「こんにちは」
「こんにちは」
「こんにちは」
千石と跡部は態度を改め、すぐさま菜々子に挨拶をする。
第一印象が大事だからだ。
菜々子も礼儀正しく挨拶を返すとリョーマが目で訴えていたため、リョーマに視線を戻す。
「……今さっき会ったヒト」
「そうなんですか? でも仲良くなったみたいですし、もし良かったらおうちに呼んだらどうですか
? 美味しいお茶とケーキもありますし」
「本当ですか? やっぱ俺ってラッキー♪」
「ありがとうございます。喜んでお受けします」
「菜々子さん……」
嬉々として即答する二人にも当然のごとく呆れたが、初対面だと言っている人物を家にあげようと
する従姉妹もどうかと思うリョーマであった。
その考えは真に正しいのだが、越前家ではそんな世間一般で常識と呼ばれるものは一切合切通用し
ないのである。
何せ親が親だから。
あの人物に常識を当てはめろというのが無理な注文だ。
そして、母親も弁護士という立派な職を持ち、更に優秀ときているため、この人も常識人の枠では
括れない。天才と馬鹿は紙一重というがそれに準ずるかもしれない。
そして、そんなおじとおばと一緒に暮らしている菜々子が影響を受けても仕方なかった。
もしかしたら越前の血のなせる業かもしれないが……
(でも、母さん違うよな……?)
自分の考えに浸っているリョーマは気付かない。
リョーマがいないところで話がどんどん進んでいることを。
「じゃあ、お二人ともリョーマさんと学校別々なんですね」
「はい。俺は実際には会ったことはなかったのですが、ライバル校のしかも一年でレギュラーを獲る
ほどの実力を持つリョーマ君に大変興味がありましたので」
誰だコイツ?
とここに氷帝のレギュラー陣が一人でもいれば確実にツッコミが入っただろう。
「俺は実は今までに一度だけ会ったことありますよ。青学に偵察に行った時に。でも、どうやらリョ
ーマ君は忘れてるみたいだけどね」
ボールをぶつけられたことを思い出しながら楽しそうに語るのは千石。
「アラアラ、リョーマさん忘れてるんですか? じゃあ、今回は是非ともおうちに来て頂かないとい
けないですね。ね、リョーマさん!」
「へっ?」
突然話を振られ変な声を発する。
「駄目ですよ、ちゃんて聞いてないと。千石さんと跡部さん、お茶にお誘いしましたからね」
有無を言わせない従姉妹の笑顔にリョーマはもう何を言っても無駄だと悟った。
「初対面だって言ってるのに……」
溜め息をとともに小さな囁きとも取れる一言。
「だからこそ、これから仲良くお付き合いするためにもお互いを良く知っておかなけばいけませんよ」
「何で決定事項なわけ?」
「私がお二人を気に入ったからです。ですから、おじさまとおばさまもきっとお二人を気に入ります」
「…………」
反論したいが、妙に説得力があり出来ない。
また、しても無駄だと自分でもわかっていたため、小さな抵抗として無言を返したのだった。
◆◆コメント◆◆
菜々子さん強いです。リョーマ形無しです。
管理人の小説の中の越前家の住人はリョーマが感じているように
常識から大きく外れています(笑)
これは大学時代ある友人と授業中に考えていた設定の影響です。
千石と跡部は態度が全然違います。
でも、彼らなら絶対上手く使い分けてますよね。
羨ましい(←何が?)
次はリョーマの両親登場です♪
2005.04.16 如月 水瀬