その日のクリアードの町は早朝から町全体がそわそわした雰囲気に覆われていた。

　数日前に辺境の村から届けられた知らせは、宿の主の予想通り瞬く間に村中に広がり、ここ数日の

村人の話題はそれに限られていた。そして、本日は待ちに待ったと言っても語弊ではない青灰色の瞳

の少女が大神殿に到着する日であったのだ。そのため、小さな幼子から老いた老人までもが通常より

も早い刻であったが、すっきりとした寝覚めで彼の者が到着するのを今か今かと待っているのだった。











　跡部はこの限られた時間で打てるだけの手はずは整えた。

　時間はかかったが千石とも連絡が取れ、彼も一応無事であることを確認した。正確な場所は分から

ないが大体の方角は見当がついたので、連れて来られるのがリョーマであれば救出すればすぐに“と

ぶ”ことを決めた。千石は千石でやるべきことを見つけ、今回だけはリョーマのことは跡部に全てを

託したのだった。

　準備を整えたといっても特に何か道具が必要なわけではないため、千石と連絡が取れたことにより

負担は多少減り、今後の行動についても凡そ決まった。本当に後は到着を待つことが今の跡部に出来

る唯一のことであった。







「……ウゼェ」

　米神にはっきりくっきりと怒りマークを浮き上がらせ、大通りから居住区の通りに至るまで、これ

ほどの人がどこにいたんだと思うほど人で溢れ返り宿から一歩も出れないことに対して愚痴を零す。

正確には出れないことはないのだが人が多過ぎて出たくないというのが本音だった。

「まさかこんな人が集まるとはな……。禍をもたらす者なんかいちいち見に来んじゃねーよ！　った

く」

　まさかこんなに見物人がいるとは全く予想しなかったわけではないが、それでも予想の範疇を超え

ており最初から障害が発生してしまった。

「近付くことさえ一苦労だな。でも、やるしかねぇしな。片がついたら千石のヤツを殴ってやる」

　何故千石を殴ることに辿り着くのか、跡部の俺様思考は理解できないが千石の未来は勝手に決めら

れてしまった。









　太陽が西に傾き、町全体を黄金色に染め出した時刻。

　待ちに待った一行が漸く到着した。

　大通りの真ん中、辺境の地の神官たちが通る道以外は見物にやって来た人で埋め尽くされていた。

身動きもままならないほどに。

　跡部は比較的入り口に近い場所の大通り沿いに陣取っていた。力を使ってもいいから当然連行され

る者が見える位置にと考えていたのだが、跡部が場所を探していると若い女性の集団が譲ってくれた

のだ。それを表面上は丁寧にお礼を言い受け取った。そしてその直後に一行は町に到着したのである。

　騒々しかった町は一瞬にして静寂が支配した。

　人々の視線は食い入るように大通りから神殿に向かう馬車とその後ろに繋がっている鉄の檻に覆わ

れた荷馬車に集中していた。いや、正確には荷馬車に転がされている人物にだ。馬車が目の間を通り

過ぎた人々の間から囁くように次々と言葉が交わされる。「アレがそうなのか？」と……。



（……チッ！　やられた。まさかあんなモノがこんなとこにあるとは。一からやり直しだ！！　クソ

っ！！）



　目の前を通り過ぎる馬車を一際きつく睨みつけるとその場を後にした。









　確かに警備は強固であったが、跡部ならばなんとかなったかもしれない。けれど跡部は何もしなか

った。あれだけ事前に準備を整えていたにも関わらずだ。

　連れて来られる要人の顔を隠すなんてことは最初から予想の範疇だった。だからソレには驚かなか

った。人々は多少の不満があったようだが跡部には顔を隠していようが、全身を隠していようが、自

分たちなら気配で分かる。リョーマを最初に見つけた時も気配が分かったからこそすぐにリョーマだ

と確信できたのだ。





　　　　　　　　　　　　　　　　　　それなのに何故……？















　　　　　　◆◆コメント◆◆
　　　　　　　どうしたんでしょう跡部は……。
　　　　　　　こんな諦めがいいなんて彼に何かあったのでしょうか？
　　　　　　　管理人にも分かりません！（←オイッ！！）
　　　　　　　相変わらず指がプロット無視して勝手に打ち込んでいるので……
　　　　　　　アレって何なんでしょうね？
　　　　　　　まあ、所詮拙い話しか書けない管理人の考えることですから
　　　　　　　大層なモノでは決してありません。はい（笑）
　　　　　　　
　　　　　　　それにしてもリョーマの扱い酷いですね（死）
　　　　　　　転がっているって……（−＿−；）
　　　　　　　その前は殴られて意識不明で長時間……
　　　　　　　管理人はリョーマ好きですよ！もちろん！！
　　　　　　　でなきゃ、リョ総受けサイトなんてやらないですから！！

　　　　　　　早く再会できるよう祈ります♪
　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　2005.08.27  如月 水瀬