実はすぐ側に会いたかった片割れの一人がいたことに気付かずに出口を目指して逃走しているリョ
ーマ。リョーマも跡部の影響か元々の性質か感を頼りに誰にも見つからないようにひた走っていた。
前回は見つかってしまった。今回こそは見つかるわけには行かない。それを強く念頭に置き、周囲に
気を配りながら慎重に慎重に、けれどできるだけ迅速に行動するのだった。
「何でこんなに無駄に広いんだよ。景吾の家並み?」
以前に跡部の家に行って迷子になってしまった苦い体験を思い出した。
感情がこんな時だというのに冷静になれない。それが禍したのかどうかは定かではないが、やはり
前回と同じようにその辺をうろちょろしていただけの神官にバッタリと遭遇してしまった。
「お前っ!?」
「やばっ!?」
叫んだ瞬間神官に背を向け隠れるところを探す。神官も追いかけながら大きな声で叫び他の神官た
ちにリョーマが牢から逃げ出したことを伝える。
「……逃げるより、気絶させた方がよかった…………」
今更後悔しても仕方がない。後から悔いるから後悔と昔の人は言ったのだから……。
展開は前回と全く同じだった。違うことと言えばそれは今回はリョーマ一人だということ。もし何
か失態を犯しても、それは全て自分にのみ降りかかると考えると幾分か気は楽だった。だからといっ
てこのまま大人しく捕まる気は更々ないのだが。兎に角逃げるのが第一と人気の少ない方向に逃げる
と次第に出口から遠ざかって行く。
もちろんリョーマも気付いているがどうしようもない。他にも抜け道はあるかもしれないという僅
かな希望を抱いてひた走る。そして気付けば緑溢れる庭、そう隠し通路の出口となっていた中庭に戻
って来ていた。
「……俺の苦労は一体…………」
半分泣きたくなったのが本音である。
「もう一度牢に戻ってもどうしようもないし……。見つかるの時間の問題だし……」
その時無謀な考えが頭を過ぎる。
「塀の向こうは外…かな?」
神殿を外敵から守るために囲んでいる白い塀はどう見てもリョーマの身長の3倍以上はある。壁の
向こうなど見えるはずがなく、壁の頂上を見上げると見えるのは空の青さと雲の白さのみ。確かに木
々はあるのだが壁側には意図的に植えられていないのだ。背の高い木々は全て建物寄りとなっていた。
「やっぱ、無理かな……。!?」
建物の方から中庭にむかってくる数人の気配を感じた。
「隠れないと!」
場所を探すも木々がたくさんあるため目隠しにはなるが、隠れるには適さず、その他に隠れられる
場所などほぼないに等しかった。
隠し通路に戻るしかない。
そう思いこちらから開ける仕掛けを探すが見つからない。見つけられないではなく、見つからない
のだった。
「一度出ると後戻りはできないってことか……。何の役にも立たないじゃん!!」
憤りをぶつけても入り口は何の変化もない。次第に気配はこちらに向かってくる。
「隠れる所などないだろうが、一応隈なく探せ」
「「「はい」」」
声から4、5人いることが分かるが、分かったところでどうしようもない。ただリョーマにできる
ことは入り口があるはずの壁に背をつき、見つかり難くするためにしゃがみ込み膝を抱えて小さく蹲
ることだけだった。
(こっちに来んな!!)
眼をギュッと閉じ、願うも足音は確実に近付いてくる。
もう駄目だと思い、一際強く眼を閉じると……。
「えっ!?」
突然背後から伸びてきた腕によりリョーマの身体はその腕に逆らう間もなく引っ張られた。
◆◆コメント◆◆
まだ会えません(死)
というか、このリョーマ学習能力ないのでしょうか?
そんなつもりはないのですが、跡部と会えないから色々と
一人で行動してもらうしかないんですよね(−_−;)
頑張れリョーマ!!
2005.09.22 如月 水瀬