君という光 第二章 22


  





 四色の光の球が二人に命中した瞬間真っ白な光の洪水が辺りを包み込む。

 男たちは顔を手で覆い眩しさを回避する。そして二人の遺体を確認するために光が霧散するのを待

つ。時間にして数分だろうか。漸く目を凝らせばなんとか確認できるほどまで光は弱くなった。隊長

格の男は慎重に足を進めた。一歩、二歩と。

 その時

「……くっ!?」

 前方から橙色に輝く炎の球が無数に男目掛けて飛んでくる。狙いは的確。追跡装置が搭載されてい

るミサイルのように相手が逃げてもそれを追いかけていく。男は避けるだけで精一杯なうえ、進むは

ずが逆に後退していた。そしてリョーマたちから、すぐには攻撃できないくらい離れると炎はピタリ

と止んだ。







「遅ぇーんだよ。てめぇは!!」

 一応援護をしてくれた敵か味方かも分からない姿が見えない人物に向かって怒鳴る。跡部には誰だ

か分かりきっていたのだ。そこに現れたのは……

「いや〜。ごめんごめん。こっちもちょっと大変だったんだよ」

「何が大変だ。リョーマより大事なことがあるっていうのかてめぇは?」

「まさか!! そんなことあるわけないでしょう。でもリョーマ君の次くらいに大事なことかなぁ?

現在の状況では」

「そうかよ」

「うん、そう」

「キ…ヨ?」

「そうだよvv ごめんね遅くなって。でももう大丈夫。なんたってラッキーの俺が来たからねvv と

いうことで跡部君」

「あぁ?」

「後は俺が引き受けるからリョーマ君のことヨロシクね。リョーマ君はゆっくり俺の活躍見ててね。

応援してくれると俺もっともっと頑張るからね!!」

「余計なゴタクはいいから、早くそいつ等どうにかしやがれっ!!」

 漸く跡部は千石に文句を言えるほど余裕を取り戻した。冷たい言葉を言うもそれは上辺だけだ。そ

の証拠に跡部の雰囲気から緊張が緩んでいる。先程まではピンッと張った鋼糸のようだったそれがで

ある。

「ということで覚悟してね♪ 跡部君はともかくリョーマ君に手を出そうとしたんだから、それ相応

の報いを受けて貰わないとね〜vv」

 表情はいつも以上にニコニコしている。だが発される言葉は全く容赦のないもの。

「……ねぇ」

「あん?」

「キヨ…物凄く怒ってない?」

「当然だろ?」

「そうなの?」

「あぁ」

「ふ〜ん。って、景吾怪我!! 手当てしなきゃ」

「後でいい」

「でも……」

「まだ敵は目の前にいるんだ。そいつ等をなんとかしてからだ。俺はそんなやわじゃねぇ」

「…………っス」

 顔色からそれが強がりだということが判断できる。しかし、跡部が手当てを受ける気にならないの

ならリョーマにはどうしようもない。力尽くでは敵わないのははっきりしている。でも手当ては早く

した方が良いに決まっている。では、リョーマにできることはというと千石が言っていたではないか。

応援してくれと。ならば千石を応援して、敵を倒してもらって二人で跡部の手当てをすればいい。

「キヨ……」

「……」

 リョーマの意識が千石に集中したのが分かった跡部は自身が促したことながら、やはり少し気に入

らない。けれどリョーマの悲しい瞳を見るのは好ましくないため今は、今だけは意識を自身に向けな

いで欲しかったのだ。







「へ〜。君も炎を扱うんだね。同じ属性みたいだけど……色がいけないなぁ。知ってるよね? 炎の

中にも5段階のレベルがあってそれは色で判断できる。赤は丁度真ん中。そして俺の炎の色である橙

が一番上のレベルだって♪」

「っ!?」

「普段なら手加減してあげるんだけどね、さすがに今回はねぇ。跡部君も一応怪我してるし、リョー

マ君もよっぽど怖い目に遭ったみたいだし。人には許せることと許せないことってあるよね。俺にと

って今回のことは当然許せることじゃないんだよね。だから、迷わず成仏してねvv」

 やはり笑っているようで、笑っていない。纏う雰囲気が怒りに満ちてピリピリしている。言葉と同

時にリョーマが応援していることにきちんと気付いている千石は、跡部の状態が思ったよりも悪いこ

とも察する。



(どうやら早く決着つけないといけないみたいだね。本当はジリジリと追い詰めたいけど仕方ないよ

ね)



 次の瞬間千石の目の色が普段の色より濃くなり、それに比例して炎の色も橙色がもっと濃くなり、

威力も増していた。今までなんとか二人分の術をぶつけて相殺していた炎だったが、それを飲み込み

更に威力を増幅させて男たちを攻撃したのだ。

 数分後には隊長だろう男だけがその場に残り、後の三人は地面に臥してピクリとも動かない。












      ◆◆コメント◆◆
       漸く! 漸く!
       キヨ登場です!!(死)
       長かった。本当に長かった……
       確か第二章の2話か3話あたりに登場したので最後だったはず……
       二章の大まかなプロットを考えた段階で
       これは決まっていたのですが、ここまで長引くとは思いもよらず
       ほぼ忘れ去られた状態でした(死)
       本当に忘れていたわけではないのですがね(^_^;)
       
       でも、久し振りに登場させたら
       話は進むのですが、何故か異様に会話文が多くなって……
       というか最初は会話文しかありませんでした(笑)
       これはさすがにマズイだろと思い、後から文を追加した次第です。
       おかしなところがあってもスルーでお願いしますね。
       まぁ、管理人の書く文章などほぼおかしいのですが……

       ではでは、次もよろしくお願い致します。
       

             2005.10.29  如月 水瀬