君という光 第三章 5


  





「今度こそ本当に話してくれるんだよね?」

 部屋に入り、一息つくために煎れた飲み物で全員のどを潤したのを確認してからリョーマが我慢の

限界とばかりに口火をきった。

「……長い、長い話になる。そしてリョーマ君には信じられないかもしれないし、聞かなければ良か

ったと後悔するかもしれない……」

「でも、二人……ううん、その三人も合わせて五人はいつかは絶対俺に話すつもりなんでしょ?」

 その言葉に五人はタイミングをはかっていたかのように、綺麗に揃って各々の顔を見合わせた。そ

して微かな苦笑を浮かべると当然ながら五人が五人とも肯定の言葉を返したのだった。







「俺たちはこの世界とは異なる世界の生まれ」

「……俺も…なんだよね?」

「うん、そうだよ。俺たちの世界は王が国を治めているんだ。そして今王の命は風前の燈。そうなる

と国はどういう状況に陥るか想像に難くないよね?」

 それはとても簡単な質問。考える間もなくリョーマは答えが出ていた。

「王位継承争い?」

「あぁ」

「富と権力のことしか考えていない馬鹿な連中が継承権第一位の王の息子、つまり王子の命を狙うよ

うになった」

「その人はどうなったの?」

「無事だぜぃ。俺たちが護ってんだから当然な!」

「アンタたちはその王子様の護衛なわけ?」

「いーや、俺等はアイツの親友だ」

「そうや。てか、護衛とか自分等で言うてもアイツ静かに怒るんやからなぁ。怖い、怖い」

 とかいいながらもおちゃらけたような物言いでは本当かどうか怪しいものである。

「……ふ〜ん。威張んない人なんスね」

「まぁね。で、話戻すけど、王子は彼等に護られてるからその馬鹿な人たちは尽く失敗したってわけ。

それで次に考えたのは王子が大事にしている者を人質にすればいいというありきたりなことを思った

んだ。そして彼等は王子の妹を狙うことにした」

「……汚い連中。その子はどうなったの? 捕まってないよね?」

「……彼女は無事だよ。彼等も探すのは一苦労だったから。そして俺たちもね……」

「ん? キヨたちも探してたの? だったら俺なんかに構ってないで急がないと……」

「以前に言わなかったか? 俺たちはお前を、リョーマを探していたってな」

「ちょ、ちょっと待ってよ!! それじゃあ俺がその王子の妹ってことになるじゃん。俺はさっきも

言ったけど生まれて12年ずっと男として生きてきたんだから!!」

 予想もしていなかった言葉に必死で自分は見ての通り男だと訴え否定をするも、跡部の真剣な瞳に

気圧されている。声を荒げていることが何よりの証拠だった。

「……王子の妹だから狙われる。じゃあ、妹でなければいい。そう考えたあの方、王子と姫の母親で

ある王妃と王子は姫を護るために術を使った。姫を王子に変化させる術を」

「じゃ、じゃあ俺は……っ…」

 女を男に、性別を変化させるなど出来るはずがないと叫びたい。が、自分は知っている。実際に目

の前で見て、体験したのだ。跡部と千石の力を。なので力いっぱい否定出来ず、反対に本当に可能な

のかもしれないという考えが頭をいっぱいにする。リョーマは言葉が詰まってしまった。





「やっぱりまだ早過ぎるよね」

 最初に忠告してから始めたけれど、やはり後悔が襲ってくる。リョーマに苦しんで欲しくなどない。

出来るならいつまでもずっと笑っていて欲しい。無理なことは分かっていてもそう願ってしまうのは

生きている者のエゴだろう。千石は傷の無い痛みを感じていた。

「けどな、王子の身体も限界にきてんねん。お姫さんが俺等の世界に帰ってくるだけでもアイツの負

担はだいぶ減るんやで。このままやったらあの馬鹿共が手を出すことなく最悪のことになる可能性も

否定出来へんで?」

「んなことは、てめぇ等がこっちに来た段階で予想はついてんだよ。だがな、こいつにも心構えは必

要なことも確かなんだよ」

 認めたくない事実に混乱を極めているリョーマを軽く抱き締めながら落ち着かせようとする千石を

見つめながら、忍足たちの引くに引けに事情も理解しているのだが、跡部と千石にとっては最優先す

べきことは王子のことではなく目の前にいるリョーマのことだったので言葉は自然といつも以上に厳

しいものになる。忍足たちだけでなく、二人にとっても王子は大切な親友だ。見殺しになど出来るは

ずがない。けれど、それでもリョーマの方が大事なのである。





「……今日はここまでにしようか? 確かに時間はないけど、一気に詰め込み過ぎても爆発しちゃう

からね。ね?」

「でも、これは俺に関わることなんでしょ?」

「それは……そうだけどね」

「だったら、ちゃんと最後まで聞く。もう話の腰を折ったりしない。キヨたちが話してくれることは

真実なんだと思うから……。納得出来るかは分かんないけどさ、取りあえず最後までちゃんと聞かな

いと、正確な判断は出来ないからさ」

「大丈夫なんだな?」

 忍足の傍にいたはずの跡部がいつの間にかリョーマのすぐ傍に移動して、続きを話しても大丈夫か

どうか瞳を覗き込み確認した。その瞳には確かに不安も見て取れたが、元来の意志の強い光が戻って

いる。大丈夫だと判断すると跡部は千石に続きを促すように目で会話する。

 そして、再び続きは語られる。







 取り除けない不安の現れか、リョーマは無意識に跡部の服の袖を握り締めていた。















      ◆◆コメント◆◆
       気付けば答えがなく進んでいる……
       あれ〜??(死)
       時間があいてしまったためど忘れしていたもよう。
       一応この章は書き終わっているのですが、
       水瀬の記憶がないため本文中に書いたかどうか微妙……
       なければ三章ラストのコメントで補足しておきます。
       いらないかもしれませんが(笑)
       
       で、漸くリョーマの知りたかったことが全て語られると
       思いきや、当然のように中途になりましたねぇ。
       書いていたら長くなってしまい半分に別けたのです。
       なので次でちゃんと説明終わらせますよ。
       (↑既に書き終えてるから終わらせましたが正確か?)
       では、また次回に♪
              

             2006.04.01  如月 水瀬