
外国では水着着用が原則ではあるが、このような家族風呂タイプではそんな必要は微塵もない。
持ち時間は30分ほどだった。時間が来るとおばちゃんがドアの前まで呼びにくる。

一つ気になることがあった。排水溝が風呂桶の外にない・・
風呂桶の中にしかないのだ。これは何を意味する?カラダはどこで洗うんだろう?チベット人は洗わないのか?
数々の疑問をよそに、
「これでいいじゃないっすか?」
浜崎さんは風呂の中で体を洗い始めた。髪の毛もシャンプーをつけて。
「そうっすね!(^^)」

瞬く間に風呂は泡まみれになった。僕達はシャンプーを髪の毛につけるが、埃と汗のため最初は全然泡立たない。
2,3回洗うと思いっきり泡まみれの風呂が出来上がった。
「じゃ、すすぎましょう。」
そういうと、風呂の中に3人ともプールのような大きな風呂の中でシンクロナイズドスイミングよろしく潜った。

「さぁ、ながしましょうか(^^)」
風呂の中に唯一ある排水溝めがけて僕達は必死に泡を送り込んだ。
「これでOKっすね(^^)」
僕達はさっぱりした体で意気揚揚と風呂を出て、風呂上りのジュースを楽しんだ。
「(俺らの前に入った人たちもおなじことをしていたのだろうか?)・・・」
深く考えないことにした(^^)・・

さて、仕事である。
康定の公安局外事科にパーミットを取りに行く。
「え?ない?だめ?」
長く食い下がったがどうも情報は流動的で僕達が行ったときはそんなものはないと言われた。
人によるのだろうか?
中国ではそういう話もよくある。運が悪かったのか、それとも取れた彼が運が良かったのか?
ただ、もう一つ新しい情報が入手できた。
雲南省の公安局ではこの四川省のガンゼ地区は未開放ということだったが、
どうも今年から開放されていると掲示板に張ってあった。
なにそれ?って感じだった。なんで公安同士の情報が伝わってない?
なんで雲南省の公安は知らないんだ?
なんにせよ四川に入ってから公安に見つかるかドキドキしていたことも杞憂に終わり、
四川での僕達の地位は確立した。

この町で浜崎さんとは別れることになった。
彼はここから四川省の省都、劉備玄徳でおなじみの蜀の都、
成都(チョンドゥー)からぐるっとシルクロードに向いパキスタンに行くという。
僕と三浦さんはここから禁断のチベット自治区昌都(チャンドゥー:チャムド)に向かう。非合法ルートだ。
ここ康定でチベット自治区との省境、徳格(ドゥーグー:デルゲ)まで1泊2日のチケットを買った。
130元(1500円)くらいだった。意外と高い。チベットのバスは本数が少ないせいか他の地域よりも
バスの値段が高いのだ。

またまた早朝、僕達2人はバックパックを背負いターミナルに向かう。
朝焼けが康定の町を清らかに照らしていた。

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